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2年半ぶりの〈スウィング〉最新フリーペーパーが完成! 『Swinging vol.32』テーマは「だいじょうぶ」
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ヨットと海のようなイラストと、「Swinging vol32/だいじょうぶになりたい/絵と詩と文 Swing」と書かれたフリーペーパーの表紙画像

待ちに待った『Swinging』最新号!

「ギリギリアウトを狙う」をモットーに、既存の価値観・仕事観にとらわれない取り組みを続ける、京都市・上賀茂の福祉施設〈Swing(スウィング)〉。

2024年7月、2年半ぶりとなるフリーペーパー『Swinging vol.32』が発行されました。この最新号を、今か今かと待ち続けていたファンも多いのでは?

vol.32のタイトルは「だいじょうぶになりたい」。何かを願うにしては、少し気がかりなタイトル……! ですが、〈スウィング〉に所属するメンバーや、代表の木ノ戸昌幸さんの思いや希望を、「絵本」のような形で展開したユニークさ際立つ号です。

【画像】「昼寝する猫」というタイトルの絵と「ああ だいじょうぶになってきた <自己実現>とか どうてもよくなってきた でも また だいじょうぶじゃなくなったら どうしよう・・・ だいじょうぶじゃなくなっても だいじょうぶ だいじょうぶじゃなくなっても だいじょうぶ?」と書かれたページ
〈スウィング〉に所属するメンバーのイラストが、木ノ戸さんの言葉とともに展開されていく『Swinging vol.32』。本頁のイラストはXLさんによる作品(本誌26〜27頁)

“セーフゾーンのちょっと外側”へ

〈スウィング〉は、「べき」や「ねば」など既存の仕事観や芸術観に疑問を投げかけながら、「障害」「健常」「大人」「子ども」「男」「女」などの枠を超えて、楽しく、おもしろく、社会に働きかけてゆくことを目指す、障害のある人・ない人およそ30名が働く生活介護施設です。

2006年4月に〈NPO法人スウィング〉による運営がスタート。2024年1月、〈株式会社NPO〉に運営法人を変更しました。

〈スウィング〉の活動はじつにユーモラス。ブルーカラーの戦隊ヒーローが街中でごみを拾う清掃活動「ゴミコロリ」、絵や詩などの自由な創作活動「オレたちひょうげん族」、京都市バスのベストルートを提案する京都人力交通案内「アナタの行き先、教えます。」のほか、ラジオ配信、オリジナルグッズ製作など、“セーフゾーンのちょっと外側”を狙った多岐にわたる自主発信を行っています。

現在は〈こここ〉において、メンバーの“手書き文字”に、木ノ戸さんによる“贈る言葉”を添えた連載「生き方は、ひとつじゃないぜ。|スウィングからの贈る言葉」も公開されています。

会報誌からスタートした、フリーペーパー『Swinging』

『Swinging』の制作がスタートしたのは、〈スウィング〉を立ち上げて間もない2006年10月。当時はフリーペーパーではなく、会員や関係者に向けた「会報誌」として発行され、内容も事業活動報告がメインだったといいます。

その後、イベント出店時にお客さんへ配布するなど、だんだんとオープンな「情報誌」という位置づけになっていった『Swinging』。10号を数える頃から、〈スウィング〉の活動やスタッフ・メンバーのことを広く知ってもらいつつ、福祉というカテゴリに限らず発信していきたいという思いが強くなり、「ニュースレター」へと舵を切っていきます。

さらに試行錯誤を続け、vol.15からは外部のデザイナーを招き「フリーペーパー」へと方向転換。デザインやコンテンツを一から見直し、誰もが楽しめる読み物として形になったのがvol.16だといいます。

【画像】パンダのイラストと「関西在住30代3名、福祉×アート×デザインについて語り合いました。」と書かれたSwinging vol16の表紙
2014年6月に発行された『Swinging vol.16』の表紙

以降も、各号ごとにフォーマットに準じたり、崩したり、左綴じを右綴じにしたり、さまざまな試みを行ってきた『Swinging』。

vol.19では「障害者アート」をテーマに、さまざまな有識者へのインタビューを詰め込んだ号になったかと思えば、vol.28はメンバー・四宮大登さんの個展開催に絡めて展覧会パンフレットにするなど、号を重ねるごとに自由度の高いフリーペーパーが展開されていきました。

