ニュース&トピックス

多様な“出会い“から生まれた映像&音声表現が、「TURNフェス」オンラインプログラムで公開中
イベント情報

  1. トップ
  2. ニュース&トピックス
  3. 多様な“出会い“から生まれた映像&音声表現が、「TURNフェス」オンラインプログラムで公開中

しゃしんをならべたはいけいのうえに、うかびあがるTURNsのもじ
「TURNフェス6 オンラインプログラム」の一つ、田村大さんによるTURNのドキュメンタリー映画『TURNs 2016-2021』。その他、映像作品や音声、テキストと写真によるコンテンツは9月末日までオンライン上で公開中

TURN フェス6 オンラインプログラム」が9月末日まで公開中

“違い”を超えた出会いで表現を生み出すアートプロジェクト〈TURN〉が、「TURN フェス6 オンラインプログラム」を開催中です。ウェブサイトを舞台に、さまざまな表現やアーティストと出会うプラットフォームとして展開されるオンラインプログラムでは、2021年9月5日(日)までコンテンツを順次公開。9月末日まで閲覧が可能です。

今回はオンラインプログラムの中から、〈こここ〉が注目する4作品をご紹介します。

TURN フェス6 オンラインプログラム」の注目作品をご紹介

「身体表現を介した交流の記録」 森山開次

〈TURN〉の活動の軸でもある「TURN交流プログラム」は、アーティストと、福祉施設や社会的支援を必要とする人々が交流し、共に活動するプログラム。その一環で、ダンサー・振付家の森山開次さんは、2016年度よりさまざまな福祉施設を訪れてきました。森山さんがダンスを通して多様な背景を持つ人々と交流した様子を、カメラマンの冨田了平さんが記録した映像が「身体表現を介した交流の記録」シリーズとして公開されています。

訪れたのは、京都府亀岡市にある〈社会福祉法人松花苑〉が運営する障害者支援施設〈みずのき〉や、静岡県浜松市にある〈認定NPO法人クリエイティブサポートレッツ〉が運営する障害児者通所施設〈アルス・ノヴァ〉、東京都昭島市にある障害のある人がリサイクルびんの洗浄などの仕事に取り組む〈きょうされんリサイクル洗びんセンター〉など、全7施設。

森山さんは、施設で過ごす人々の日常に混ざり、その場の空気感やそこで生まれるさまざまな表現に身体で応答しながら、ダンスを紡ぎます。

森山さんのダンスを楽しむことができるのはもちろん、様々な施設の日常を垣間見ることができるのも本シリーズの魅力です。

みぎがわにダンスするもりやまさん。ひだりがわに、ヘッドフォンをした、しせつのりようしゃがすわっている
「身体表現を介した交流の記録1」より。〈みずのき〉利用者と身体を介して交流する森山開次さん

「まじむらにゃんべえの世界」 飯塚貴士

人形映画監督の飯塚貴士さんは、2018年度より「TURN交流プログラム」において、大田区立障がい者総合サポートセンター〈さぽーとぴあ〉」に通い、交流を続けてきました。毎週金曜日の夜に〈さぽーとぴあ〉が開く、企業就労者のリフレッシュを目的とした場「たまりば」を通して交流を行ってきましたが、2020年度より新型コロナウイルス感染症の影響で「たまりば」の活動は休止となります。

遠隔でもできる交流の形として、飯塚さんが始めたのが今回公開されている映像「まじむらにゃんべえの世界」です。「まじむらにゃんべえ」というキャラクター宛に〈さぽーとぴあ〉や「たまりば」に通う人が手紙を送ると、「まじむらにゃんべえ」からのリアクションがアニメーション映像で届きます。

「無人島に何を持っていけばいい?」「愛とお金どっちが大切?」「宇宙人はいる? いない?」など、誰もが楽しく考えることができる質問とその回答に、「まじむらにゃんべえ」が独自の視点でコメントをしていきます。

オンラインプログラム会期中は、施設利用者に限らず、誰でも「まじむらにゃんべえ」へコメントを送って参加することができました(コメントの募集は締切済み)。コロナ禍での、映像を通した新しい交流の形を提案しています。

ぶしのようなかっこうをしたねこのキャラクターと、「まじむらにゃんべえのせかい」というもじがえがかれたがめん
かわいいキャラクターと独特のテンポ感がユニークな世界観を作り上げている「まじむらにゃんべえの世界」。アニメーション制作から「まじむらにゃんべえ」の声まで、飯塚さんが担当している

「吃音 the mic プロジェクト」 マチーデフ

「TURN交流プログラム」に参加しているラッパーのマチーデフさんは、「吃音 the mic(キツオン ザ マイク)」というプロジェクトを、2021年夏に実施しました。吃音症(※)のある人々とラップの制作に挑戦するこのプロジェクトは、吃音症のある人が「リズムを取りながら話すと言葉が出てきやすい」と話していたことに端を発しています。

「吃音症の方が発話の際に行っている工夫とラップの歌唱法に親和性があるのではないか」。そう考えたマチーデフさんは、30代までの吃音当事者による自助グループ〈うぃーすた〉関東グループと協働してワークショップを重ね、リズムに合わせて声を出す練習や作詞のレクチャー、即興ラップなどにチャレンジしてきました。

オンラインプログラムでは、ワークショップの様子が順次テキストと写真で紹介されています。歌詞づくりの際にラッパーがしている「同じ意味の違う言い回しを考える」「語頭に音を足して韻を発想する」といった工夫を、吃音当事者も自分が苦手とする発音を避けるために似たような工夫をしていることなど、ワークショップや参加者の感想を通して得た、マチーデフさんの気付きもシェアされています。

ラップと吃音のどのような親和性が見えてくるのか、またどんなラップが生まれるのか、ぜひご覧ください。

※吃音症:話し言葉が円滑に出ない発話障害で、話し始めるときに最初の音が詰まったり、同じ音を繰り返したりする症状がある。 

きいろいがめんに、マイクのイラスト。マイクのもちてぶぶんには、「キツオンザマイク」のもじ
吃音症のある人とラップを制作する「吃音 the mic プロジェクト」

『TURNs 2016-2021』 田村大

最後にご紹介するのは、『TURNs 2016-2021』です。この作品は、2016年の「TURNフェス」初回から〈TURN〉の様子を記録してきた田村大さんが、6年に渡り蓄積した映像を編集し、制作されたドキュメンタリー映画です。今回オンラインでは、「日本語字幕バージョン」と「日本語字幕+音声ガイドバージョン」の2パターンが公開されています。

福祉施設での活動風景のほか、〈TURN〉のスタッフ、福祉施設の職員・利用者、アーティストへのインタビューを実施。本記事でご紹介してきた各作品にも通底する〈TURN〉の「交流」とはどのようなものだったのか。「福祉」と「アート」が出会うなかで、戸惑いやすれ違い、関わる過程で生まれた気付きなど、一人ひとりの言葉から率直に語られています。 

これまで〈TURN〉を知らなかった人も、〈TURN〉に親しんできた人も、多様な人々による表現や、違いを超えることによって生まれる可能性を感じることができるドキュメンタリーです。

しゃしんをならべたはいけいのうえに、うかびあがるTURNsのもじ
2016年からの活動の記録を編集し、制作されたドキュメンタリー映画「TURNs」

人と人が出会うことで生まれる表現の可能性やクリエイティビティを感じることができる 「TURNフェス」オンラインプログラム。コンテンツが更新されるのは9月5日までですが、視聴は9月末日まで可能です。ぜひオンラインでお楽しみください。