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アンコンシャスバイアスとは? 思い込みの具体例&調査結果から見る実態
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こここトピックス、アンコンシャスバイアスとは

アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)が抱える問題

アンコンシャスバイアス(unconscious bias)は「無意識の偏見」「無意識の思い込み」とも言われる言葉です。文化、教育、経験などによって形成される、自分でも気づかないうちに潜在的に持っている先入観や、偏ったものの見方・考え方を意味します。英語では“implicit bias”(暗黙の偏見)と表されることもあります。

アンコンシャスバイアスは、持っていること自体が問題というわけではありません。人間の脳にある、できるだけエネルギーを使わずに物事を判断しようとする機能によって発生するものであり、むしろ誰でも持ちうるものです。

しかし、個人や組織がアンコンシャスバイアスに気づかないまま誰かのことを決めつけたり、何かを押しつけたりしてしまう「発言」や「行動」は、相手を傷つける危険性があります。その言動が、相手をコントロールしたり相手に窮屈な思いをさせたり、選択肢や可能性を狭めてしまうかもしれないからです。

職場に潜むアンコンシャスバイアス

(具体例)
・性別や年齢、家族構成で採用の合否を検討する
・男性と女性で任せる仕事や役職を変えてもいい、と考えている
・「男性は仕事をして家計を⽀えるべきだ」と思う
・子どもが病気になったとき、母親が休むことを前提にしている
・上司は部下よりも優秀でなければならないと考えている
・定時で帰る人を「やる気がない」とみなす
・上司より先に部下が帰るのは失礼だと思う
・外国人と一緒に働くのは大変だと思う
・障害のある人は、簡単な仕事しかできないと考えている
・挑戦する前から「自分には無理だろう」と思うことがある

職場での、個人や集団の意思決定にこうしたアンコンシャスバイアスが影響を与えると、組織内の多様性が奪われ、企業の効率性が低下したり創造性やイノベーションが制約されたりすることがあります。

特にジェンダー間の格差の大きい日本では、性的役割に関するアンコンシャスバイアスが職場にも多く潜んでいると言われています。『令和4年度 性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)に関する調査結果』(内閣府男女共同参画局)によると、「性別役割意識」の項目において、「男性は仕事をして家計を支えるべきだ」に対し、男女とも半数近くが「そう思う」または「どちらかといえばそう思う」と回答。「育児期間中の⼥性は重要な仕事を担当すべきでない」(男性33.8%、女性33.2%)、「組織のリーダーは男性の⽅が向いている」(男性26.1%、女性20.9%)など、具体的な職場のシーンでの偏見も両者ともに高いことがわかります。

性別役割について、「そう思う」 「どちらかといえばそう思う」「どちらかといえばそう思わない」「そう思わない」の4段階で聞いた。  男性⼥性ともに上位に⼊った8項⽬のうち7項⽬は、男性の⽅が⾼い割合となった。  男性⼥性ともに「男性は仕事をして家計を⽀えるべきだ」が⼀番⾼かった。その他男⼥差が⼤きく開いたのは、「男性は〜べきだ」という 次の3項⽬。 「デートや⾷事のお⾦は男性が負担すべきだ」 (男性34.0%、⼥性21.5%) 「男性は結婚して家庭をもって⼀⼈前だ」 (男性30.4%、⼥性17.9%) 「男性は⼈前で泣くべきではない」 (男性28.9%、⼥性17.6%)
令和4年度 性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)に関する調査研究 調査結果』より引用

家族や友人間にもあるアンコンシャスバイアス

職場以外の日常的な関係においても、アンコンシャスバイアスは発生します。

(具体例)
・血液型での性格診断を信じている
・相手の行動を「◯◯世代だから」と理由づけして考える
・出身地でお酒が強いかどうかを想像する
・どの家庭も母親が食事をつくっているはずと考える
・男性は人前で泣くべきではない、と思っている
LGBTQ+であると聞くと、戸惑いを感じてしまう
・人と違う振る舞いに「みんなこうしているのに」と思うことがある
・「若く見える」と言われたら誰でもうれしいだろうと思う
・「普通」を想像しようとする

