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福祉とアートの現場を巡るフィールドワーク in 関東、「PARC自由学校2026」で開催(5月14〜15日)
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工房集の敷地内。自由さが象徴されるペインティング

社会や世界を捉え直す学びの場「PARC自由学校」が受講生を募集中

アジア太平洋資料センター(PARC)は1973年に設立されたNGOで、世界の人びとが対等・平等に生きていける関係づくりをめざし調査研究や政策提言に取り組んできた団体です。1982年、その活動の一環として、社会や世界を多角的に捉え直すためのオルタナティブな学びの場「PARC自由学校」がスタートしました。アジア、アフリカ、中南米など世界の人びとの暮らしや社会運動を知るクラス、世界経済の実態や開発を考えるクラス、環境や暮らしのあり方を考えるクラスなど、毎年約15講座を開講し、社会人を中心にのべ300人以上が参加しています。平日夜に開催される講座では、専門家の講義だけでなく、参加者同士で意見交換する時間をとるなど、能動的な学びが大切にされている点も特長です。

そんな「自由学校2026」の受講生募集がスタートしています。なかでも福祉とアートに関心のある人におすすめなのが、5月14日(木)〜15日(金)の2日間にわたって開催される「アートをめぐるフィールドワーク in 関東」です。

このフィールドワークでは、神奈川県小田原市の〈アール・ド・ヴィーヴル〉、神奈川県平塚市の〈嬉々!!CREATIVE〉、埼玉県川口市の〈工房集〉という、福祉の現場で創作活動を行う3つの拠点を訪ねます。それぞれの場所で生まれる表現や、それを支える環境に触れながら、「表現すること」と「生きること」の関係を見つめ直していきます。

「アートをめぐるフィールドワーク in 関東」案内人・講師をつとめる中津川浩章さん

フィールドワークを案内するのは、アーティストの中津川浩章さんです。中津川さんは、自身の制作活動にとどまらず、今回訪問する〈アール・ド・ヴィーヴル〉や〈工房集〉の立ち上げに初期から関わったのをはじめ、これまでにも多くの福祉施設でワークショップやキュレーションなどに取り組みながら、創作の現場を内側から見つめ続けてきました。

場の空気や人との関係性に触れるフィールドワーク

中津川浩章さん(左)とやまなみ工房施設長の山下完和さん(右)のクロストーク( 2023.10.29 )

このフィールドワークは、2017年に滋賀県甲賀市にあるアートセンター&福祉施設〈やまなみ工房〉を訪れたことから始まりました。その後、「PARC自由学校」では毎年のように1泊2日で福祉施設を訪問するツアーが開催され、関西を中心に継続的に行われてきました。

参加者からは、作品の魅力だけでなく、場の空気や人や地域との関係性に触れられる体験が印象に残ったという声が多く寄せられています。

「それぞれの方々が尊重され、ありのままでよい、結果を強制されない場所。そこで生み出される濃度の濃いエネルギーに満ちた作品の数々。人間らしさとは?幸せとは? 今まで自分が持っていた、価値観を揺るがされる気持ちがしました。」

「まず「安心感」が前提としてあって、そのうえで自分のやってみたいことをさぐっていくというプロセスがある、これは重要だと思いました。」

そうした声を受け、「関東にも同様の場があるなら訪ねてみたい」という要望が寄せられ、今回初めて関東版が企画されました。

3つの拠点、それぞれの表現のかたち

今回訪れる3つの施設は、いずれも福祉の現場でありながら、独自の方法で創作活動を展開しています。

アール・ド・ヴィーヴル
企業との連携や作品リースなどを通じて社会とつながる仕組みを持つ、就労継続支援B型と生活介護の多機能型の福祉施設です。知的障害のある人と精神障害のある人が同じ空間で表現活動を行う点も特徴的で、多様な関係性のなかから表現が立ち上がっています。

嬉々!!CREATIVE
デザインやイラストレーションに特化した活動をしている福祉施設でポップで明るい作品が印象的です。重度の障害のある人も多く関わるなかで、エネルギーのある空気を生み出しています。

工房集建築の時に中津川さんがファシリテーションした内装ワークショップの様子

工房集
母体である〈みぬま福祉会〉は、埼玉県でも最重度の障害のある人たちが集まる福祉施設です。「働くことは権利である」という考えのもと、表現活動を仕事として位置づけてきました。絵画や立体など多様な表現が共存し、日本の障害のある人のアート活動を長く牽引してきた拠点です。

これらの施設のキュレーションなどに関わり続けてきた中津川さんは、「支援のあり方は三者三様ですが、共通点も浮かび上がってきます。アートを通じて社会課題に向き合う活動を感じてほしい」と語ります。

「作品を鑑賞する」にとどまらない旅

アール・ド・ヴィーヴルでの見学の様子

このフィールドワークの特徴は、施設を訪れて作品を鑑賞するだけにとどまらない点にあります。現場で人と出会い、空気に触れることで、作品が生まれるまでの時間や環境、そして関係性そのものに出会います。

過去の参加者からも、「安心感があるからこそ、その人のやりたいことが立ち上がってくるプロセスが見えた」という声が寄せられています。それぞれの施設では「何かをしてもらう」ことよりも「その人がどう在るか」が尊重されています。その余白が、独自の表現を生み出しています。

また、「見学しているつもりが、自分のほうが問い直されていた」という声もあります。福祉現場に身を置くことで、あらたな発見や気付きがあるかもしれません。

連続講座と、広がる学びの選択肢

2025年に開催された「PARC自由学校」アートクラスの様子

「PARC自由学校2026」では、フィールドワークとあわせて、7月から中津川さんによる連続講座「表現することは生きること」も開講されます。平日夜に開催される社会人を主な対象とした全12回の講座では、アートの背景を学びながら実際に作品制作を行います。

約2時間の講座の中で1時間ほど解説が行われ、その後、受講生自身が創作活動に取り組みます。画材などは用意されているため、仕事帰りにも気軽に参加できます。

さらに9月 3日(木)~4日(金)  には「中津川浩章さんといくアートをめぐるフィールドワーク in 関西」も予定されており、〈やまなみ工房〉と大阪市阿倍野区の〈アトリエコーナス〉を訪問します。地域ごとの違いを体感することで、理解はより立体的なものになっていくはず。

福祉施設で生まれるアートは、しばしば「特別なもの」として語られがちです。しかし実際に足を運ぶと、それはむしろ日常の延長にある行為だと気づきます。「表現することは生きること」。その言葉を、理念ではなく実感として受け取ることのできる時間になりそうです。