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マルシェ、クリエイタートーク、ラジオも! 福祉に関わりたい人との出会いをつくる「せせせ日曜市」レポート せせせプロジェクト|こここラボ vol.07

Sponsored by 世田谷区〈せせせ〉プロジェクト

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新たなアクション「せせせ日曜市」

2025年12月14日(日)、世田谷・福祉生まれのモノゴトを届けるプロジェクト〈せせせ〉が、イベント「せせせ日曜市」を開催しました。

会場となったのは、2025年7月に東京都世田谷区・池尻に誕生した複合施設〈HOME/WORK VILLAGE〉。区内の障害者施設が「マルシェ」出店したほか、クリエイティブの第一線で活躍するゲストを招いての「トーク」、各施設の職員が施設の特徴やおすすめ商品などを語る「ラジオ」、〈せせせ〉の取り組みや各施設の活動を紹介する「展示」などが行われました。

当日は「せせせ日曜市」を目指して来られたお客さんだけでなく、さまざまな目的で〈HOME/WORK VILLAGE〉を訪れた人も会場に立ち寄り、オープン時から多くの来場者で賑わいました。

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「せせせ日曜市」のビジュアルデザインを担当したのは、〈せせせ〉のアートディレクター・松本健一さん(motomoto Inc.)
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会場となった、旧・世田谷区立池尻中学校(閉校後は、IID世田谷ものづくり学校)を活用した複合施設〈HOME/WORK VILLAGE〉。1階には多様なお店が集い、2階と3階には働く場や学ぶ場などがあります

世田谷区×マガジンハウス〈こここ〉の共同事業として、2022年12月にスタートした〈せせせ〉。「世田谷・福祉生まれのモノゴトを届けるプロジェクト」として、イベント、フォーラム、ワークショップなどの取り組みを行ってきました。

毎年3月には〈三軒茶屋 ふれあい広場〉にて「せせせマルシェ」を開催。各施設のオリジナリティあふれる商品が、道行く人の目に止まり、手に取ってもらう機会を得てきました。

そして本年度は、「せせせマルシェ」から「せせせ日曜市」とイベント名を変え、会場も〈HOME/WORK VILLAGE〉に。同施設の場の利を生かし、マルシェ、トーク、展示と、複合的に〈せせせ〉を知ってもらえるようなイベントを企画。その模様をレポートにてご紹介します!

〈せせせ〉名物! 福祉発プロダクトと出会う「マルシェ」

〈せせせ〉では、福祉発プロダクトの紹介や販売につなげるECサイトを2022年12月に立ち上げました。それらの商品をリアルに手に取ってもらう機会をつくりたいと、2023年にスタートさせたのが「マルシェ」。

今回もせせせに参加する区内の10施設が出店し、それぞれの施設で手がけられている定番品から新作まで、多種多様な商品が並びました。

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マルシェにおいて不動の人気を誇るのが、パンや焼き菓子。今回は祖師谷で多くのファンを持つ〈わくわく祖師谷〉の焼き立てパンやレモンケーキ、〈しあわ世のもりあわせ(世田谷福祉作業所)〉の濃厚なチーズケーキや焼き菓子、〈喜多見夢工房〉のクリスマスギフトセット、バラエティに富んだ具材の〈就労支援施設ゆに〉のコッペパンサンド、パティシエ指導のもと創業当時から変わらぬ味を大切にする〈ガーデンカフェときそら(パイ焼き窯)〉の多種多様な焼き菓子などが並びました。

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「せせせマルシェ」でも完売となることが多い〈わくわく祖師谷〉のパン。ふんわり、しっとり、もちもち食感でファン多し!
〈世田谷福祉作業所〉のブースには、世田谷・下馬にある〈しあわ世のもりあわせcafe〉で提供される焼き菓子がずらり。スパイスカレーブランド〈CARMA〉とコラボレーションしたチャイスパイスセットも
〈喜多見夢工房〉のブースには、ホロホロ食感の夢ころん、4種のクッキーパック、パウンドケーキが一袋に詰まった、ちょっとお得なクリスマスギフトが登場
前回の「せせせマルシェ」で完売となった〈就労支援施設ゆに〉のコッペパンサンド。一粒一粒にたっぷり蜜を絡めたポップコーンも並びました
〈ガーデンカフェときそら(パイ焼き窯)〉のひとりのメンバーが10年以上つくり続けているというチョコチップクッキーは早々に完売!

