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遊びがユニバーサルな社会をつくる!?移動支援アフタートーク編 野外フェスで会いましょう! |WASSUP vol.03

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〈NPO法人Ubdobe〉が運営する福祉事業所〈WASSUP(ワサップ)〉は、「移動支援」の取り組みとして”野外フェス参加”のサポートを実施。連載「野外フェスで会いましょう!」では、第1回、第2回と体験レポートをお届けしてきました。

第3回となる今回は、この夏の野外フェス参加を振り返ってのアフタートークです。対談するのは、WASSUP サービス提供責任者のREINAさん、スタッフのNANAKAさん、クライアントのYOさん、そしてWASSUPの運営元であるNPO法人Ubdobe代表理事 OKAさんの4名。

「事前準備は何をした?」「当日の反省点は?」など、これからフェスにチャレンジしたい方の参考になりそうなお話から「障害のある人の社会参加と遊びの重要性」といったテーマまで語り合います!

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 「企画」や「やってみない?」を大事にする提案型の福祉サービス

OKA:座談会に入る前に、あらためて活動紹介からさせてもらいましょう。僕たちWASSUPは、東京都世田谷区、渋谷区、目黒区、横浜市、そして岩手県盛岡市を拠点にサービスを提供しています。運営は、NPO法人Ubdobeという医療福祉をフィールドにしたイベント企画や情報発信を行っている団体で、WASSUPもそういった「企画」の要素を大切にしています。僕たちはそれぞれの立場に3つのルールを設けているんです。

スタッフ向け

  1. 福祉の既成概念を超えて人間や物事の本質を見つめよう
  2. 利用者さんと共に一度きりの人生を存分に楽しもう
  3. 自由な働き方や生き方を追い求めて事業所にあらゆる提案をしよう

クライアントやご家族向け

  1. 今までの人生では見たことのなかった景色を見に行こう
  2. 自分の可能性を自分や家族が一番に信じよう
  3. 気分が乗った時は積極的に社会参加をしよう

 

OKA:福祉事業は前提としてクライアントの要望を叶えるためにあるので、一方向のコミュニケーションで内容が決まっていくことが一般的ですが、WASSUPではスタッフからクライアントに「こんなことをやってみない?」という提案を積極的に行っています。今回のフェス企画もその一環で行いました。

 

音楽好き・フェス好きで自身もDJとして活動するOKAさん(NPO法人Ubdobe代表理事)

 ー WASSUPが行う「移動支援」は、通常クライアントの「移動」サポートがメインで、行き先の提案やおでかけ自体を企画するのは福祉サービスとして珍しいですよね。それにしても、なぜ行き先が「野外音楽フェス」だったのでしょう?

OKA:そもそも、WASSUPの運営団体であるNPO法人Ubdobeは、昔、全国各地のフェスで「キッズゾーンブース」を担当していたんです。その流れもあって、フェスのことは詳しかったし、業界に知り合いも多かった。そんな背景が、事業所を立ち上げたこのタイミングだからこそ利用者さんたちの新しい体験として還元できるのではないかと思ったんです。

僕自身、フェスが大好きで世界中のイベントに参加してきましたが、海外のフェスでは車椅子ユーザーが会場にいることって当たり前なんですよ。お客さんが車椅子ごと乗っている人を持ち上げて、客席前方まで運んだりしちゃう(笑)。

一方日本ではまだなかなかそういう景色は見れなくて、僕たちがそのきっかけになればいいなと思いました。

 

過去にNPO法人Ubdobeが運営していたフェスでのキッズスペースの様子

フェス会場の導線や設備など、リサーチ・問い合わせも含めた事前準備

WASSUPスタッフのNANAKAさん

 ー 障害のある人も含めたメンバー構成で、移動支援というサービスを使ってフェスに参加する場合、事前準備には何が必要なのでしょう? どう進められましたか?

