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「おかんアート」約1000点が集結!「Museum of Mom's Art ニッポン国おかんアート村」が〈東京都渋谷公園通りギャラリー〉で開催
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毛糸でつくられたトイプードルのぬいぐるみ、緑色のフサフサした動物のぬいぐるみ
左:《毛糸犬》後藤知恵子、右:《あみぐるみ》作者不詳(撮影:都築響一)

「おかん」の手仕事に注目集まる! ゆるさ満載の作品を集めた展覧会

久しぶりに実家に帰ると、毛糸でできたぬいぐるみが玄関にチョコンと置かれていて、「なんだこれは」と思った経験はないでしょうか。もしくは、おばあちゃん家の居間にあるガラス棚の、手編みの服をまとったキューピーちゃんや、軍手の指人形などを横目で確認したことはないでしょうか。そんな経験はないという人も、商店街にある古いカメラ屋のショーケースや、定食屋さんのレジ横で、手づくり感満載の作品群なら見たことがあるかもしれません。

折り紙ブロックでできたうさぎ、PPバンドや軍手でつくられた犬、手編みのティッシュボックスなど、ユニークなおかんアート作品
左上:《折り紙手芸》藤井孝子、右上:《PP バンド犬》作者不詳、左下:《軍手人形》作者不詳、右下:《ロールちゃん人形》新居光子(撮影:都築響一)

こうした、ゆるい世界感の手芸作品は「おかんアート」と呼ばれています。「おかん」とは、関西方面の方言で「母」を指す愛称。主に中高年の主婦(母親=おかん)によって、捨てずに取っておいた不要品や、身近で安価なものを材料に、余暇を利用して手づくりされた作品群が、2000年代からインターネットを中心に「おかんアート」と名づけられ、注目を浴びるようになりました。

そんな作品を集めた展覧会「Museum of Mom’s Art ニッポン国おかんアート村」が、2022年1月22日(土)~4月10日(日)の期間、〈東京都渋谷公園通りギャラリー〉で開催されます。

「Museum of Mom's Art ニッポン国おかんアート村」のチラシイメージ

作品約1000点に加え、孤高の表現者3名の特別展示も

本展のキュレーターを務めるのは、それまで光の当たらなかった無名の人々の生活を通して現代の日本社会を描く作家・編集者・写真家の都築響一さん。そして、いつ消えてもおかしくない下町の佇まいや、そこに存在するレトロを探し出す活動を行いながら、おかんアートをこよなく愛する〈下町レトロに首っ丈の会〉。2組のキュレーターが、性別や立場を越えて、「おかん」の感覚を持ったさまざまなつくり手と作品を紹介していきます。

都築響一さん、〈下町レトロに首っ丈の会〉の伊藤由紀さん、山下香さんの写真
本展のキュレーター都築響一さん(写真左)と、〈下町レトロに首っ丈の会〉(写真右)の伊藤由紀さん(左)、山下香さん(右)

2000年代以降、日本各地でおかんアートを追い続けてきた都築さん。今回の展示では、都築さんの目にとまった大小1000点以上の作品を、これまで取材してきたおかんアートの達人たちの写真とともに紹介。

さらに、都築響一さんが近年注目する、荻野ユキ子さん、嶋暎子さん、野村知広さんの3名による特別展示「おかん宇宙のはぐれ星」も同時開催されます。

おかんアートの達人、荻野ユキ子さん、嶋暎子さん、野村知広さんの写真
おかんアートの感覚にかぎりなく近くありながら、独自の表現を展開する表現者3名。左から、荻野ユキ子さん、嶋暎子さん、野村知広さん

時代の先端を行く(かもしれない)、おかんアート!

おかんの生み出す手芸作品は、日常生活において決して必要なものとはいえません。しかし、そこに存在する独創性、愛らしさ、ゆるい世界感は、新たな表現の形として注目され始めています。

本展は、おかんアートというユニークな作品を通して、専門的な美術教育には関わらないつくり手たちによる創作物の在り方から、多様な人々の表現方法や創造性をとりあげ、その魅力に迫る展覧会です。

おかんの辞書に断捨離はない。荷物のヒモは丸めて引き出しにしまっておく。輪ゴムは水道の蛇口にかけておく。デパートの紙袋は冷蔵庫の脇に差しておく。とりあえず。そしてある日、おかんにひらめきの瞬間が訪れる—— アレをああやったら、かわいいのできるやん!こうしておかんアートは生まれた(たぶん)。
おかんアートとは、文字どおり「おかんがつくるアート」のこと。メインストリームのファインアートから離れた「極北」で息づくのがアール・ブリュット/アウトサイダー・アートだとすれば、正反対の「極南」で優しく育まれているアートフォーム、それがおかんアートだ。見るひとを困惑させ、おしゃれ空間を一発で破壊し、勢いと熱さだけはあふれるほどあり、プロのアート作品にはもちろん、いまや「インサイダー」になりつつあるアウトサイダー・アートやアール・ブリュットにすら存在しない、おかん独自の破壊力。単一の価値観に収まりきらないことが現代美術の特質であるならば、おかんアートはもっとも無害に見えて、もっとも危険なアートフォームなのかもしれない。
(都築響一 キュレーターステイトメント より)

「もったいない」「いつか使える」と捨てずに取っておいた包装紙、リボン、空き箱、ビーズ、ボタン、布の端切れ、毛糸、ヒモなどを再利用してつくられる作品は、エコなアートという見方もできるかも!? さまざまな可能性をはらんだおかんアート、これからさらに注目が集まるかもしれません。

かわいいような、かわいくないような、欲しいような、欲しくないような……自身の葛藤と向き合いながら、おかんたちの豊かな感性と、表現のおもしろさに、目を向けてみてはいかがでしょうか。