そして、Tシャツ、バッグ、生活雑貨なども充実している〈せせせ〉のマルシェ。〈千歳台福祉園〉からはスウェーデン織りのバッグのほか、施設の利用者である「たかみちくん」のイラストを配した雑貨がずらり。さらに会場には「たかみちくん」本人が登場し、投げ銭スタイルのにがおえやさんを開店。似顔絵希望者が列をなしていました。

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〈千歳台福祉園〉の「たかみちくん」イラストシリーズ。刺繍バッグ、シルクスクリーンTシャツ、バッジ、キーホルダーなどに展開されています
フードを被った男性が、たかみちくん。正面からではなく、鏡越しにモデルを見て描くのがたかみちくん流

ポップなビーズ雑貨や裂き織グッズが人気の〈玉川福祉作業所〉は、同施設のオリジナルブランド〈irodori〉で今回初めて制作したという2026年度のカレンダーを販売。藍染・織り・刺子製品などを製作する〈Factory藍〉は、オリジナル藍染品のほか、同法人が運営するセレクトショップ〈Felice Di Al〉の商品も並びました。

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〈玉川福祉作業所〉の2026年カレンダー。もともとはTシャツの絵柄として利用者に描いてもらったイラストでしたが、魅力的な作品が多く、カレンダーで展開することに
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〈Factory藍〉のブースに並ぶ自社染め商品。藍の色もさまざまで美しい
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区内の障害者施設でつくられる商品をセレクトして取り扱う〈Felice Di Al〉。日曜市では〈喜多見夢工房〉〈岡本福祉作業ホーム玉堤分場〉〈喫茶室パイン〉〈下馬福祉工房〉の区内4つの施設のお菓子を詰め合わせたセット品を販売

「汚れがよく落ちる」「長持ちする」「洗剤いらずで環境にやさしい」と評判の、〈奥沢福祉園〉の手織り雑巾「おりぞう」。さらに「手肌にやさしい」「泡立ちがいい」とリピーターの多い〈給田福祉園〉のオリジナル石けん「Q’s SOAP」も登場。この2つの施設のアイテムが揃えば、大掃除も楽しくなりそうです。

廃材となったストッキングを譲り受けて自社で染め、メンバーが手作業で織る〈奥沢福祉園〉の「おりぞう」。年末の大掃除の時期には大量注文が入り、大忙しなのだとか
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原料をカットしたり、グリセリンを溶かして色づけしたり、ラッピングしたり。利用者それぞれが得意で作業に関わる〈給田福祉園〉の「Q’s SOAP」

「ラジオ」で語り、「マルシェ」で魅せ、「スタンプラリー」で買いまわる

ところで、ブースに並ぶ商品には、生まれた背景や物語があるものも多々。そうしたバックストーリーなどを、今回の日曜市では「ラジオ」という手段を使って会場全体に発信する試みを行いました。

ラジオの進行を務めたのは〈せせせ〉SNS担当の中野頌子。マルシェに出店している各施設の職員をゲストに迎え、日々の活動、今回の目玉商品、プロダクトが生まれた背景などをトークしました。

また、「就労継続支援A型/B型」「生活介護」「グループホーム」「多機能型事業所」など、一般ではあまり耳にすることのない福祉に関する言葉を紹介したり、各施設を見学した際に感じたこと、印象的だった風景などを交えながら、出店施設を紹介。

マイクを握った職員からは、施設名の由来、理念、利用者が日々取り組んでいること、商品にまつわるエピソード、本日の目玉商品、新商品のお知らせなどが語られました

そんなラジオトークは、マルシェの売上にも貢献。職員が紹介する目玉商品がトーク後に完売したり、手に取ってもらうきっかけになったりと、着実に来場者の心に届いたようです。

〈就労支援施設ゆに〉の職員がラジオで紹介し、そのほとんどが売れた縁起物の新商品「TEITETSU」。蹄鉄とは、馬の蹄を保護するために装着する金具のこと。中世以降のヨーロッパでは、蹄鉄は幸運を呼び込んだり、魔除けアイテムとして用いられていたのだとか。こちらの蹄鉄は馬事公苑から譲り受け、利用者が丁寧に洗って磨いているのだそう

