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聞こえない/聞こえにくい子どものオンライン対話授業「サークルオー」を長く、より遠くまで。制度化も見据えたクラファンに挑戦中
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【クラファンサムネイル画像】離れていても、ひとりじゃない。ろう難聴児向けオンライン支援の制度化へ、の文字

聴覚障害がある子どもたちが学び、前向きになるオンライン対話授業「サークルオー」

「ここに来れば、いろんな“先生”に出会える」

NPO法人Silent Voice〉が提供する、ろう難聴児向けのオンライン授業「サークルオー」には、手話通訳者や学校教員、弁護士、スポーツ選手など、聴覚障害のある大人だけでなく聴者の大人もいます。手話による小・中・高校生の学習サポートを行うほか、子どもたちの興味関心を広げる集団学習の場も提供。「将来、先生のように看護師になりたい」など、子どもたちが進路を前向きに捉えるきっかけにもなっています。

同法人は、この対話型授業をより多くの子どもたちに届けるため、支援そのものの制度化を見据えたクラウドファンディングに挑戦中。2024年10月31日(木)まで受け付けています。

オンライン対話授業「サークルオー」の紹介動画。2022年8月までは無償、現在は有償のサービスとして提供されています

放課後等デイサービスを運営して見えた「聴覚障害のある子どもの孤立」

〈Silent Voice〉は、聞こえない子ども、聞こえにくい子どもの教育や就労の選択肢拡大を目指しているNPO法人です。2017年には大阪市に総合学習塾「デフアカデミー」を設立して、聴覚障害のある小・中・高校生を対象に、集団授業やイベントを実施。居場所と成長の場を提供してきました。

デフアカデミーは、福祉制度の枠で運営される、放課後等デイサービス事業です。サービスの運営を継続する中で、時間をかけて遠方から足を運ぶ利用者も多くなっていきました。なぜ、遠方からわざわざこの場所に通うのか。理由を深掘りしていくと見えてきたのは、「聴覚障害がある子どもたちが孤立してしまう構造」でした。

聴覚障害のある子どもは、およそ1000人に1人といわれます。人口の少ない地域であるほど、通える範囲にろう難聴児向けの支援施設がありません。そのため、聴覚支援学校が1つしかない都道府県は全国で20もあり、全国で約2万件ある放課後デイサービスも、聴覚障害向けは20件ほどしかありません。

支援にアクセスがしづらいゆえに、学習についていけない、なかなか友人もできない、将来に対しても前向きになれない。同法人のアンケートでも「手話だけで話せる場所がひとつもなかった」「学校の勉強についていけず、塾に行くも言葉が聞き取れず、既存のサービスを利用できなかった」などの声が寄せられました。

【画像】聞こえない・聞こえにくい子どもにあったサポートが必要となる理由を使いしたもの。学校でも、第三の居場所でも支援がないことで、子どもが孤立してしまうことを表す

「離れても、ひとりじゃない」コロナ禍で生まれたオンライン対話授業

数少ない聴覚障害向け放課後等デイサービスのひとつを運営していますが、まだまだ支援が必要な子どもたちは全国各地に沢山います。〈Silent Voice〉は、「いつかは」遠隔での支援を届けようと決めていましたが、それが「今やらなくては」に変わったのは、新型コロナウイルス感染症の拡大がきっかけでした。

それまで口元で会話をなんとか読み取っていた子どもたちにとって、コロナ禍でのマスクはコミュニケーションの大きな壁となりました。またオンライン授業では、参加者が多くなると一画面に全員が入り切らなくなり、誰が話しているのかはわかりづらく、さらには手話での質問も見過ごされやすく、学習に大きな支障が出るケースもありました。

そんな全国のろう難聴児の困りごとに、どう向き合っていくか。2020年8月、〈Silent Voice〉が始めたのがオンライン対話授業「サークルオー」です。

現在同サービスでは、3つのプログラムを提供しています。1つ目は、授業の内容とコミュニケーション方法を一人ひとりに合わせる「個別授業」。2つ目は、同じクラスメイトと3カ月過ごして、同年代との繋がりを生み出す「クラス型授業」。3つ目は、学校や習い事では経験できない体験や出会いを生み出す「イベント」です。

オンラインで実施しているからこそ、手話や音声、字幕、ホワイトボードなどを使って子どもに合わせた支援ができる先生を全国から探せます。また、子どもと先生の共通の関心事でマッチングすることも可能です。

【画像】個別授業、クラス型授業、イベントの3つのプログラムを示した図。これまでの授業回数は5119回、のべ利用者119人、エリアは海外を含む19であることがわかる

リリース後、サービスの目的だった「遠隔での支援」を着々と実現している「サークルオー」。同サービスを利用した子どもたちや保護者からは、学習支援に対する評価だけでなく、「進路を前向きに考えられるようになった」「娘がいろんなことに挑戦するようになった」など、子どもたちの自己効力感にも大きく影響していることが明らかになりました。

【写真】笑顔でパソコンに向かう高校生
【写真】パソコンの前で、タブレットを広げ解説をする講師

サービスを長く、より遠くの子どもたちに届けるための「制度化」を目指す

「サークルオー」を、今後も全国の子どもたちに継続的に届けるためには課題があります。現状、放課後等デイサービスの支援制度では、利用者は1割負担でサービスを受けることが可能です。しかし、この制度は「通所」のみが対象であり、「オンライン支援」は全額負担。これまで同サービスでは、国からの助成金と利用家庭からの利用料で運営されてきましたが、助成金は毎年採用される確証はありません。支援を受けられない方々から多くの利用料を受け取るわけにもいかず、存続が危ぶまれています。

今回の〈Silent Voice〉のクラウドファンディングでは、「サークルオー」を存続させることを目的にしつつ、ろう難聴児のオンライン支援が国の支援制度となるために活動していきます。目標金額はAll or Nothing形式で1000万円となります。

【画像】オンライン支援には補助がない現状を変え、通所もオンラインも上限4600円で補助が出る制度を目指す図解

すでに〈Silent Voice〉は昨年度、こども家庭庁の「NPO等と連携したこどもの居場所づくり支援モデル事業」に採択され、「サークルオー」の実績報告を行いました。2027年度の放課後等デイサービスの報酬改訂時の制度化に向けて、「授業の継続」や「先生のスキルアップ研修実施」「支援制度化に向けた政策提言活動」などに尽力していくと言います。

オンライン支援が国の支援制度として認められれば、現在の私たちのように寄付型での活動推進ではなく、国からの報酬によって多数の事業所が生まれ、ろう難聴児のセーフティーネットとして社会が変わっていくと考えています。その変革期の中心を担っていくべくチャレンジさせてください。(NPO法人Silent Voice 代表理事 尾中友哉さん)

子どもの教育を取り巻く地域格差はいまだ残されています。特に、障害がある子どもたちへの支援はまだまだ手が届きづらい状況にありますが、テクノロジーの発展とともに、そこに挑戦する人たちがいるのも事実です。〈Silent Voice〉が起こした波は、これからより大きなうねりを上げて、沢山の子どもたちに届くことでしょう。

同法人の活動に興味関心がある方はぜひ、クラウドファンディングページや寄付サイトをご覧ください。