NANAKA:WASSUPとしても初めてのフェス参加だったので、何かと大変でしたね。まだまだ事例が少ないので、会場設備や運営体制のリサーチや問い合わせに時間がかかりました。

事前確認の内容

・車椅子で会場に入るための導線
・救護室の場所  
・そのほか休憩できるスペースはあるか  
・困ったときに会場側に相談できる場所・窓口はあるか  
・迷子センターのようなものはあるか  
・何かあった時に声をかけられるスタッフの見分け方(こんなTシャツを着ているなどの情報)  
・車椅子の観覧スペースはあるか(付き添い含めて何人で入れるか)

NANAKA:今回は上記をメールで問い合わせてフェスの運営団体に確認しました。幸い、とても丁寧なお返事をいただいたので、安心してクライアントさんを連れていくことができました。

REINA:トイレについてはWEB上でも情報を探すことはできましたが、不安だったので事前に下見に行きましたね。クライアントさんの中には下着交換が必要な方もいらっしゃるので、「ユニバーサルトイレ有」といえど、大人が使えるサイズのユニバーサルシートの有無や個室の広さなど、その設備の詳細を知る必要がありました。

 

ふだん思い出話をしない人もフェスのことはよ〜く覚えている。実際にフェスに参加してみての感想は?

 ー リサーチや問い合わせは大切な準備ですね。福祉サービスかどうかに限らず、フェス参加で心配のある人は運営の窓口に問い合わせてみるとよさそう。実際にフェスに参加してみてどうでしたか?

OKA:まずは「GREENROOM FESTIVAL」にも「日比谷音楽祭」にも行ったYO君に感想を聞きたいですね。

YO:フェスは初めてだったけど、みんなで行って友達と遊べたことがよかったです。障害のある方ともない方とも遊べたのが楽しかった!

OKA:なるほど。ちなみにYO君にとっての「障害」って具体的になにを指しますか?

YO:僕が一番感じている障害は「コミュニケーションの困難さ」です。人と話すときは、特にタイミングを見計らうことがすごく難しいですね。

OKA:フェスにいった時もそういう困難さを感じることはありましたか?

YO:フェスの時間は、コミュニケーションの難しさを感じることはありませんでした。フェスの日は話すためのテーマや内容を考えなくてよくて、ダンスでコミュニケーションが取れた感じがしました。

 

「日比谷音楽祭」にて、ダンスという非言語コミュニケーションを楽しんだYOさんたちがハイタッチをする様子

NANAKA:確かに、ダンスは非言語のコミュニケーションだから、言語に苦手意識がある方でも楽しめますよね!当日は普段から人見知りがあるクライアントさんもいらっしゃいましたが、あの日はすごく楽しめているように見えました。

あまり思い出話をしない方も、フェスのことや当日一緒だった仲間のことは数日経ってもよく覚えているんです。そのくらい印象的な経験になったんだと思います。

OKA:周りを見渡しても、WASSUPチームが誰よりも自分を解放して踊れていましたよね(笑)。 あれはいい景色でした。むしろ、健常といわれる方が「はしゃげない」「自分を解放できない」という「障害」があるように見えたんです。

REINA:実際、スタッフも利用者さんがいたから思いっきりはしゃげましたね(笑)。

OKA:僕は仕事柄、ついついイベントオーガナイザー視点で考えちゃうんですけど。お客さんがぶちアガるとアーティストのテンションもアガるんですよ。そういうエネルギーって、案外ステージに伝わっているものなんです。だからああいうイベントにとって、リミッターを外して騒げる人の存在はとっても重要なんですよね。もちろん障害のある方たちにとっても今回のフェスはいい経験だったと思うんですけど、彼らの存在もまた、イベントにとってすごくいい影響をもたらしたんじゃないかと思います。

同じく「日比谷音楽祭」にて、どのお客さんよりも踊りまくるYOさんと WASSUPのスタッフたち

大変なのはトイレの混雑。タイムテーブルにタイミングを合わせるのも手!

ー 写真で見てもすごく楽しそう! 盛り上がりが伝播していく感じが伝わりますね。とはいえWASSUPとしては初のフェス参加。振り返って反省点や現地で困ったことはありましたか?

REINA:やっぱりトイレは大変でした! 当日のお昼にユニバーサルトイレを使おうとしたんですが、ものすごい列ができていて。仮設トイレはたくさんあったんですが、車椅子ユーザーをはじめ身体に障害のある方はなかなか使えないので、トイレの選択肢がすごく限られているんです。結局列に並んでいるうちに、目当てのアーティストの出番が終わってしまって、あれは悔しかったですね……。

NANAKA:反省として、当日の予定を作るにあたって、トイレタイムのタイミングはそういった情報も踏まえて考えておいた方がいいと思いました。人気の高いアーティストがステージに上がっている時間帯が、一番トイレが空いていて狙い目、ということは学べたので。もちろん私たちにも人気アーティストを見たい気持ちはあるのですが、その時間帯をトイレタイムとするのがベターかなと思います。

REINA:今は仮設トイレもバリアフリータイプのものが出ていますから、それがフェス会場にも普及していくと嬉しいですね!