そして、マルシェにおいて初の試みとなった「スタンプラリー」。ブースを買い回るなかで、お気に入りの商品との出会いや、新しい交流の創出につながれば、という狙いがありました。

スタンプが3つ揃うと、ガチャガチャにチャレンジできるというこの企画。用意されたカプセルのほとんどが捌けることに! 多くの来場者に複数の施設の商品を手に取ってもらう機会となりました。

台紙にスタンプが3つが揃うと「せせせ」に
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ガチャガチャのカプセルには、クッキーやチャイセットの引換券、出店する施設が運営するカフェの割引券などが入っていました

福祉とコラボするクリエイターの仕事って? 「せせせトーク」

さらに今回は、クリエイティブの第一線で活躍するゲストを迎え、「福祉のものづくりの魅力、福祉と地域・他分野とのコラボレーションの可能性を紐解く」をテーマにした「トーク」を実施。

登壇したのは、〈株式会社中川政七商店〉の商品企画開発課ディレクターの羽田えりなさん。そして、アートディレクター・グラフィックデザイナーのいすたえこさん。聞き手は、〈こここ〉編集部プロデューサーの及川卓也が務めました。

奈良県で創業し、2016年に300周年を迎えた〈中川政七商店〉。その年、「今から100年後に残る郷土玩具」をテーマに、奈良の新しい郷土玩具制作を企画しました。その協働者となったのは、奈良県香芝市で障害のある人とともに社会に新しい仕事をつくりだすことを目指す〈Good Job! センター香芝〉

郷土玩具制作の企画担当を務めていた羽田さんは、張り子やその型の制作が可能な県内の会社を探すなかで〈Good Job! センター香芝〉と出会います。「鹿コロコロ」の制作が決まり、双方の希望条件や懸念を提示し合いながら、ディスカッションを重ね、〈Good Job! センター香芝〉に張り子の生産を委託。

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〈中川政七商店〉の商品企画開発課ディレクター・羽田えりなさん

制作のなかで製品ごとの個体差をなくすためのさまざまな工夫、手仕事ならではの“ゆらぎ”の残し方、協働のなかでの発見、その後の新たな展開――「鹿コロコロ」にまつわるさまざまなエピソードが羽田さんから語られました。

「工芸品を手がける職人は年々減少しています。その事実や課題には向き合いつつも、この仕事のなかで、障害のある人のものづくりも愛すべき手仕事だと感じました。そうしたことを担える施設が今後増えていくとうれしいなと思っています」(羽田さん)

〈中川政七商店〉で販売されている「鹿コロコロ」

続いてマイクを握るのは、アートディレクター・グラフィックデザイナーとして活躍するいすたえこさん。

車椅子や杖ユーザー・障害のある人・高齢者・施設職員など、あらゆる人がランウェイを行く「オールライトファッションショー」、バリアフリーや多言語など、アクセシビリティに特化したオンライン型劇場「THEATRE for ALL」、聴覚を使ってプレイする「オーディオゲームセンター」、TSURUMIこどもホスピス(大阪市鶴見区)内にある10代のための特別スペース「Teen Clubhouse」など、多様なプロジェクトのディレクションやデザインも担当しています。

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アートディレクター・グラフィックデザイナーのいすたえこさん

それらの仕事で、自身はどのように関わり、どんな視点を大切にしているか、そこから派生したモノゴトなどを語ったいすさん。

「オーディオゲームセンターでは、銀座ソニーパークに実際のゲームセンターをつくることになりました。私はアートディレクションで関わったのですが、視覚的な看板の制作や文字による表現は行わずに、目が見えても、見えなくても、誰もが同じ環境でゲームセンターにアクセスできることを軸としたデザインを行いました。また、ソニーパークと同じフロアでパンと食料品の期間限定ショップをやっていた「かまパン&フレンズ〈ナチュラル物産館〉」に声を掛け、食感や見た目をオノマトペ(擬音語・擬態語)で説明し、想像からメニューを選ぶ『オーディオバーガー』もつくったりしました」(いすさん)

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ゲストそれぞれのトークのあとは、及川より「福祉との協働において、一番最初のコミュニケーションは、どんな話を、どれほどの粒度でスタートさせますか?」という質問が。

