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初めての野外フェス:GREENROOM FESTIVAL編 野外フェスで会いましょう! |WASSUP vol.01

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野外フェスに行ったことはありますか? 開放感のある屋外ステージから流れてくる音に身を委ねてその場の空気を味わいながら楽しむ音楽イベント――。一方で、行ったことのない人にとってはハードルが高いと感じることもあるかもしれません。

福祉事業所〈WASSUP(ワサップ)〉は、さまざまな人の積極的社会参加の実現を目指して活動する〈NPO法人Ubdobe〉が2020年にスタートした事業です。「移動支援」の取り組みとして”野外フェス参加”のサポートを実施しています。

会場にはどんなアクセシビリティが用意されているのか、どんな姿勢でのぞめば楽しめるのか。全3回にわたり、体験レポートをお届けします!

夏だ!祭りだ!野外フェスだ!!!

辛かったコロナ禍を乗り越えて、今年こそはあの熱狂を取り戻したい! そんな思いを持つ方も多いことでしょう。

本連載では、移動支援を行う福祉事業所〈WASSUP(ワサップ)〉がクライアント(移動支援の利用を希望し、私たちのサービスを利用する方々のことをこう呼んでいます)と共にフェスへ参戦。その様子をレポートしながら、「フェスに参戦したことがない」「ちょっとハードルが高い」という方々の後押しとなることを目指します。

そもそも、みなさんは移動支援というサービスをご存じでしょうか?

移動支援は、主に知的障害のある人など、移動が困難な人が、充実した日常生活を営むことができるようにサポートを行う外出時のサービスです。

障害のある人が持つ外出へのハードル。それを共に乗り越えて、誰もが好きな時に好きな場所に行けるという当たり前の生活を実現し「あらゆる人々の積極的社会参加」を実現するために、移動支援というサービスは存在しているのです。

 

今回のフェスはGREENROOM FESTIVAL!

今回お邪魔したのは横浜赤レンガ地区野外特設会場にて、5月27日〜28日に行われた、GREENROOM FESTIVAL。

「海やビーチのライフスタイルやカルチャーを伝え、子供たちに大切なビーチを残していきたい」という思いから生まれた、日本を代表する都市型の野外フェスのひとつです。

2023年は国内外から総勢38組のアーティストが出演。さらに、アートギャラリーでの作品展示や映画上映など、サーフカルチャーを中心とした様々なコンテンツを楽しむことができます。

交通手段や、道の舗装状況も快適な都市型のフェスは、障害のある人が最初にチャレンジするにはうってつけ!

広々とした横浜の街並み

フェス当日。横浜赤レンガ倉庫はいくつかの駅からアクセスが可能ですが、今回はみなとみらい線 馬車道駅にて集合となりました。

広々とした馬車道駅には多目的トイレも男女1箇所ずつあるので、ここで一度お手洗いを済ませておくのがおすすめです。

今回来てくれたのは、YOくんとTSUBASAくん。それぞれにWASSUPからヘルパーが1名ずつ入り、合計4名となりました。

現在25歳のYOくんは「無類のダンス好き」! ダウン症があり、WASSUPの移動支援の常連! そしてTSUBASAくんは21歳の大学生。脳性麻痺のある車椅子ユーザーで、YouTubeで障害についての情報発信も行っているアクティブ男子!

なんと、どちらもフェスへの参加は今回が初めてだそうです。

「誘われるまで行こうという発想すら浮かばなかった!」という声も聞かれ、障害のある人のフェス参加へのハードルの高さが窺い知れました。

クライアントはもちろんですが、スタッフだって気合いばっちり!! 集合時からワクワクが止まりません。

馬車道駅からGREENROOM FESTIVALの会場までは徒歩約10分。整備された広い歩道が続くため、車椅子ユーザーでも快適です。

途中から、緑豊かなガーデンが出現し気持ちよさは倍増! 初対面のメンバーもいましたが、道中ですっかり仲が深まった様子でした。

人と活気が溢れる無料エリア

そしてたどり着いた会場がこちら!

さすがは、12万人の集客を誇る大型フェス! 見渡す限りの人、人、人、人!!! 本当に車椅子で大丈夫?とちょっぴり怯みましたが、いざ、突入です!

