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機能的で美しい「ケアの日用品」のオンラインショップ〈ねんりん〉
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使いやすさ、美しさを大切にした、ケア用品のセレクトショップ

高齢者や障害のある人の暮らしを、安全で便利にサポートする介護・福祉の「ケア用品」。機能的に設計されたそれらのアイテムに、日々助けられている人も少なくないでしょう。一方で、もっと普段の生活に馴染むようなデザインだったり、おしゃれを楽しめたりする商品があれば……と思う人もいるのでは?

2021年にオープンしたケアのデザインストア〈ねんりん〉は、「ハレの日にも使える、ケアの日用品」をコンセプトに、良質な商品をセレクトしたオンラインショップです。機能面の使いやすさだけでなく、美しさも備えた商品を日本各地から独自に集めています。

従来の介護・福祉用品カタログではあまり取り扱われていない、ギフトにも使えるようなアイテムを掲載。快適で使いやすく、“用の美”を体現した商品を一か所で探せる「インクルーシブな暮らしのプラットフォーム」を目指しています。

〈ねんりん〉の取扱商品をご紹介!

現在〈ねんりん〉で扱っているのは、テーブルウェア、カトラリー、衣料品、車椅子、調理家電など。いくつか商品をご紹介します。

まずは、ユニバーサルデザイン食器ブランド〈てまる〉の「てまる椀」。この磁器を見て、高齢者や障害のある人にも配慮された器だと思う人は少ないかもしれません。じつは縁に“返し”が設けられており、手の筋力が弱くなった人、手に震えのある人でも、食べ物がすくいやすい形状になっています。

岩手県の磁器、漆、漆器、木工の4人の職人によるブランド〈てまる〉の器。ほかにも、高台部分に設けたくぼみに指が引っかかることで持ち手が安定し、そのしぐさも美しく見える「汁椀」、岩手産の漆を使用した、縁の返しつきの「漆椀」、すくいやすい形状と軽量さを併せ持つ木製の「スプーン」など、同ブランドのさまざまな商品を取り扱い中

「てまる椀」には、焼成時間を長くすることによって強度が高まり、割れにくいという特徴もあります。また、釉薬(表面のガラス層)はよそう食材の色が引き立つ青磁と濃紺の2色展開で、視認性にも配慮した色柄展開に。電子レンジや食洗器の使用も可能です。

ケアの必要性の有無は関係なく、誰もが日々の食卓に取り入れやすいデザインであることも大きな魅力。皆と同じ器を使って食事ができると、多くの当事者に喜ばれているといいます。

落ち着いた6つのカラーで展開する「食事用スカーフ Table with プリーツ」。水着&介護用品メーカーの新規事業として、外部のデザイナーとのコラボレーションから誕生した商品。コロナ禍以前は東京の歌舞伎座でも販売されていたそう

そして、一見ストールのような上の商品、じつは食事用エプロンなんです。薄くて上品な生地に細かいプリーツをあしらい、日常のファッションアイテムとしても違和感のないデザイン。撥水加工がほどこされ、食べ物・飲み物がこぼれても服に滲みにくい仕様になっています。

洋装・和装どちらにもマッチすると、幅広い年代から人気だとか。

汚れが染み込みにくい特殊加工を施した播州織の「食事用ベスト Table with ベスト」。こちらは特に男性の愛用者が多い

また、スーツのベストのようなエプロンも展開。スカーフタイプとともに、胸元の留め具には、広範囲で合わさる特殊なブロック式が採用されています。

これらの商品を贈り物にしたいという人も多く、ラッピング専門店と共同で、片手でも開けやすい包装を開発。のしつき、ブーケつきなどの包装にも対応しています。

自身の介護体験が活動の原点に。〈ねんりん〉代表の簾藤麻木さん

オンラインストア〈ねんりん〉の代表を務めるのは、簾藤麻木(すとう・まき)さん。一級建築士の資格所持者であり、建築設計から製品企画のコンサルティング事業を行う〈nenlin〉の代表でもあります。

