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学校や社会の“ふつう”ってなんだろう? 学校向けの社会モデル学習授業ツール「ふつうのじかん」キット無料配布中
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ふつうのじかんのサムネイル画像
​​“ふつうのじかん” by UNIVA is licensed under CC BY-NC 4.0

“ふつう”を問い直すことで、見えない障壁を見つける授業

授業中は静かにするのが“ふつう”だけれど、自分はどうしてもしゃべったり歩いたりしてしまう。みんなは給食を時間内に食べ終えるのが“ふつう”だけれど、自分はなかなか食べ終わらない——。

学校生活では、こうした場面で無意識のうちに「できない理由」を本人に求めてしまうことがあります。しかし、みんなと同じようにできないのは、本当にその人だけのせいなのでしょうか。

もしかすると、「これがふつうだ」とされている社会や環境のあり方こそが、困難や障壁を生み出しているのかもしれません。〈一般社団法人UNIVA〉は2026年6月、「社会モデル」と呼ばれるこの考え方を学び、実際に学校生活をアップデートしていく小学生向け授業「ふつうのじかん」の無料キットの提供を始めました。

本キットは全4コマで構成された授業パッケージで、全国の学校で教員が自由に活用できるよう、オープンソースとして公開されています。

【画像】上段に「今のふつうをどうアップデートすれば困りごとは解決する?」の枠。下段左に「何に困ってる?」の枠、下段右に「困りごとを産んでいる今のふつうは?」の枠
「ふつうのじかん」授業スライドより

人と環境のあいだに困難の要因を見い出す「障害の社会モデル」

人の「障害」に対する考え方には、障害や困難の原因を個人の心身機能にあると捉える「医療モデル」と、社会や環境に存在する障壁が生きづらさを生み出していると捉える「社会モデル」があります。

例えば、車いす利用者が階段のため建物に入れない場合、「本人が歩けないこと」に原因を求めるのが医療モデルです。一方、「スロープやエレベーターがない環境」に原因を求め、施設側が設備を整えることを重視するのが社会モデルです。

以前〈こここ〉でも、社会モデルの視点から障害について考える記事を掲載しました。

今回〈UNIVA〉が開発した「ふつうのじかん」は、子どもたちが社会モデルの考え方を理解し、その視点を用いて課題解決を考えながら、誰もが過ごしやすいインクルーシブな学校・社会づくりにつなげていくことを目的とする無料の授業キットです。

低学年から始められる、“ふつう”をアップデートする授業

「ふつうのじかん」は、全4つの授業プランで構成されています。それぞれ、

  • ①子どもたちが社会モデルの考え方を理解すること
  • ②社会モデルの考え方を用いて課題解決を図る思考と態度を持てるようになること

  • ③学級・授業・学校運営の中に社会モデルの視点・考え方が知られ、広まっていくこと。子どもの声が学校づくりに反映されていくキッカケをつくること

いずれかの目標を、1コマの授業を通じて達成することを狙いとしています。

【画像】ABCD、4つの授業プラン。すべて1コマ完結

Aプラン「“ふつう”はひとそれぞれ」では、「家で宿題をするのが大変?」「じっと座っているのは大変?」といったテーマを通して、自分の“ふつう”が他者にとっても同じとは限らないことを学びます。

中学年以上を対象とするBプラン「“ふつう”と不便」では、「右利きと左利き、どちらが不便?」「共通語と方言、どちらが不便?」などの問いを通して、困りごとが社会や環境との関係の中で生まれることを考えます。

【画像】本は座って読むのが、ふつうだ。Yes Noの画像

Cプラン「“ふつう”をアップデートしよう」では、社会の“ふつう”を変えることで、より多くの人が過ごしやすくなる方法を考えます。これはBプランの後に行う授業です。

さらにDプラン「実践!“ふつう”アップデート」では、Cプランで生まれたアイデアを実際に試しながら、社会や環境を変えていく視点を身につけていきます。

【画像】自分の「ふつう」が社会の「ふつう」とちがうときどうする?どう考える

すでに授業を実施した小学校の中には、1年生を対象に多様性理解の授業として行い、支援学級への理解を深めてきた例や、5年生で「林間学校の“ふつう”をアップデートしよう」をテーマに授業を実施した例もあります。実際に後者では、林間学校中に子どもだけで泊まることが不安な場合、教員の部屋に泊まれるよう見直されました。

子どもたちが学び、自ら“ふつう”を変えることで、誰もが参加しやすい環境をつくる実践につながっています。

インクルーシブ教育の輪を広げる〈UNIVA〉の取り組み「ふつうの学校」「ふつうの部活」

〈UNIVA〉では、「ふつうのじかん」を開発する前から、インクルーシブ教育の普及・推進を目的に、教育行政や学校関係者を対象としたイベントを定期的に開催してきました。

その一つが、オンラインセミナー「ふつうの学校」です。本セミナーでは、全国各地におけるインクルーシブ教育の先進的な実践事例が、〈UNIVA〉理事であり、インクルージョン研究者の野口晃菜さんらとのディスカッションも交えながら紹介されます。

今後は2026年10月に、各自治体が実践するインクルーシブ教育の取り組み事例を紹介する第4回「ふつうの学校」を、2027年2月8日に、学校現場における「交流及び共同学習」の具体的な実践事例を紹介する第5回「ふつうの学校」を開催予定です。

 

【写真】大きなスクリーンの前で演題に立つ野口さん
写真は〈一般社団法人UNIVA〉が2026年3月8日に開催したイベント「ふつうの日」

さらに〈UNIVA〉では、教育現場での「ふつうとは何か?」について考え、具体的なアップデートの取り組みや、直面しやすい課題について掘り下げるオフラインイベント「ふつうの日」なども開催してきました。

“ふつう”を問い直すいくつもの取り組みを行うなかで、〈UNIVA〉は今回の新しい授業プランの公開にあたり、「ふつうのじかん」に取り組む先生方を対象とした「ふつうの部活」という場もスタートさせています。

「ふつうの部活」は、「ふつうのじかん」を実践する先生同士がオンラインで集まり、授業実施に向けた悩みや課題を共有したり、実践を通じて得られた工夫や成果を紹介し合ったりするコミュニティです。参加者同士が学び合い、互いの実践を深めながら、インクルーシブ教育の輪を広げる場となっています。

大人だけでなく、子どもたちもインクルーシブや社会モデルについて学び、課題を解決する力を身につけていく。そうした学びを通じて、大人が見落としていた視点に気づき、互いに学び合うことで、誰もが過ごしやすい環境づくりにつながっていくことでしょう。