GREENROOM FESTIVALは、誰でも入れる無料エリアとチケット購入者用の有料エリアの2箇所に分かれています。道路から入ってすぐに位置するこちらは、協賛出店やフォトブース等が並ぶ無料エリア。

前後左右にブースがあるため、人の流れも縦横無尽状態でしたが、「通ります!」と元気に声をかけながら、少しずつ前へ進むことができました。

配線や段差は、各所スロープが設置されている安心設計。車椅子でもスムーズに乗り越えられる傾斜になっていました。

メイン会場となる、有料エリアへ

賑やかなマーケットエリアを抜け、小道を少し歩けば、チケットを購入した参加者だけが入ることのできる有料エリアが見えてきます。

手荷物とチケットの確認を済ませて、憧れのリストバンドをGET!

ゲートをくぐれば、そこは人混みと熱気で溢れる異空間。

海に面した会場は、都市型でありながら開放感もばっちりです。

メインとなる2つのステージ周辺には、目立った日陰がないため水分補給は必須!

私たちも、まずは渾身の一杯をセレクトし、乾杯です!

そして、あとは、流れる音楽に身を委ねるのみ。

ステージ前は人で溢れていますが、人混みに入りたくない時は少し離れた場所から楽しむことができるのもフェスのいいところ!

広々とした空間で思う存分踊ることだってできますよ。

休憩タイムも楽しみのひとつ

この日の最高気温は27度。

メインステージとサブステージの熱気に火照り始めた一行は、HUMMING BIRDエリアへと移送。ここでは、活気溢れるフードトラックの合間に、日差しを遮る木陰とベンチや椅子が用意されています。

口に入りきらないほどの大きさのハンバーガーや、熱った体を中から冷やしてくれるかき氷など、よりどりみどりのフェス飯を楽しむことも可能です。

ちなみに、こちらのエリアは入り口に小さな段差が。

徒歩であれば気づかないような数センチの段差も、車椅子ユーザーにとっては大きな障壁になります。

どうしたものかとしばし考え込んでいましたが……

諦めずに打開策を探したところ、入り口から少し遠回りしたところに抜け道を発見!

スレスレでしたがなんとか通ることができました!

この時は仲間たちの知恵で解決できましたが、もちろん会場のスタッフに声をかけることもできます。スタッフ常駐のINFORMATIONブースや救護室もすぐそこに設置されていて、困った時にも安心ですね。

ちなみに、同じエリア内にはこんなブースも設置されていました。

子ども用のイヤーマフ無料レンタル!

イヤーマフとは、大きな音から耳を守る保護具のこと。お子さんはもちろん、発達障害などで聴覚過敏のある方などにも便利なアイテムです。

日本ミュージックフェスティバル協会さんによるプロジェクトだそうで、現在、GREENROOM FESTIVAL以外にも複数の野外フェスに出店中とのこと。

聴覚保護の認知向上にも繋がる素敵な取り組みです。

会場の配慮が光るプライオリティエリア

GREENROOM FESTIVALには複数のプライオリティエリア(車椅子ユーザー専用の観覧席)が用意されています。

車椅子ユーザーはLIVEが始まる前に、スタッフさんに声をかければ入場可能。付き添いは1名まで。

となると3人以上で来た時には寂しい……と、思いきや一般の観覧ゾーンも安全柵をはさんだすぐそこ!

車椅子ユーザーの方が目線が高い状態で一緒にいられるのも、ちょっぴり新鮮です。

さあ、いよいよメインステージでのパフォーマンスが始まります!

とはいえ、野外フェスでは、基本的にアーティストの姿や本番のステージは撮影禁止。

圧巻のパフォーマンスをカメラに収めることはできませんでしたが、代わりにアーティストが演奏をはじめた瞬間のYOくんの表情をご覧ください。

知ってるアーティストが楽しいことはもちろん、今まで聞いたこともなかった新しいジャンルやアーティストとの出会いがあるのも野外フェスの魅力。

日が暮れるまで超一流の音楽を浴びて、メンバー一同はあっという間に野外フェスの虜になっていったのでした……。

GREENROOM FESIVAL参加まとめ

  • 神奈川県横浜市で行われるサーフカルチャーとビーチカルチャーを背景にした野外フェス
  • 駅も近く、アクセス良好
  • 人混みはあるけれど、スロープやインフォメーションブース、イヤーマフレンタルなどの工夫もたくさん
  • 有料エリアは日陰が少ないため熱中症に要注意
  • 車椅子ユーザー用のプライオリティエリアあり
  • 音楽はもちろん最高!!!

〈WASSUP〉はこれからも、「あらゆる人々の積極的社会参加」を実現するために、どんどんワクワクする場所へのお出かけを続けます!

次回は日比谷音楽祭編を掲載予定。どうぞお楽しみに!


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連載:野外フェスで会いましょう! |WASSUP