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展示「The Flavour of Power─紛争、政治、倫理、歴史を通して食をどう捉えるか?」が山口情報芸術センター[YCAM]にて6月25日まで開催中
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フライヤー

6月25日まで、[YCAM]が「食と倫理リサーチ・プロジェクト」の成果発表展を開催中

〈山口情報芸術センター[YCAM]〉(山口県山口市)は、展覧会「TheFlavour of Power(ザ・フレーバー・オブ・パワー)─紛争、政治、倫理、歴史を通して食をどう捉えるか?」を2023年6月25日(日)まで開催中です。

本展は、[YCAM]が実施する研究開発プロジェクト「食と倫理リサーチ・プロジェクト」の成果発表として実施されます。災害、バイオテクノロジー、倫理、サステイナビリティの観点から「食」を捉え直すため、2021年度からスタートしたプロジェクトです。

展覧会会場

アーティストコレクティブ〈バクダパン・フード・スタディ・グループ〉の日本初個展

「食と倫理リサーチ・プロジェクト」は、これまで[YCAM]のスタッフを中心に、インドネシアを拠点に「食」をテーマに活動するアーティストコレクティブ〈Bakudapan Food Study Group(バクダパン・フード・スタディ・グループ)(以下、バクダパン)〉が共同で実施してきました。

〈バクダパン〉は、8名の女性から構成され、食はお腹を満たすものとしてだけではなく、料理をはじめ、政治、社会、ジェンダー、経済など、幅広いテーマについて語るための道具にもなり得ると考えています。

活動メンバー
8人の活動メンバーで構成される〈バクダパン・フード・スタディ・グループ〉

プロジェクトの過程で、[YCAM]は〈バクダパン〉と共に、食にまつわる倫理的な側面の調査を実施。主に、太平洋戦争中の日本とインドネシアの食における関わりから、農作物の遺伝子改変や単一作物の生産依存(モノカルチャー)を取り上げてきました。

これまでのプロセスを経て、2022年1月から6月にかけて資料展示を実施。そして本展では、〈バクダパン〉の日本初の個展として、リサーチ成果を映像インスタレーション、カードゲーム、資料展示として発表します。

〈バクダパン〉が食を通して伝えるものとは

昨年秋には、〈バクダパン〉のメンバーが山口に滞在し、フィールドリサーチを行なっています。YCAMスタッフと共に地元の生産者や料理人、研究者のもとを訪ね取材をし、展覧会のテーマを探りました。

また、山口にもゆかりのある磯永吉らが開発を行った「蓬莱米(ほうらいまい)」にまつわる調査を行いました。これらのリサーチの成果は、今回の展示作品「Along the Archival Grain(アロング・ザ・アーカイバル・グレイン)」にも登場します。

その時の様子は、リサーチの経過を伝える瓦版「味見だより」から知ることができます。

味見だより
味見だより
リサーチの経過を伝える瓦版「味見だより」

インスタレーション作品やカードゲームを通じて発表

展覧会の注目ポイントは、リサーチ結果を、インスタレーション作品やカードゲームの形で発表していることです。

例えば、太平洋戦争中、インドネシアを占領統治した日本が実施した食糧政策は、現在もなお、現地の食糧システムに影響を与えています。

この問題を〈バクダパン〉は映像インスタレーション作品として展示。インドネシアで発行されたプロパガンダ雑誌「Djawa Baroe(シンジャワ)」の記事を引用し、戦時中の食に関する物語を紐解いていきます。

インスタレーション作品
インスタレーション作品「Along the Archival Grain(アロング・ザ・アーカイバル・グレイン)」

また、展覧会で体験できるカードゲームは、食糧危機の旅に巻き込まれた感覚をシュミレートするボードゲーム「ハンガー・テイルズ」の日本語バージョンを[YCAM]と開発したもの。

プレイヤーは農家、卸売業者、市長の役を演じ、それぞれの立場から、食糧の循環や略奪を体験することで、食糧の調達から販売までのプロセスで起こる抑圧と搾取について考えることができます。

カードゲーム「ハンガー・テイルズ」
カードゲーム「ハンガー・テイルズ」

ギャラリーツアーやフィールドワークも開催

6月25日(日)までの会期中、関連イベントも複数開催されています。

毎週土曜・日曜にはカードゲーム「ハンガー・テイルズ」を体験するイベント「ハンガー・テイルズ体験会」を実施するほか、6月18日(日)には[YCAM]スタッフとともに作品を鑑賞するツアー形式の「ギャラリーツアー」を予定。

また、6月10日(土)・11日(日)には、山口の野山にて野草採取をして、食べられる植物について学ぶワークショッププリーズ・イート・ワイルドリー ×YCAMバイオ・リサーチ」を開催。[YCAM]のバイオリサーチを行うラボにて、DNA解析も実施し、野生植物についての理解を深めます。

〈バクダパン〉の展示や関連イベントを通して、身の回りにある食について新たな視点で深く考える機会となる本展。ぜひ会場に足を運んでみてはいかがでしょう。