「遊び」があるから、生活や仕事でも頑張れる

WASSUPの移動支援サービスを利用するYOさん(左)とWASSUP サービス提供責任者REINAさん(右)

 ー 今回の野外フェス参加はただ「移動」するだけじゃなくて、「遊ぶ」ことまでしっかり盛り込んだ企画でしたよね。障害のある人の「遊び」の重要性についてどのように感じましたか?

OKA:楽しみがあるから頑張れる。特に僕らみたいな失敗体験が多い人間は、そういった楽しみが失敗から立ち直るためのチャンスに繋がっていると思うんです。そのためにも「遊び」って生活に必要不可欠なものだと思うんですよね。

YO:僕も今、移動支援が一番の楽しみです!

REINA:実際、YO君をはじめとするクライアントやご家族から「移動支援があるから普段の仕事や生活が頑張れる」といった声はよく聞きますね。余暇の充実がご本人の生活のメリハリや、人生の生き甲斐に繋がっている。そういう意味では食事や排泄、移動の支援と同じように、余暇・遊びの支援の充実は大切なものだと思っています。

 ー 今後はどんなことに挑戦したいですか?

REINA:クライアントさんの中には、「いつか家族でフジロックに行きたい!」という夢を持っている方もいらっしゃるんですよ。今回はその練習として参加してくださって!「GREENROOM FESTIVAL」や「日比谷音楽祭」は都市の中の会場だから比較的参加しやすい条件が揃っていました。でも、フジロックのように自然豊かな会場で大規模なフェスになると、トイレや移動に関する困難がさらに増えます。だから、今回のような経験談が広まることによって、会場側の合理的配慮の促進や、スタッフ・来場者の意識の変化に繋がったら嬉しいですね。

YO:僕は、僕が好きな移動支援のことを、もっとたくさんの人に知ってもらいたいと思っています。

NANAKA:そうそう、移動支援という福祉サービス自体も、まだまだ認知度が低いですよね。障害のある人やそのご家族ですら知らない方がいらっしゃる。その認知度の低さから働き手の不足も深刻なんです。ただ、先ほどもお話があった通り余暇の時間って生活には必要不可欠なものですし、働き手もクライアントさんといろんな場所に行っていろんな体験ができる、すごく楽しい仕事なんですよ。だから、こういった発信を通してもっともっとその存在や重要性が広まっていってほしいなと思います。

OKA:そうですね。今回は初めての挑戦ということで都市型のフェスを選びましたが、僕らも今後あらゆる会場に挑戦していきたいと思います。フェスってそれぞれ「色」が全然違うんですよ。その違いを楽しんでもらえたらと思いますね。あとは、フェスは大規模なものになればなるほど、様々な人種や文化の人が入り混じってくる。そうなれば当然、障害の有無もまた違う角度で見えてくると思うんです。僕たちのような人間がそういった新しい世界に積極的に飛び出していくことで、あらゆる人たちがもっと居心地良く、自由に過ごせる社会へと繋がっていくと思っています。

それぞれが「一歩外へ踏み出す」ことで広がる、ユニバーサルな社会

いかがでしたでしょうか?

全3回にわたる連載「野外フェスで会いましょう!」は最終回を迎えましたが、WASSUPの移動支援サービスではこれからも野外フェスをはじめ、ワクワクする場所にお出かけしていくことでしょう。そうした実践や新しい企画については、ぜひWASSUPのWebサイトをチェックしてみてください。

本連載を通して、自分のやりたいこと、行きたい場所への移動をサポートしてくれる「移動支援」という福祉サービスがあるということを知っていただけたら嬉しいです。

そして、野外フェス参加ってなんだかハードルが高いな……と感じていたフェス未体験の方にも、野外フェスにもこんなにたくさんの工夫やサポートがあるんだ、これなら行けるかも!?と発見があったのではないでしょうか。

さあ、次回はぜひ、野外フェスで会いましょう!!!(こここ編集部)


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