診療所や公共施設などの設計のほか、行動リサーチに基づいたより使いやすく快適な空間づくりの提案、施設備品のコーディネートなど、ケアの視点を軸にしたものづくりのサポートを行っています。

これまでに、〈聖マリアンナ医科大学病院〉の外来休憩スペースの快適性を向上させるプロジェクトや、広島県尾道にある宿泊施設〈​尾道のおばあちゃんとわたくしホテル〉の備品選びなど、さまざまなケアの現場に関わってきました。

高齢者、障害のある人に限らず、誰でも宿泊できる、全国でも珍しい介護施設併設の〈尾道のおばあちゃんとわたくしホテル〉。〈nenlin〉は食器からハンドソープに至るまでの備品選び、内覧会にあわせた嚥下食試食会の企画を担当(写真:〈リハノワ〉ひろし)

そんな簾藤さんの活動の原点は、パーキンソン病だった祖母の介護体験にあるといいます。

自宅を介護仕様にするなかで感じた「安全で便利になったはずなのに、快適じゃない」という違和感。おしゃれ好きな祖母が、傍目にも要介護とわかるケア用品に抵抗感を持っていたこと。外出が大好きにもかかわらず、いつしか家に閉じこもるようになったこと——。そんな様を当時小学生だった簾藤さんは目の当たりにしてきました。

あるとき、簾藤さんが手づくりした食事用エプロンをプレゼントすると、祖母は大いに喜び、不思議と食事量も増加。ものの機能は介護用品と変わらないのに、“デザイン”や“ストーリー”が加わるだけで生きる力に影響するのだ、と痛感したといいます。

「環境とデザインで介護は変えられる」そんな確信を胸に、まずは建築を学び、設計事務所で高齢者施設・保育園・学校・庁舎などの設計を担当。2018年に独立して〈nenlin〉を設立し、ケアの視点を軸にした事業を行うなかで、2021年にオンラインショップ〈ねんりん〉を立ち上げました。

つくり手と使い手をつなぎ、ケア用品の選択肢を広げる〈ねんりん〉のこだわり

〈ねんりん〉を通じて、「誰にとっても使いやすい日用品を、ワクワクしながら選べる体験を提供したい」と活動を始めた簾藤さん。

取り扱う商品は、機能的で美しい、という視点だけではなく、以下のポイントをクリアしたものであることを、採用基準に定めています。

  • 普段の生活に馴染むデザインであること
  • さまざまな当事者に使用感を試してもらい、「使いたい」という声が多くあがったもの
  • 医師、作業療法士、人間工学などの専門家が、ものづくりに関わっているもの
(写真:〈リハノワ〉ひろし)

また、各社のケア用品は「人の暮らしを豊かで快適なものにしたい」という強い思いで製作されているものの、現段階で満足のいくアイテムになっているとは限りません。ちょっとした使いづらさを理由に離れてしまうユーザーもいます。

そこで、つくり手には届きにくい利用者の声を〈ねんりん〉がフィードバックし、各社が商品の改善事項を認識できるようにしているのだとか。

実際に、補助箸の先端の細さ、器の釉薬の色など、利用者の声をもとにした商品のアップデートが行われてきました。そうしてより多くの人の使いやすさにつなげ、愛用者や新たなケア用品のつくり手を増やすことも、〈ねんりん〉が大切にしている活動です。

使いやすさを主張せず、そっと寄りそうような使用感に、ケアを要しない人であっても従来の商品には戻れなくなるケースもあるという(写真:〈リハノワ〉ひろし)

ケアが必要な人が自信をもって外出を楽しんだり、晩年を迎えた人も豊かな気持ちで過ごしたりするには、なにが必要か。自身の祖母の記憶を重ね、簾藤さんは「使いやすい機能性と、使う方が主人公であること」を強い思いとして掲げています。

今後も取り扱い商品を少しずつ追加していく予定の〈ねんりん〉。ケアの必要性の有無を超えて、さまざまな人の暮らしにそっと寄りそってくれる品々です。ご家族や友人へのプレゼントを探している方、はたまた自分自身の食器を一新したいと考えている方など、ぜひ一度サイトを訪れてみてはいかがでしょうか。