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自分を、ともだちを、抱きしめよう! “からだの権利”を楽しく学ぶ、マダム ボンジュール・ジャンジさん著『HUGたいそう』発行
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ジャンジさんの写真が大きく掲載された書籍の表紙
2025年6月〈ゆまに書房〉より『HUGたいそう』が出版されました

自分の体を大切にすること、違いを認め合うことを体感できるワークショップが一冊の本に

相手の肩や背中に腕を回し、ぎゅっと抱きしめたり、ぽんぽんと軽く叩いたりする仕草、ハグ。ハグをすると、嬉しい気持ちになり、ホッと安心したことを思い出す方もいるのではないでしょうか。もちろんこうした温かいハグのためには、相手の同意を確認することが必要です。

ハグをすることは、自分の体と相手の体を尊重し、大切にすることにつながる、と「HUGたいそう」を考案した、パフォーマンスアーティストのマダム ボンジュール・ジャンジさんは言います。2001年以来、小学校や福祉施設などさまざまな場所で行われてきたこの「HUGたいそう」が今般書籍化されました。

この体操は、自分自身の体を確認するように触れたり、他の人の体に触れるときには同意を取ることを学んだりするエクササイズで、自分の体を大切にすること、違いを認め合うことを知り、助け合うきっかけをつくることができます。

書籍には「HUGたいそう」のやり方が写真とイラスト入りでわかりやすく解説されているほか、ハグをしたくないときには「いやだ」と伝えるポーズも紹介。ユネスコの「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」でも掲げられている、「自分のからだに、誰が、どこに、どのような方法で触れることができるかを決める権利」=「からだの権利」についても楽しく学ぶ事ができます。

ジャンジさんとオオカミの着ぐるみが、手をつないでハートの形をつくっている、書籍のページの一部
マダム ボンジュール・ジャンジ『HUGたいそう』(ゆまに書房)より

ジャンジさんと「HUGたいそう」

本書の著者である、マダム ボンジュール・ジャンジさんは、パフォーマンスアーティストとして1990年から舞台に立ち、東京を中心にフランス、ベルリン、ストックホルムなど海外でも幅広く活躍してきました。

交歓のクラブイベント「ジューシィー!」、HIVのリアリティを伝えるカラオケ大会「Living Together のど自慢」、子どものための絵本読み聞かせプログラム「ドラァグクイーン・ストーリー・アワー東京」など、1990年代から現在に至るまで、個人の違いを超えて出会う場をつくり続けています。

また、2025年5月までは新宿2丁目にある〈コミュニティセンターakta〉の理事を務め、HIV・セクシュアルヘルスの情報提供や支援活動も行ってきました。

そんなジャンジさんが考案した「HUGたいそう」は、2001年に「ハイ!キング HiKING」というユニットで参加した、ワタリウム美術館の展示「アート・1日小学校展」で生まれたものです。「ハイ!キング」が行ったスキンシップをテーマにした展示やワークショップのなかで、ジャンジさんは「HUGたいそう」を来場者とともに66日間行いました。

その後も、小学校、福祉施設、屋外イベントなどで50回以上続けられてきた「HUGたいそう」。さまざまな人に親しまれてきたこの体操が、考案から24年の時を経て、ついに書籍化されました。

動きながら学び感じる、自分や他人の心と体を大切にすること

本書『HUGたいそう』は、実際の体操の流れに沿って掲載されています。

準備体操に始まり、まずは自分の体に「頭、顔、耳、首」と上から順番に触れていきます。自分の体のあり方や私という存在を確認する時間です。

次に、ポーズを取りながら、少しずつ体を動かしていきます。親指と人差し指の先をくっつけて輪にし、前に出す「ポーズOK」は、自分にも人にも「OK」を出すポーズ。どのページにも、動きを説明する言葉とともに、ジャンジさんが実際に体操をしている写真やイラストが掲載されています。

右側にオッケーポーズをしているジャンジさんの写真、左側にはポーズの解説がテキストで掲載されている

続くページは「ポーズ やっだぁー!」です。自分の体と心は自分のもの。「いいよ」と言っていないのに触られたり、いやだと思うことをされたときには「いやだ!」と言ってよいのだと、このページは教えてくれます。