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〈こここ〉編集部プロデューサー・及川卓也

「福祉の方々とのお仕事は初めてだったこともあり、先入観でいろいろと考えてしまうことがありました。でも、そうしたことを一番最初に先方に伝えたんです。そうすると、さまざまな提案や解決策が提示されて、それらのアイデアに純粋に感動しました。まずは、譲れないポイントを最初にお互い出し合うこと。遠慮せず、ボーダーをすり合わせておくことが必要だと感じています」(羽田さん)

「ご依頼をいただいた際、プロジェクトのゴールをしっかり把握するようにしています。そうすると、つくり上げていくなかで右往左往したときに原点に戻りやすい。とはいえ、これは福祉のお仕事に限らないこと。福祉だから、障害があるから、ということで“差”をつけない。どんなプロジェクトも同じお仕事だと捉えています」(いすさん)

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似顔絵コーナーで描いてもらった似顔絵を紹介した羽田さん

続いて及川より「福祉との協働のなかで、印象深いエピソードは?」という質問が。

「オールライトファッションショーに参加した車椅子ユーザーの女の子が『東京ガールズコレクションに出るのが夢だったの!』と打ち明けてくれて、とても喜んでいたんです。撮影の日もばっちりオシャレして、とても気合いが入っていて。こうしたことがもっともっと起こってほしいなって思います。活動のなかではエピソードだらけです!」(いすさん)

「今回のコラボを通して、鹿コロコロが〈Good Job! センター香芝〉の張子の量産体制を整えるきっかけのひとつになれたことかなと思います。弊社としても、福祉施設だから特別ではなく、商品を一緒につくる会社や仲間であり、ほかの企業と仕事をするのとなにも変わらないんだ、という意識や捉え方の変化がありました」(羽田さん)

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2人の活動、実践、言葉を受け止めた及川。「福祉や障害という制度にとらわれず、すばらしい手仕事を行う団体やつくり手、という評価や見方に変わったことを、お2人は経験してきたということですね。福祉においては、その“見方”や“捉え方”という視点がますます大切になってくるのでは、という気がしています」と言葉を紡ぎ、トークを締めくくりました。

くつろぎ処、かるた、パネル展――「せせせ日曜市」のひとこま

「マルシェ」「ラジオ」「トーク」以外にも、さまざまなプログラムが用意された「せせせ日曜市」。運営を担った〈こここ〉編集部も、たくさんの手づくりアイテムやアイデアを用意して臨みました。その様子を写真にてご紹介します。

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購入したお菓子やパンを食べたり、おしゃべりを楽しんだり。ゆったりチェアの「くつろぎ処」を開設
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せせせ参加施設〈ハーモニー〉が制作した「超・幻想妄想かるた」を楽しむプレイスポットも
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「せせせ日曜市」に先駆けて、2025年12月5日(金)からスタートした「せせせ展」。せせせプロジェクトや参加施設の取り組みや商品をパネルで紹介しました
マガジンハウスの〈anan〉〈POPEYE〉編集部が制作した福祉関連リーフレットを配布
〈シブヤフォント〉のプロジェクト「ご当地フォント」に2025年に仲間入りした「世田谷フォント」。世田谷区内の障害者施設の利用者が描いた文字やイラストをフォントやデザインパターンにし、企業や個人間で利用できるサービスを展開しています。現在は、デザインデータを自由に利用できるサブスクリプションの実証実験も行っているのだとか
まち歩きなどのイベント情報、グルメ情報、ボランティア募集など、世田谷区の耳より情報を集めた「せせせブース」
マルシェに並ぶアイテムで特におすすめしたい目玉商品には、共通のデザインポップを用意し、来場者の興味を促す工夫も。一枚一枚〈こここ〉編集部が制作しました
こちらも〈こここ〉編集部の手づくり!

プログラム盛りだくさんとなった「せせせ日曜市」。各施設で日々行われているものづくりや活動を広く知ってもらうことに加え、地域の人、企業、はたまたボランティア、サポーター、もしくはデザインやものづくりに関わってみたいというクリエイターなどとの出会いの場になることも目指して企画されました。

「福祉の世界って、なんだかおもしろそう」と、会場で感じた方もきっといるのでは⁉ ピンときた施設があれば、足を運んでみたり、見学を申し込んでみたり、思い切って飛び込んでみるのもいいかもしれません。

〈せせせ〉は今後もさまざまなアクションで、世田谷・福祉生まれの魅力的なモノゴトを届けていく予定です。どうぞお楽しみに!


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連載:せせせプロジェクト|こここラボ