こうした潜在意識は、何気ない会話や、生活における行動にふと表れた場合に、知らず識らず相手を苦しくさせてしまう可能性があります。自分では気づきづらいからこそ、近年は意識的にこれらの「苦しい言動」を可視化する動きも出てきました。

たとえば〈LIFULL〉が行った『新生活アンコン語実態調査2023』(監修:アンコンシャスバイアス研究所)。このレポートでは、アンコンシャスバイアスを感じる言葉(“アンコン語”)のランキングで、住まいにまつわるもの1位に「社会人になっても実家暮らしなんて甘やかされているよね」、介護にまつわるもの1位に「子どもがいないと、老後は面倒を見てくれる人がいなくて大変」が発表されています。

住まい1位「社会人になっても実家暮らしなんて甘やかされているよね」2位「家事がしやすい間取りは奥さんが喜ぶね」3位 (同率)「女性が家を買うなんてすごい!」「夫婦で新しい家を探すなら、子ども部屋も考えておかないと」、介護1位「子どもがいないと、老後は面倒を見てくれる人がいなくて大変」2位「長男・長女なんだから介護をしなきゃ」3位(同率) 「親の介護は、子どもがするものでしょ」「仕事と介護を両立するのは無理だ」
新生活アンコン語実態調査2023サマリーレポート』より引用

こうしたバイアスは、自らの経験だけでなく、受けた教育やメディアからの情報などによって、私たちの社会に根深く存在し続けています。それぞれ生活シーンにおいて、「これもそうかも」と一つひとつ地道に言語化していくことが、今後も求められるはずです。

誰もが持っているアンコンシャスバイアスに意識的になることが大切

上記のようなアンコンシャスバイアスには、「ステレオタイプ」(ある属性に対する先入観や固定観念)や「確証性バイアス」(自分の考えを支持する情報や、自分が期待する情報だけを集める傾向)、「正常性バイアス」(異常なことを、正常の範囲内だと捉える傾向)、「集団同調性バイアス」(周囲と同じことをすれば間違いないと思い込む傾向)など、いくつかのパターンがあり、誰でも持ちうるものです。過去の経験や見聞きしてきたことは、未来への貴重な財産でもあり、否定されるものではありません。

ただし、十把一絡げな考え方や物の見方は人の可能性を制限してしまい、悪影響をもたらすこともある、と意識し続けることは大切です。もともと無意識なものだからこそ、相手にアンコンシャスバイアスを気づかせるのは難しいことですが、自らのアンコンシャスバイアスを積極的に開示したり、自分の気づきを開示したりしていくことはやがて周りを巻き込み、よりよい社会へつながっていくのではないでしょうか。

アンコンシャスバイアスに気づき、考え、行動を変えていくために出来ることはさまざまあります。

組織としては、アンコンシャスバイアスに対処するためにトレーニングプログラムを導入することが考えられます。採用や昇進プロセスの透明性を高めたり、組織全体で多様性と包括性を奨励する文化を築いたりすることも重要です。

個人であれば、自己認識が大切です。内閣府男女共同参画局が、2021年12月にアンコンシャスバイアスの「チェックシート」や「事例集」を配布しているので、それらで自身の持つアンコンシャスバイアスを自覚してみるのもいいかもしれません。自分のバイアスに気づくたびに対処すること、フィードバックを受け入れ、改善を心がけることも必要です。

無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)チェックシート』(制作:内閣府男女共同参画局総務課、監修:株式会社クオリア)より。チェック数に応じて、対応する事例を確認できるようになっている

アンコンシャスバイアスへの理解と対処は、個人や組織、社会にとって重要なテーマです。無意識のバイアスを意識し、疑い、挑戦し、多様性と平等を促進することが、〈こここ〉のテーマである「個と個で一緒にできること」を実行する礎になるのではないでしょうか。