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なぜ人は絵を描くのだろう? 障害者支援施設〈みずのき〉が生んだアーティストの絵画展、埼玉〈ハイパーミュージアム飯能〉にて開催
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アートの眼差しと福祉の支援によって生まれたみずのきの絵画展「なぜ人は絵を描くのだろう」のメインビジュアル。7名のアーティスト名、作品のキリヌキ、会期、会場名などが記されている。

京都府亀岡市〈みずのき美術館〉から7名のアーティスト作品がやってくる!

埼玉県飯能市の現代美術館〈HYPER MUSEUM HANNO(ハイパーミュージアム飯能)〉では、絵画展「なぜ人は絵を描くのだろう」を2026年9月12日(土)~11月3日(火・祝)の期間で開催しています。

本展は、京都府亀岡市にある〈みずのき美術館〉が所蔵する約2万点の作品の中からセレクトした、7名のアーティストによる168点の絵画作品に加え、造形や色彩教育のアーカイブ、アニメーション映像作品を展示。なぜ人は絵を描くのか? という問いを共有し、来館者とともに考えます。

作品がずらりと並んだ展覧会場の写真
「なぜ人は絵を描くのだろう」展覧会場

世界も注目!〈みずのき美術館〉とアーティストたち

2012年に亀岡市に開館した〈みずのき美術館〉。障害者支援施設〈みずのき〉の絵画教室(1964〜2001年)のなかで生まれた作品の所蔵と展示、そしてアール・ブリュットの考察を基本に据えたミュージアムとして誕生しました。

〈みずのき〉の絵画教室では、日本画家・西垣籌一さん(1912~2000年)が講師として招かれ、重度知的障害のある施設利用者への絵画教育を行ってきました。その実践のなかで生まれた作品群は、スイス・ローザンヌ市のアール・ブリュット・コレクションに、アジアでは初めて6名の作家による32作品が収蔵されるなど、多彩な足跡を残してきました。

そうして歩んできた歴史のなかで、アートとは「個人の深い内面からの発信」だと捉えている同館。作品を通したさまざまな「個」との出会い、「物言わぬ人」の真の思いを伝えること、多様性への理解の広がりを目指して、教室がなくなった今もさまざまな展示企画を実施しています。

〈みずのき美術館〉の外観写真。建物右側の路上には、理髪店の名残であるサインポール(バーバーポール)が置かれてある
京都府亀岡市にある〈みずのき美術館〉の外観。理髪店として使用されていた大正時代の小さな町家を改装して2012年に開館しました(撮影:阿野太一)

「なぜ人は絵を描くのだろう」展に登場するアーティスト7名とは?

本展は、会場となる〈ハイパーミュージアム飯能〉が掲げるミッションのひとつ「現代アートの新しい領域を切り開くこと」をテーマに企画され、〈みずのき〉の絵画教室で創作していた7名のアーティストの作品で構成・展示されています。

作家のひとり・二井貞信さん(1917〜1988)は、木や石といった身近なものを描いたアーティスト。第二次世界大戦時に召集され、戦闘による極限状態とマラリア感染が重なり、精神疾患か脳機能の障害を発症したとされています。1963年に〈みずのき〉に入所して以来、アトリエから見える木々や石垣などを題材に作画。講師・西垣さんの記録には「エビスさんのように、いつ見ても微笑みをたたえている」と残されているのだそうです。

ピンク色のベタ背景に、水色・黒・オレンジ・緑で塗られたモザイクのような石らしき物体の絵が描かれている二井さんの画像
二井さんの作品はスイス・ローザンヌ市のアール・ブリュット・コレクションにも収蔵されています

また、1966年に〈みずのき〉へ入所し、木炭とクレヨンを用いたモノクローム画を好んで描いた吉川敏明さん(1947~­1987年)。黒く塗り込めたモチーフ、余白、ぼかしのグラデーションが表情豊かな世界を生み出しています。制作中、本人による修正や手直しは一切行われず、西垣さんを驚かせたというエピソードも。

木炭&クレヨンのモノクローム画。猫のような動物が5体、びっくりしたような表情で描かれている
吉川さんが描いたネコらしき動物たち。やわらかさがありつつも、塗りこめられた漆黒から力強さや迷いのなさが伝わってくるよう。吉川さんの作品もアール・ブリュット・コレクションに収蔵されています

ほかにも、「家」を描くことにこだわり続けた方、「生き物」をモチーフにし続けた方、「戦隊キャラクター」を愛した方など、卓越した色彩やエネルギッシュさで絵を描いた7名の作品が一堂に集結。なぜ人は絵を描くのだろう? という問いのなかで作品と向き合い、どんな対話が生まれるでしょうか。

今回の会場には、〈みずのき美術館〉の作品収蔵庫を模した棚が設置されているほか、絵画教室の歴史、収蔵作品の一覧、関連資料などのデータを閲覧できる「みずのきアーカイブズ」も用意されています。飯能市にいながら、亀岡市の美術館の様子が追体験できるでしょう。

ほかにも、動物の絵画から生まれたアニメーション映像作品の上映や、こども向けの塗り絵ワークショップ、オリジナルグッズの販売も行われます。

展覧会場内の写真。会場中央に収蔵庫のような棚が2つ置かれてある
展示空間の中央に設置された、作品収蔵庫をイメージした棚
さまざまなグッズが並ぶミュージアムショップ内の写真
ミュージアムショップでは、動物や家などが描かれたユニークな作品をデザインしたトートバッグなどの雑貨を販売

北欧ライフスタイル体験だけじゃない、〈メッツァビレッジ〉の思い

本展の会場となる美術館は、豊かな自然に包まれた宮沢湖のほとりにある〈メッツァビレッジ〉という北欧ライフスタイル体験施設内にあります。ムーミンの物語を主題としたテーマパーク〈ムーミンバレーパーク〉の玄関口としても知られています。

〈メッツァビレッジ〉は、ゆったりとした時間が流れる森と湖での体験を通じて、心の豊かさの本質に気づき、日常生活へと持ち帰れる場所を目指して2018年に創設されました。そのコンセプトは福祉にも通じるものがあるとし、福祉や社会課題解決に向けたイベントもたびたび開催・協賛してきました。

2025年には地域の福祉課と連携し、認知症の人やその家族など誰もが集える場「ひだまりカフェ(認知症カフェ)」をスタート。そうした取り組みの一環として「なぜ人は絵を描くのだろう」展も開催されています。

本展の会期中の2026年10月3日(土)・4日(日)の2日間は、〈特定非営利活動法人ディーセントワーク・ラボ〉の主催で、楽しみながら“ちがい”と“おなじ”が体験できるインクルーシブなお祭り「トントゥフェスティバル2026」も予定。全国福祉事業所の商品が集まるマルシェのほか、多様な人が参加するライブイベントなど、さまざまな催しが行われます。

トントゥフェスティバル2026のメインビジュアル画像。旗を持つ人、楽器を持つ人、盲導犬と歩く人など、さまざまな人が列をなして歩いているイラストが描かれている
ワークショップでなにかをつくったり、ステージのパフォーマーと音楽やダンスをつくったり、来場者同士でゲームをしたり、自然のなかでのんびり過ごしたり。ひとりで訪れても、誰かと一緒に訪れても、楽しいことに出会える2日間!

そろそろ木々が鮮やかに色づく頃。飯能の豊かな自然にふれつつ、絵画展、お祭り、テーマパーク、北欧ライフスタイル体験を楽しみながら、秋のひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。