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美術館は、人と人がつながる場所になるか。東京都美術館100周年記念レクチャーで考える「これからの公共性」
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2017年、「ボストン美術館の至宝」展にて開催されたキッズデー 撮影:中島佑輔

美術館は、作品を鑑賞する場所。

そんなイメージは近年、美術館が人と人をつなぐ場として新たな役割を担うなかで、少しずつ変わりつつあります。

東京都美術館では、2026年に開館100周年を迎えることを記念し、レクチャーシリーズ「人々のつながりを編む―美術館のこれからのかたち」を2026月8月1日(土)、2日(日)、8日(土)に 開催します。

テーマは、「こどもの体験」「公共」「ろう者の世界」「ケアコミュニティ」「ふれる鑑賞」などの全6つ。2012年から東京都美術館が取り組んできた実践を振り返りながら、美術館が社会のなかでどのような役割を果たせるのか、多彩なゲストとともに考えます。

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東京藝術大学大学美術館で行われた「Creative Ageing ずっとび」の活動・ずっとび鑑賞会  撮影:中島佑輔

すべての人に開かれた美術館をめざすというビジョン

東京都美術館は1926年、日本初の公立美術館として開館しました。

2012年のリニューアルを機に掲げたのが、「アートへの入口」を通して、すべての人に開かれた美術館をめざすというビジョンです。

そして、その中心的な取り組みのひとつとして挙げられるのがアート・コミュニケーション事業です。公募によって集まった市民「アート・コミュニケータ(とびラー)」をはじめ、多様な人々や組織と作品を介した対話や交流の場をつくってきました。

ここで大切にされているのは、「作品について教えること」ではなく、一人ひとりの感じ方や経験に耳を傾けること。作品をきっかけに対話が生まれ、人と人、人と地域との新たなつながりが育まれていく。そんな実践が、この10年以上積み重ねられてきました。

今回のレクチャーシリーズでは、これらの実践を振り返るとともに、「これからの美術館」に求められる役割について、さまざまな立場から考えていきます。

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障害のある方のための特別鑑賞会

「公共」や「ケア」をはじめとして、6つのテーマから考える美術館の可能性

レクチャー初日となる8月1日(土)は、「こどもの体験」と「アート・コミュニケータとコミュニティ」がテーマです。

午前のプログラムでは、多様な背景を持つ子どもたちがアートを通して世界と出会う場づくりについて紹介。午後は、とびラーとして活動した人々の経験や、活動終了後も地域へ広がっていくコミュニティの実践に焦点を当てます。

2日目の8月2日(日)は、「公共」と「ろう者と表現」をテーマに開催。文化人類学者・松村圭一郎さんらによるセッションでは、市民が主体となって公共を育む実践について考えます。

午後には、写真家・文筆家の齋藤陽道さん、身体表現アーティストの南雲麻衣さんが登壇。ろう者ならではの身体感覚や表現を入り口に、「異なる感覚を持つ人とともにいること」の意味を探ります。

最終日の8月8日(土)は、「ケアコミュニティ」と「ふれる鑑賞」がテーマです。

午前は英文学者の小川公代さんを迎え、認知症当事者との鑑賞プログラムや文化的処方など、美術館とケアを結ぶ実践を紹介。午後は、国立民族学博物館教授の広瀬浩二郎さんらが登壇し、見える人と見えない人がともに作品を味わう「ふれる鑑賞」を通して、視覚だけに頼らない鑑賞体験について考えます。

どの回も、美術館という場所を入り口に、社会や人との関わり方を見つめ直す内容となっています。また、いずれの回も後日、記録の公開を予定しています。すべての回に手話通訳と日本語字幕が入り、より多くの人が参加しやすいレクチャーとなっています。

「対話する美術館」が問いかけるもの

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2026年の「スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやき」展で行われた、障害のある方のための特別鑑賞会

作品を見て、「どう感じましたか」と尋ねる。

一見するとシンプルな問いかけですが、それは相手の経験や価値観を受け止めることにもつながります。東京都美術館がさまざまな事業を通して育んできたのは、知識を伝えるための場だけではなく、異なる背景を持つ人同士が対話し、新しい関係を築く場でもありました。

今回のレクチャーシリーズでも、研究者だけでなく、アーティストや実践者、当事者など、さまざまな立場の登壇者がそれぞれの経験を持ち寄ります。「美術館は誰のためにあるのか」「公共とは誰がつくるものなのか」「ケアは特別な場所だけで行われるものなのか」。それぞれのプログラムで交わされる議論は、美術館の未来だけでなく、私たちが暮らす地域や社会について考えるきっかけにもなりそうです。