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アート暖簾とお酒をお披露目! 福島県浪江町のアートプロジェクト「なみえの記憶・なみえの未来」NoMAラボ×ヘラルボニー
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プロジェクトの関係者がカラフルな2つの暖簾を掲げた写真
まもなく3年目を迎える「なみえアートプロジェクト」、第5弾は〈haccoba 浪江醸造所〉とのコラボレーション

“地域の記憶”を後世に紡ぎ、未来の姿を共有する「なみえアートプロジェクト」

自分たちが暮らすまちの伝統行事やお祭り、故郷の懐かしい光景や風物詩、ご縁のあった地域の思い出の場所――。どこにでも、誰にでも、胸に留めておきたい“地域の記憶”というものがあるのではないでしょうか。

東日本大震災で甚大な被害を受けた福島県双葉郡浪江町にも、かつて住民総出で盛り上がったイベントや、その季節にしか遭遇できない風景がいくつもありました。それらの記憶を後世に紡ぎながら、これからつくりたい浪江町の姿をアートで表現し、まち中に掲示する「なみえアートプロジェクト『なみえの記憶・なみえの未来』」が、2022年5月からスタートしています。

2つの絵画作品が飾られた建物の写真
浪江町のショッピングモール「サンプラザ」跡地の建物の外壁に掲出されている、〈やまなみ工房〉所属のアーティスト、栗田淳一さんと吉田楓馬さんによる作品

2024年3月には、プロジェクト第5弾として描かれたアート作品が、浪江町に新設されたクラフト酒の醸造所〈haccoba 浪江醸造所〉の暖簾に採用。このアートを使用したハンカチで包む新商品のお酒、「Fuuu!do」(フード)もお披露目されました。

本プロジェクトの主催は、浪江町で住民主体のまちづくりプロジェクトなどを行う〈一般社団法人NoMAラボ〉。アートワークを、「異彩を、放て。」をミッションに掲げる福祉実験カンパニー〈株式会社ヘラルボニー〉が全国のアーティストと連携しながら担っています。

まちを彩る「なみえの記憶」と「なみえの未来」

3.11の巨大な揺れと津波の被害に加え、福島第一原子力発電所事故の影響を受けて全町避難を余儀なくされた浪江町。2017年に全域避難指示は解除されましたが、震災前には約2万1000人いた住民も、現在の登録数は1万5000人弱、実際に住んでいる人は2200人ほどしかいません。

その浪江町で、住民が残していきたいまちの記憶と、実現したいまちの姿を共有するべく始まったのが「なみえアートプロジェクト」です。

建物の壁に2つの絵画作品が飾られ、その下に関係者が集まっている写真
プロジェクトの第1弾として浪江町・新町通りに掲出された作品。【作品左・なみえの記憶】テーマ:十日市、アーティスト:日吉雅治(アトリエやっほぅ!!) 【作品右・なみえの未来】テーマ:水素でつくるなみえ、アーティスト:青木玲⼦(unico)

この取り組みは、「なみえの記憶」と「なみえの未来」という2つの主題をもとに地域住民と話し合い、毎回のテーマを選出。そのテーマに基づいた作品を〈ヘラルボニー〉が契約するアーティストが描く、というプロジェクトです。完成した作品は浪江町の各所に屋外アートとして掲示されます。

これまでに「なみえの記憶」のテーマとして上がったのは、多くの露店が立ち並び、身動きが取れないほどの人出で賑わった祭り「十日市」や、1979年に同町に誕生し、多くの住民に愛された大型ショッピングセンター「サンプラザ」など。

一方の「なみえの未来」には、世界最大級の水素製造拠点であり、ゼロカーボンシティを目指す同町にちなんだ「水素でつくるなみえ」、スマートモビリティ・自転車・馬といった多様な移動手段で人が集い、交わり、賑わうまちをイメージした「モビリティでつくるなみえ」といったテーマで作品が描かれました。

2つの絵画作品がまち中に掲出されている写真。
プロジェクト第2弾で制作された作品。【作品左・なみえの記憶】テーマ:コスモスマラソン、アーティスト:衣笠泰介 【作品右・なみえの未来】テーマ:モビリティでつくるなみえ、アーティスト:伊賀敢男留

作品を描いたのは、全国各地に点在するアーティストたち。「異彩を、放て。」をミッションに掲げる〈ヘラルボニー〉とコラボレーションを行うことで、浪江町の人々が自分らしくいられ、異彩を放てるまちでありたいという思いが込められているといいます。

プロジェクト第5弾のアート作品をご紹介!

2024年3月、最新作となる第5弾のアート作品「藤橋不動尊の不動市」「豊かな食文化への誇り」がお披露目となりました。

「なみえの記憶」のテーマに選ばれた「藤橋不動尊の不動市」は、町内外から人が集まり、長蛇の列ができる、春の風物詩ともいうべきお祭りだったといいます。

その賑やかな思い出を、“マジカル”とも評される色彩感覚と感受性を持つアーティスト・衣笠泰介さんが、乱れ飛ぶ光、色彩、文字によって表現しました。

「いか焼」「不動」などさまざまな文字と人などがカラフルに描かれた作品の画像。
テーマ:藤橋不動尊の不動市、アーティスト:衣笠泰介

また「なみえの未来」のテーマとなった「豊かな食文化への誇り」を描いたのは、アメリカ・ボストン在住のアーティスト・SATOさん。

浪江町で育まれた農産物、そこに流れる水、それらの産物を生かしてつくられた料理や酒などの食文化。それらを誇りとする浪江町の人々の思いが多彩な水玉によって表現されています。

さまざまな色の丸(ドット)がキャンバスを埋め尽くしたSATOさんの作品の画像。
テーマ:豊かな食文化に誇りを持つなみえ、アーティスト:SATO(Boston Special Needs(Boston)在籍)

これまで屋外アートとして掲示されてきた「なみえアートプロジェクト」の作品ですが、今回は“暖簾”という形で展開。2023年に新設されたばかりの〈haccoba 浪江醸造所〉の玄関に鮮やかに翻るアートとして掲げられています。

2人の男性が、背丈ほどもある大きな暖簾を持っている写真。

さらにアートのお披露目と同日、アーティスト・SATO さんが描いた「なみえの未来」をパッケージにしたお酒「Fuuu!do」の発売も開始されました。

「Fuuu!do」は、かつてこの地域を治めてきた相馬藩主の末裔、相馬家第34代当主の相馬行胤さんが営む牧場のホエイ(乳清:牛乳からチーズなどをつくる過程で出るもの)をお米と一緒に発酵させた、新ジャンルのお酒。ヨーグルトのような爽やかな甘酸っぱさと、エルダーフラワーの華やかでフルーティーな香りが特徴的な1本に。現在は〈haccoba〉のオンラインストアや直営店にて購入が可能です。

SATOさんの作品をアートハンカチにしてお酒をくるんだ「Fuuu!do」の写真。
アートハンカチに包まれた「Fuuu!do」。3月28日のアートお披露目式に集まった浪江町の住民には「Fuuu!do」が振る舞われました

2022年に第1弾がスタートし、これまでに10作品が生まれてきた「なみえアートプロジェクト」。浪江町の各所を彩るだけでなく、今後はこれらのアートに仕込まれた謎を解きながら、まちの歴史を追体験する「町歩き謎解きゲーム」の公開も予定されています。

浪江町内に点在するアート作品を鑑賞しながら、地域の記憶、新しいまちの未来に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。