【画像】男性の顔のイラストと、「総力特集 永遠のリストラ候補 沼田良平★ “ひとりの、ただの男を、掘り下げるということ”」と書かれたSwinging vol21の表紙
〈スウィング〉のスタッフ・沼田亮平さんを徹底的に特集したvol.21の表紙。「メンバーにフォーカスしがちだけれど、一緒に働いているのはスタッフもメンバーも同じ」という木ノ戸さん。読者からの反応がよく、会員数も大きく伸びた号なのだとか
【画像】着物を着た女性の写真と「日刊 上田假奈代 総力特集 ゲストハウスとカフェと庭 ココルーム」と書かれたSwinging vol29の表紙
「自分たちのことばかりだと、逆に伝わらない」と、vol.29は大阪府・西成区にある〈NPO法人ココルーム〉を総力特集。主宰の上田假奈代さんの1万字インタビューや、法人の活動が紹介されています

これらの自由さのなかには「業界外への循環をつくる」というテーマも潜ませているといいます。福祉のことに限らず、むしろそれを超えて〈スウィング〉のことを伝えていくフリーペーパーにしたかったと、代表の木ノ戸さんは語ります。

障害のある人のことを広く伝えたいという思いがあっても、そこにフォーカスしすぎると、業界内の話題として落ち着いてしまう。そこを超えていくために、より“普遍性”を意識した内容を扱うようになりました。

フリーペーパーは、“つくり手もフリー”なんだという、そんな意識もどんどん強くなっています。

「だいじょうぶになりたい」

最新号となるvol.32もますます自由度を高め、これまでの『Swinging』にはなかった「絵本」という形で制作されています。

そのきっかけとなったのは、メンバーのQさんが描いたヨットのイラスト。

【画像】「アーラ ヨット」という手描き文字&ヨットのイラストに「だいじょうぶ? 人生あきらめちゃったの? それとも 人生なめてるの? どっちでもないよ きみもこのくらい 力を ぬけばいいんだよ だいじょうぶ だいじょうぶ」と書かれている
最新号vol.32の8〜9頁に掲載されている、Qさんのイラスト

本人さえ描いた記憶がない、というゆるい絵を前に「みんなで笑って、そして、すごくだいじょうぶな気持ちになった」と振り返る木ノ戸さん。これまでの活動を象徴するようなQさんのイラストが、〈スウィング〉にとって大切なことを思い出させてくれたといいます。

「スウィングの絵本をつくりたい」――15年以上前からあった構想を、この機に実現させようと動き出し、およそ2年半ぶりの、株式会社となって初めての『Swinging』の発行となりました。

【画像】「カレーたべてるけど カレーたべたい」という手描き文字&カレーを食べている人のイラストに「だいじょうぶ? カレー愛がつよすぎて だいぶ おかしくなってるんだけど・・・ ひとにどう見られようと <好き>が だいじなんだ だいじょうぶ だいじょうぶ」と書かれている
メンバーのイラスト、詩、メモに、木ノ戸さんの「だいじょうぶ」をテーマにした言葉が添えられています。左のイラストは、メンバー・ヒマワリさんによるもの(本誌10〜11頁)
【画像】黒い背景に白い文字でたくさんの手描き文字が書かれている
冒頭の見開きには、人文系私設図書館〈Lucha Libro〉を主宰する青木真兵さん・海青子さん夫妻、『「能力」の生きづらさをほぐす』の著者・勅使川原真衣さん、翻訳などで〈スウィング〉の活動を長く支える平賀麻紀さんの4名が提供した、世の中にあふれる「だいじょうぶじゃない言葉たち」も掲載されています(本誌2〜3頁)

「だいじょうぶになりたい」。この言葉は、法人形態の変更など、組織として大きな変革をしなければならなかった約2年間のなかで、木ノ戸さん自身が感じてきた気持ちだといいます。

「だいじょうぶ」という言葉には“救い”のようなマジックがある。濃度の差はあれ、今の社会に安心感を覚えられない人はたくさんいると思います。そういう人の枕元にでも置いてもらえたらうれしいです。

「だいじょうぶ だいじょうぶ」と繰り返し、肯定してくれる言葉やイラストに、フッと肩の力が抜ける人も多いはず。最新号は、沖縄から北海道まで全国300箇所に配架されているので、見かけたらぜひ手にしてみてください。

今後も新しい『Swinging』を確実に手に入れたい方は、年会費3000円で〈スウィング〉の会員となり、最新号がお手元に届く「SWING SKY CLUB」(SKY=Shippai Kihon Yan)も要チェックです!

【画像】「SWING SKY CLUB 会員募集中!」とかかれた年会費3000円のスウィングへの入会案内