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子どもを支える“まほう使い”、地域にどう増やす? 駄菓子屋〈チロル堂〉の思想・モデルをひらくキックオフ会議
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2024年9月23日(月・祝)に奈良県生駒市で開催される『チロル堂から会議 vol.1 〜チロル堂は「社会に開くフェーズ」へ。地域の居場所のあり方を共に考える〜』

「チロル堂的」な場が広がることを願う、4年目の挑戦

2021年8月。生駒駅(奈良県)にほど近いビルの1階に、かつてない形の子どもの居場所、〈まほうのだがしや チロル堂〉が誕生しました。

その名の通り「駄菓子屋」でありながら、子どもたちが放課後に訪れる「遊び場」であり、誰でもごはんを食べられる「食堂」でもある。夜は大人の「酒場」にもなるこの不思議な空間では、独自の店内通貨(チロル)を介して、地域の大人が子どもたちを自然と支えていく循環が生まれています。

2022年度グッドデザイン賞で大賞に輝いたことを機に注目が高まり、〈チロル堂〉には利用する地域住民のみならず、全国から多くの視察者も訪れるようになりました。オープン3周年を経て、これまでの知見を「チロル堂のまほう」として本にまとめ公開していくべく、2024年9月23日にトークイベントが開催されます。

〈チロル堂〉のコンセプトムービー

「まほうのだがしや チロル堂」の“まほう”とは?

〈チロル堂〉の一番の特徴は、18歳以下限定で利用できる、店内のガチャガチャです。1回100円で回すとカプセルが手に入り、中には竹製の「チロル札」が少なくとも1枚、多ければ3枚。

この札1枚(1チロル)で、100円分の駄菓子はもちろん、300円のジュース、500円のカレーなどが買えるようになっています。〈チロル堂〉では“まほう”と呼ばれています。

子ども向け飲食メニュー(公式サイトより)

〈チロル堂〉でコーヒーを飲んだり、カレーを食べたり、夜の酒場でビールやおつまみを注文したりすると、代金のうち数百円(数チロル)が寄付となります。また、月5チロル(500円)からオンラインで寄付できる「サブスクチロ」の会員となったり、お菓子やお米、備品、現金などを直接寄付したりする人も。子どもたちの目には直接見えない、もしかしたらその存在すら気づかれていないかもしれない、“まほう使い”と言えるでしょう。

大人と子どもがわかりやすく「支援する/支援される」という関係にならないこの仕組みは、やはり単純な「支援者/被支援者」の関係にならないようフラットな関わりで安心感を与える、〈チロル堂〉スタッフの見守りによって日々支えられています。

緩やかな寄付循環の仕組みをベースに、3年かけ地道な取り組みを進めるなかで、地域の駄菓子屋は、さまざまな人が混ざり合う場となってきました。

 

 
 
 
 
 
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社会にひらくキックオフイベント『チロル堂から会議 vol.1』

そんな〈チロル堂〉には、以前から「地元でこんな場所をつくりたい!」という声が多数寄せられてきました。ですが、地域が抱える課題はそれぞれ異なり、一様に同じことをやってもうまくいくわけではありません。

そもそも〈チロル堂〉自体の経営もまだ安定せず、伴走しきれないことも悩みでした。外から見えない苦労もたくさんある状況などを踏まえ、どう対応するのがいいのか、戸惑う時期が続いたといいます。

しかし、チロル札を通した“まほう”の価値や、その“まほう”をかける大人が増えていく意義を、時を追うごとに強く感じるようになっていたのも事実。そこで4年目に入ったこのタイミングで、改めて「チロル堂的」な場所を社会に増やすことを目指し、自らの思想とモデルを「チロル堂のまほう」として書籍にまとめるプロジェクトが始まりました。

【画像】イベントのキービジュアル。チロル堂から会議、というタイトルの下に6名の顔写真が並ぶ

『チロル堂から会議 vol.1』と題された今回のイベントは、そのキックオフミーティングとなります。

会場は、生駒駅から徒歩10分ほどの場所にある「アトリエe.f.t.森の家MITERI」の野外スペース(※注)。〈チロル堂〉共同代表の1人であり、「トーキョーコーヒー」なども仕掛ける吉田田タカシさんが運営する、アートスクールの拠点です。イベントは3部構成で行われます。

(※注:当日雨天が予想されるため、会場を「生駒セイセイビル」に変更:2024年9月19日)

オープニングトークとなる13:00〜14:30は、吉田田さんと、同じく共同代表の石田慶子さん(一般社団法人無限代表理事)、坂本大祐さん(合同会社オフィスキャンプ代表社員)が3年間を振り返りながら、「チロル堂のまほう」をまとめる背景を話します。

続く14:30〜16:00に行われるのは、美学者であり、東京工業大学で「利他学」を立ち上げた伊藤亜紗さん(未来の人類研究センター長/リベラルアーツ研究教育院教授)を招いてのトーク。坂本さんと吉田田さんがホストを務め、『チロル堂の「思想」を考える』をテーマに語りあいます。以前〈こここ〉でも「誰かのために、と掲げれば掲げるほど利他から離れていってしまう」と話していた伊藤さんが、緩やかな寄付の循環が生まれている〈チロル堂〉の仕掛けをどう捉えていくか注目です。

そして最後、16:15〜17:45には、『チロル堂の「モデル」を考える』をテーマにしたクロストークが開催。全国で地域の関係づくりに取り組む青木純さん(株式会社まめくらし代表取締役)、神戸市長田区で多世代型介護付きシェアハウス「はっぴーの家」を運営する首藤義敬さん(株式会社Happy代表取締役)を、石田さんと坂本さんが迎えます。

イベントの定員は100名で、イベント前には〈チロル堂〉の見学会も予定されています。3年間子どもたちを支えてきた“まほう”が実際どのようなものか、ここから何が新たに生み出されていくのか、自らの目で見る貴重なチャンス。興味のある方はぜひ飛び込んでみてください。