右ページと左ページにそれぞれ、拒否を表現するポーズをしているジャンジさんの写真が掲載されている
右下の「ハグちゃんのワンポイント」が、動きのポイントや、ポーズの意味を解説してくれます

自分で自分をハグした後は、2人で取り組む動きへと移っていきます。まずは「手と手のHUG」として指先から触れ合い、手をつなぎます。

そして相手の背中に手を回して、HUGをしていきます。HUGをするときには、「必ず相手に確認してからする」こと。さらに、「断るときは やさしく気もちを伝え」ること。動きと併せて、自分や相手の心と体の権利を守るためのポイントを学ぶことができるのが本書の特徴です。

2人で、3人で、ハグをしている6組の写真が掲載されている

2人でのHUGから発展して、今度は参加者みんなが一列に連なり「汽車HUG」や「おしくらまんじゅうHUG」へと展開していきます。

参加者が前の人の肩に両手を乗せて、連なっている様子

最後は地面に寝そべって、地球や宇宙に包まれていることを感じる「地球HUG」と「宇宙HUG」を行います。もう一度自分の体を頭から順に触り、胸や手首・足首にある鼓動を感じて、太陽をイメージしたらおしまいです。終わる頃には、すっかり心と体が温かくなっていることでしょう。

本書には、これまでの「HUGたいそう」の記録や、体操をやってみた方による感想、そして登場したモデルの紹介が掲載されています。顔写真と名前、性別、自分の体の好きなところなどが掲載されたページからは、人には目に見えない違いがあること、それぞれの好きなものが異なるように、身体的な特徴もさまざまなのだと知ることができます。

巻末には、多様性やジェンダーについて学ぶことができるおすすめの絵本も掲載。ページをめくり、体を動かし、楽しみながら、自分や他人の心と体の権利を尊重することの大切さが自然と染み込んでくるような一冊です。

誕生の地・ワタリウム美術館で、出版記念イベントが開催

本書の出版を記念して、2025年6月28日(土)11:00〜21:00に「マダム ボンジュール・ジャンジ新刊絵本『HUGたいそう』出版記念 いちにちまるごとHUGたいそう」がワタリウム美術館(東京都渋谷区)のミュージアムショップ〈オン・サンデーズ〉で開催されます。

18時からはジャンジさんと一緒に「HUGたいそう」を行い、19時からは出版記念トーク「表現とセクシュアリティ1秒先の未来〜」が開催されます。共にアーティストで、本書にモデルとして登場した大塚隆史さんと、絵本の制作を手掛ける末浪伸二さんの2人が、ジャンジさんと語り合います。

イベントの参加費は無料。トークの後にはサイン会も行われます。ぜひ、ジャンジさんに会いに行ってみませんか!?

また、8月30日(土)・31日(日)に武蔵大学で行われる表象文化論学会第19回大会にて、本書の販売ブースが出店されます。8月30日(土)17:00〜18:20には、ジャンジさんが「セクシュアリティと多様性〜ドラァグクイーンによるショー, 絵本読み聞かせ, HUGたいそう〜」をテーマにパフォーマンスと講演を行います。

書籍の表紙画像の上に、イベントの案内がテキストで掲載されている
ワタリウム美術館〈オン・サンデーズ〉で開催されるイベントの案内

本書に掲載されている精神科医・椿佳那子さんの解説では、ハグがストレス緩和や免疫力アップに効果があることを解きます。「ハグをしたくない」という意思は尊重されるべきであると前置きしながら、私たちは気恥ずかしさからハグをする機会をしばしば見過ごしているのではないかと語りかけます。

“大人も子どももこの本によってハグの素晴らしさを学び、ハグとのこれまでの付き合い方をもう一度考え直して、ハグをもっと生活に取り入れてみませんか。心理的安全性さえ保たれていればいつでもどこでもできるのがハグのいいところです。一人ハグ、二人ハグ、地球ハグ、いろいろ試してみたいですね。”

いつでも、ひとりでも、だれかとでもできる「HUGたいそう」。ぜひ書籍やイベントでジャンジさんと一緒に体を動かしてみませんか。