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10の“トライ”で見方を広げよう! 子どもも大人も来たくなる体験型展示「ためして、みる展」——滋賀県立美術館
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【写真】
会期:2026年4月17日(金)〜6月21日(日)

リニューアルに向け、美術館の可能性をさぐる新展示

「寝そべる」「はいりこむ」「さわって見る」「なかまになる」——。およそ美術鑑賞らしくない動詞が並ぶ、〈滋賀県立美術館〉の新たな体験型展示「ためして、みる展」(Special Exhibition “Try and See”)が、2026年4月17日(金)にスタートしました。

今回の展覧会は、これまで館が所蔵し展示してきたアート作品に対し、“身体”や“道具”を用いて、今までと異なる楽しみ方を提案しようと企画されたもの。会期中は、対話型のギャラリートーク(一般向け/子ども向け)やワークショップ(子ども向け)も予定されています。

先日、キッズアートセンターの設立をはじめ、隣接する公園の整備を含む改修・増築計画も発表した〈滋賀県立美術館〉。2032年度のリニューアルオープンを見据え、まちに開かれた「多様な人が楽しめる」美術館になっていく姿勢を、企画展の内容としても伝える試みといえます。

【画像】10のトライで見方が広がる、楽しくなる、のコピー
展覧会のチラシ(オモテ/ウラ)

「ためして、みる展」10のトライ

本展では、美術館が所蔵する絵画や造形、屏風など53点の作品に対し、ただ眺めるだけではない、身体や道具を使った鑑賞体験を味わうことができます。

案内役のキャラクター「とらいさん」によって提案される、ユニークな作品の楽しみ方は全部で10。例えば「トライ2:寝そべって見る」では、畳の上に座ったり寝そべったりと、普段とは異なる視点や姿勢で、大きな屏風や立体彫刻をじっくり鑑賞できます。

【写真】大きな屏風の手前にある畳のそばに、脱ぎ捨てられた履き物
展示室の中に、突然畳が現れる「寝そべって見る」コーナー(左:川村悦子『凱風—しろ』、右:庄田鶴友『邪馬渓之朝』)

また「トライ3:双眼鏡で見る」では絵画をあえて離れた場所から双眼鏡で眺めたり、懐中電灯を手に部屋に入る「トライ8:まっくらな中で見る」では、光に浮き上がる作品や背後の影を楽しんだりと、道具を使った今回だけの鑑賞体験も提供されます。

【写真】天井まで届きそうな大きな作品の前、少し離れて台がある
複数の作品前に双眼鏡が据えてある「双眼鏡で見る」(左:クリフォード・スティル『PH—386』)

「トライ5:中身を全部バラして見る」など、普段は眺めることしかできないマルセル・デュシャンのような作品でも、レプリカを用意することで、作品の構造を感覚的に理解できるようになっている本展。

触図や陶器、巻物など、鑑賞者が直接作品に触れられるものもあり、自分の興味や身体の特性に応じて、多様な楽しみ方ができるようになっています。

【写真】いろんなオブジェやイラストが詰まったトランク
「中身を全部バラして見る」では、箱の中身を実際に広げて楽しめる(マルセル・デュシャン『トランクの中の箱』)
【写真】黄色い人物がたくさんいる造形の中央に、人が座っている
参加者が作品の一部となる「作品の仲間になる」には自撮り棒も用意され、自分で撮影ができるようになっている(今井祝雄『ヴォワイアン』)

対話を促すギャラリートーク&ワークショップ

今回の展覧会は、「対話」が一つのテーマになっています。訪れた一人ひとりが展示に対して能動的な関わりをしていくことは、作品や作者との対話のきっかけになりますし、得た感情を「誰かと共有したい」と思うことは他者との対話につながっていくでしょう。

対話を広げていくきっかけとして、美術館では企画展と連動し、複数の参加型企画も予定しています。

まずは、2種類のギャラリートーク。誰でも参加できる「聞く+ためす ギャラリートーク」が4月29日(水・祝)、5月24日(日)、6月14日(日)の各14:00~15:00に、また子ども向け「からだでためすギャラリートーク」が4月19日(日)、5月6日(水・振休)、6月7日(日)の各10:30~11:30に開催されます。

どちらも予約は不要(当日の先着順)。一方的な作品解説ではなく、感じたことを参加者同士で言葉にしあう時間が持たれる予定です。

【写真】本やパネルが並んだコーナー
最初のトライ「色を見つける」に置かれた、印刷用のカラー見本や色名辞典たち。これらを参照しながら作品内の「色」を探すことも、対話のきっかけになる

さらに5月10日(日)の10:00~12:00と13:30~15:30には、「ためして、みるワークショップ」も開催予定。大きな透明シートを使い、「空飛ぶ自分」をテーマに創作を行います。対象は小学生、幼児(保護者同伴)で、こちらは事前申し込みが必要です。

美術館から広がる「社会的処方」

近年、美術館は単にアート作品を収集する、保存し研究する、展示するなどの機能にとどまらない、新しい役割が期待されるようになりました。例えば東京の〈とびらプロジェクト〉のように、美術館が対話の場を生み出す拠点となって、市民の「社会参加」のきっかけを提供していく事例も少しずつ増えています。

〈滋賀県立美術館〉ではこの数年、人が抱えるさまざまな課題に対して「地域とのつながり」から解決を試みる、「社会的処方」の選択肢になることも意識した活動を行ってきました。鑑賞アクセシビリティの向上や、福祉施設・フリースクールなど連携した取り組みも増えています。

今回のような、アートに対し多様な入り口を促す展示は、年齢や障害の有無を超え「誰もが楽しめる」美術館になっていくための、新たな挑戦の形ともいえるでしょう。

【写真】時系列で横向きにさまざまな取り組みが記されたパネル
館内には、美術館が誰にとっても“居心地の良い存在”になることを目指す「SMoAやわらか大計画」のプロセスを示すコーナーもある

こうした動きの先に、美術館のディレクター(館長)の保坂健二朗さんは、新たな未来も見据えています。

3月末に発表した今後の整備計画では、2029年度から32年度にかけて行われる改修・増築を経て、「キッズアートセンターを美術館活動の中心に据える」と発表。フランスの〈ポンピドゥーセンター〉など先進的な事例も参照しながら、キッズインスタレーションスペースを新設したり、ドイツの〈マンハイム美術館〉などの事例も踏まえて「オープン・ストレージ(開かれた収蔵庫)」をつくり、コレクションの閲覧機会を増やしたりと、美術館という場を通じて対話が増えていくような仕掛けをいくつも計画しているといいます。

「美術館のある〈びわこ文化公園〉全体を楽しみながら巡るような仕掛けも、もっと増やす必要がありますし、駐車場を含めたアクセシビリティ改善も重要です。公園と一体となって整備を進めて、さまざまな人にとっての“居場所”になるような空間をつくりたいと考えています」(保坂さん)

【イラスト画像】緑の丘のなかに、いろんな建物や作品が立ち並ぶ。間にたくさんの人がいる
美術館、図書館、埋蔵文化財センター、広場が一体となる、未来の公園イメージ図(滋賀県立美術館整備基本計画より)

目指すのは「子どもも大人も来たくなる、未来をひらく美術館」。そんなリニューアル計画から改めて「ためして、みる展」を眺めると、“居場所”としてのあり方に対しても、アートの楽しみ方に対しても、多様な選択肢を提示していく姿勢が感じられます。ぜひ会場に足を踏み入れて、作品や場を楽しむときの、自分なりの関わり方を見つけてみてください。