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とびらプロジェクト「オープン・レクチャー」11月17日(日)開催。聴者・ろう者・難聴者が共に鑑賞し思考する「みるラボ」の取り組みを紹介
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とびらプロジェクト画像
グラフィックデザインを手がけたのは、ろう者のデザイナーの岩田直樹さん(ダイナモデザイン)です

美術館を拠点にしたコミュニティを作る〈とびらプロジェクト〉が、オープン・レクチャーを開催

美術作品を体験するとき、あなたは何を感じるでしょうか。鑑賞者の年齢、属性、状況、知識、価値観、考え方、歩んできた人生によって、同じ作品でも見え方や感じ方は異なります。それを伝え合う時、お互いの聴覚、「きこえ」に違いがある場合は、どのような場をつくっていくのがよいでしょうか。

鑑賞者一人ひとりの違いを“対話”を通して分かち合い、「人と美術館」「人と作品」「人と人」をつなぐ活動を行っている〈とびらプロジェクト〉が、11月17日(日)に東京都美術館の講堂にて、「とびらプロジェクト オープン・レクチャー」の15回目を開催します。

今回のオープン・レクチャーは「Museum Start あいうえの」で取り組んできた、さまざまな「きこえ」の状況にあるティーン世代の人を対象にしたプログラム「みるラボ」を取り上げます。3名の登壇者とともに、聴覚に違いがある場合のコミュニケーションの工夫や可能性をテーマとしています。

実践を通して見えてきた気づきや可能性を、扉を広げて多くの人へ伝える

オープン・レクチャーを開催する〈とびらプロジェクト〉とは、美術館を拠点にアートを介しコミュニティを育むソーシャルデザインプロジェクトです。2012年、東京都美術館と東京藝術大学が連携して活動をスタートしました。東京都美術館はさまざまな人へ「アートへの入口」を作ること、東京藝術大学は市民が芸術に親しむ機会の創出というミッションを掲げ、活動を展開しています。

とびらプロジェクトは、広く一般の方々から募集した「とびラー」と呼ばれるアート・コミュニケータがいることが特徴です。会社員や教員、学生、フリーランサー、専業主婦や退職後の方など18歳以上の多様な人たちがアートを介したコミュニティづくりを基礎講座と実践講座で学びながら、鑑賞プログラムやワークショップの企画、こどもたちの鑑賞活動の伴走といった実践を行います。とびラーが架け橋となり、“対話”を通して自分と他者の感じ方の違い、作品の捉え方の違いを知ることができます。

オープン・レクチャーは、とびラーの活動やプロジェクトを通して見えた新たな可能性を広く共有する場として、年1回ほど開催。昨年のオープン・レクチャー「認知症世界とアートの出会い」は、〈こここ〉でも取り上げました。認知症のある人々やその家族のサポートをしている専門家を招き、とびラーが作る場の重要性やアート・コミュニケーションによって起こる化学反応を掘り下げました。

「人と作品」「人と場所」そして「人と人」をつなぐ、プロジェクトやとびラーの存在。実践の中でどのようなことが見えたのか、多くの人に門扉を広げ学び合うオープン・レクチャーが今年も開催されます。

さまざまな「きこえ」が交わるとき、そこに何が生まれるのか?

15回目となる今回のオープン・レクチャーは、とびらプロジェクトと連動する「Museum Start あいうえの」で2年間にわたり取り組んできたプログラム「みるラボ」がテーマです。

「Museum Start あいうえの」は、上野公園にある9つのミュージアムが連携して取り組んでいるプロジェクトです。6~18歳を対象に、子どもたちが主体的にミュージアムを楽しみ、学んでいくことを応援しています。

2023年から実施している「みるラボ」は、ティーン世代の聴者(聞こえる人)、ろう者、難聴者が一緒になって作品を鑑賞し、思考するプログラム。さまざまな「きこえ」の状況にある参加者が、とびラーとともに手話、口話、筆談、通訳、身体表現などの手段を使い、コミュニケーションや対話の場としての在り方を試行錯誤してきました。

ろう者、難聴者の生活から生まれた「ろう文化」と聴者の文化が交わるとき、そこにどのような化学変化が生まれたのか。「きこえ」の状況が異なる中で、どのようなかたちの対話が生まれたのか。3名の登壇者とともに、取り組みの中で見えてきた可能性を語ります。

とびらプロジェクトバナー画像

登壇者1人目は、手話表現の芸術性に注目してきた森田明さん(学校法人 明晴学園 教頭 / NHK Eテレ「みんなの手話」講師 / NHK Eテレ「手話で楽しむみんなのテレビ」手話演者)です。日本唯一のバイリンガルろう教育を行う、〈私立ろう学校 明晴学園〉にて学園独自の教科「手話科」でポエム、手話演劇、手話言語の仕組み、プレゼンなどの表現の指導を担当しています。手話ポエム、手話語り話者として数々のろう文学作品を発信しています。

森田明さん画像

2人目は、2年目の「みるラボ」のプログラムパートナーであり、ダンサー、俳優、アーティストとしても活動する南雲麻衣さんです。幼少時からモダンダンスを学び、現在は手話を活かしたパフォーマンスや演劇などの表現活動で活躍しています。2024年には、音声言語と視覚言語を用いた複数言語の「ゆらぎ」をテーマにした『母語の外で旅をする』を東京都現代美術館で展示しました。

南雲麻衣さん画像

3人目は、石丸郁乃さんです。東京藝術大学 芸術未来研究場 ケア&コミュニケーション領域 特任助手であり、「Museum Start あいうえの」のプログラムオフィサーを務めています。東京都美術館アート・コミュニケーション係や平塚市美術館での勤務などを経て、2021年から「Museum Start あいうえの」のプログラムオフィサーに着任しました。

石丸郁乃さん画像

以上3名の登壇者に加えて、とびらプロジェクトのマネージャーである東京都美術館 学芸員 アート・コミュニケーション係長の熊谷香寿美さんと、東京藝術大学 芸術未来研究場 ケア&コミュニケーション領域 特任助教の小牟田悠介さんが進行役を務めます。

森田さん、南雲さん、2人のろう者のお話も伺いながら、「きこえ」の状況が異なる中での協働のあり方を多角的に掘り下げていきます。

「わからない」からこそ、分かり合うための2年間の取り組みを掘り下げる

聴者、難聴者・ろう者、異なる「きこえ」が集ったとき、作品や他者の表現を受け取るためにはどうしたら良いのか。恐らくそれは、美術館でのコミュニケーションに留まらず、社会の中での協働においても大切になるはずです。

1年目の「みるラボ」は、「わからないのはじまり」が副題としてついています。11月17日(日)は東京都美術館の講堂にて、「わからない」をスタート地点にした分かり合いの2年間の取り組みに、興味のある方はぜひ足を運んでみてください。

とびらプロジェクトチラシ画像