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バリアフリーのオンライン型劇場〈THEATRE for ALL〉の配信映像から2作品を紹介
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ウェブサイトトップのイラスト。くるまいすのひとや、ぎそくのひと。はいけいにはビル、どうろ、さばくなど。さまざまなバリアをこえて、えいぞうをたのしむようすが、えがかれている。
〈THEATRE for ALL〉 Webサイト、トップページを彩るイラスト。身体の特性や、住んでいる場所、言語など、さまざまなバリアを超えて配信映像を楽しむ様子が表現されています

だれでも、いつでも、どこからでも。ひとりひとりが繋がれる“劇場”

アクセシビリティに特化したオンライン型劇場、〈THEATRE for ALL〉が、2021年2月よりプログラム配信を開始。演劇、ダンス、映画、ドキュメンタリー番組などの作品に、字幕や音声ガイド、手話通訳などバリアフリー対応を施した映像を配信しています。

視聴者はパソコンやスマートフォンがあれば、だれでも、いつでも、どこからでも鑑賞体験にアクセスすることができます。

作品をよりクリエイティブに魅せる〈THEATRE for ALL〉のアクセシビリティ

〈THEATRE for ALL〉によるアクセシビリティの改善は、鑑賞者のサポートにとどまらず、作品をよりクリエイティブに魅せることを目指しています。ここでは〈THEATRE for ALL〉ならではのアクセシビリティを体感できる2つの作品をご紹介します。

1)古典落語を気軽に目と耳で鑑賞できる金原亭世之介&RAGG 落語ミュージカル「お菊の皿」

「落語は落語家が一人で語るもの」という概念を吹き飛ばす、落語家の金原亭世之介さんとバンドメンバーRAGGによる落語ミュージカル。“皿屋敷”の名でも親しまれる古典落語「お菊の皿」を落語と歌で聴かせます。

落語シーンでの語りの字幕はもちろん、擬態語を漫画風の描き文字で表現したり、人魂がイラストで現れたりと、映像ならではの表現に挑戦。ただあらすじを追うのではなく、語りや笑いの豊かさを感じられる内容となっています。

きんげんていよのすけと、バンドメンバーラグの、しゅうごうしゃしん。きものをきて、はおりをはおり、おのおのがっきやスティックをてにもってたっている。
金原亭世之介とバンドメンバーRAGG ©2018 King Production Co.Ltd.
らくごミュージカル「おきくのさら」のいちばめん。らくごかのはいけいに、「ぎゃああ」というマンガふうのあかいかきもじ。
落語ミュージカル「お菊の皿」本編より。叫び声が漫画風の描き文字で表現されています

2)多様な心身を持つ人との対話からファッションの可能性を考える「True Colors FASHION ドキュメンタリー映像『対話する衣服』-6組の“当事者”との葛藤-」

6人のファッションデザイナーが6人の異なるモデルに向き合って作品制作に挑む、ドキュメンタリー映像。車椅子や義足を伴う身体、さまざまな体型、多彩な精神。それぞれの心と身体に向き合いながら、6組が経験した対話と葛藤を記録しています。

各作品の写真撮影をアーティストのLILY SHUさんが担当し、音楽家の蓮沼執太さんが素材の音やモデルたちの語りを収録。ドキュメンタリーの後半では、その写真と音で構成された、映像版写真集のようなシーンを「音声ガイド・バリアフリー字幕なし」「音声ガイド・バリアフリー字幕あり」2通りの方法で再生することで、それぞれの表現を比較しながら体験できます。

ピンクのフリルがついたドレスのうらじから、めくりあげられたドレスから、バレエシューズをはいた、モデルのぎそくのあしがのぞく。
モデルの義足の美しさを見せたいと、大胆にめくり上げられたドレス(撮影:LILY SHU)
あおじに、しろいこうしもようのドレスに、カラフルなぼうしをかぶり、あおいエクステンションをつけたモデル。うでをくみ、みぎがわのとおくをみつめてたつ。
完成した作品を身にまとう、モデルのひとり(撮影:LILY SHU)

バリアを取り除き、“劇場”をより開かれた場所へ

バリアフリーの「バリア」が意味するものは多様です。視覚や聴覚などの身体障害があること以外にも、言語の違い、作品の難解さ、さらには地理的隔たりや、育児や介護のために劇場にアクセスすることができないことなどもバリアとなります。

〈THEATRE for ALL〉では、障害のある人やそのサポートを行う団体・個人へのリサーチやインタビューを重ね、作品ごとにアーティストや制作会社と相談しながら、それぞれの作品にマッチするアクセシビリティの形を検討しています。環境や身体の違いからこれまで鑑賞機会のなかった視聴者に作品を届けられるよう、試行錯誤しながら制作しています。

映像制作と配信、教育、研究と実践。循環する3つの事業

〈THEATRE for ALL〉には、映像作品の制作と配信以外に、教育事業である「ラーニング」と研究・実践事業である「LAB」があります。解説動画やアーティストや学者などによるワークショップによって学びの場をつくる「ラーニング」と、障害当事者やアーティスト、専門家がチームになり、鑑賞環境について考える「LAB」、そしてアクセシビリティを高めた映像コンテンツの配信。この3つが循環しながら、事業を成り立せています。

今後、毎月定額で視聴できるような仕組みも導入予定です。たくさんの魅力的なコンテンツが配信されている〈THEATRE for ALL〉のサイトを、ぜひチェックしてみてください。

さくひんせいさくとどうがはいしん、ラーニング、ラボのみっつが、さんかっけいにはいちされて、それぞれのあいだにやじるしがえがかれている。ちゅうおうに、みみできくひと、こえをはっするひと、おやこ、ヘッドフォンをするひと、しゅわをするひとのイラスト。
「作品制作と動画配信」「教育」「研究と実践」、〈THEATRE for ALL〉はこの3つの軸で成り立っています