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日本語と手話の表現を用いた手話裁判劇『テロ』が、10月5日から10日〈神戸アートビレッジセンター〉にて上演
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ブレて顔のわからない人のようなものが写っているチラシの表面。上に大きく白い文字で「テロ」とある
手話裁判劇『テロ』が、2022年10月5日から10日まで〈神戸アートビレッジセンター〉で上演されます

ろう者、聴者、視覚に障害のある人が共に表現する舞台

日本語と手話を用いた手話裁判劇『テロ』が〈神戸アートビレッジセンター〉(兵庫県神戸市)で2022年10月5日(水)から10日(月・祝)まで、上演されます。

本公演は〈神戸アートビレッジセンター〉がプロデュースし、劇作家・演出家のピンク地底人3号さん(ピンク地底人/ももちの世界)が演出を手掛ける舞台作品です。

公募オーディションで選出された、ろう者、難聴者、聴者、視覚に障害のある人を含む出演者11名が、日本語と手話を交えた「手話裁判劇」として戯曲作品『テロ』を上演します。

戯曲作品『テロ』とは

戯曲作品『テロ』は、2015年にドイツの小説家/弁護士のフェルディナント・フォン・シーラッハさんが発表した作品です。シャルリー・エブド襲撃事件やパリの同時多発テロが起きた同年に発表され、その後、世界各国で上演。有罪判決と無罪判決の両方の結末が用意され、観客が結末を選ぶという上演形式が話題を呼びました。

はじまりはドイツ上空。旅客機をハイジャックしたテロリストは、サッカースタジアムに旅客機を墜落させ、7万人の観客を殺害しようと目論みます。しかし、緊急発進した空軍少佐が独断で旅客機を撃墜。乗客164人を殺して、観客7万人を救った空軍少佐は英雄か、それとも犯罪者か。命を天秤にかけることはできない、という命題のもと、人間の倫理を問います。

音声と手話を交えた演劇作品

今回演出を務める ピンク地底人3号さんは、第66回岸田國士戯曲賞最終候補作品にも選出された『華指 1832』など、ろう者や難聴者の俳優たちを起用し、手話表現を取り入れた作品づくりに近年取り組み始めた劇作家・演出家です。

本作のある台詞を読んだときに、『華指 1832』に出演したろう俳優の山口文子さんが手話をしている映像が思い浮かび、この戯曲を自身の手で演出しなければと強く思ったのだそう。

赤い電車の前に立ってこちらを見ている
ピンク地底人3号さん。近年は手話言語を使った作品を立て続けに発表している

出演者は、山口文子さんのほか、2022年3月に開催した公募オーディションで選ばれた、10名ーー石原菜々子さん、北薗知輝さん、木下健さん、古賀麗良さん、庄﨑隆志さん、関場理生さん、田川徳子さん、藤田沙矢夏さん、宮川サキさん、森川環さん。

ろう者、難聴者、聴者、視覚に障害のある人などが含まれるチームです。本公演は、音声日本語と手話の表現を用いた公演となり、バリアフリー日本語字幕付きです。

両親がろう者で、母語が日本手話のろう俳優・山口文子さん

文化芸術を通じた共生社会を目指す〈神戸アートビレッジセンター〉

〈神戸アートビレッジセンター(通称・KAVC かぶっく)〉は、1996年の開館以来、「芸術家が住み、育つまち」「幅広い文化・芸術のあるまち」の実現に向けて、演劇・ダンス・美術・映像分野を中心に、若手アーティストの育成に力を入れてきました。

2017年度に大谷燠(おおたに いく)さんが館長に就任。さらに2018年度からは舞台芸術プログラムディレクターとしてウォーリー木下さんが加わり、「創る劇場」をコンセプトに事業を展開しています。2019年度より、気鋭のカンパニーを紹介する企画「KAVC FLAG COMPANY」を開催し、これまでに関西圏を中心に活動する16劇団を紹介してきました。

「KAVC FLAG COMPANY 2019-2020」参加劇団のひとつ「ももちの世界」を主宰するピンク地底人3号さんを迎えて行われる本公演は、これまで3年間開催してきた事業の集大成として位置づけられています。

また同時に、文化芸術を通じた共生社会の実現を目指す出発点として、障害のある人へ様々な代替手段を用いて情報を提供する「情報保障」をどのように演劇公演に取り入れるかについても模索していきます。

〈神戸アートビレッジセンター〉舞台芸術プログラムディレクターのウォーリー木下さんは、本公演の挑戦が「後世に語り継がれ、そして継続されていく大きな芸術的事業になるだろう」としながら、コメントを寄せています。

“これは手話を使った演劇ではなくて、人と人とが出会いわかりあうための演劇である。だからきっと「テロ」なのだ。3号君の手腕が発揮されるのはいつも戯曲と演出と稽古場がひとつの解を導き出すことで、今回の作品はそこに社会というタームもまざり、これほどまでに複雑で今日的な演目はないと期待している。必見。”

茶色いハットをかぶって、黒縁のメガネをかけ、薄茶色のジャケットを着て、向かって左前方向をみて笑っている
2018年4月より〈神戸アートビレッジセンター〉の舞台芸術プログラムディレクターを務めるウォーリー木下さん

異なるバックグラウンドを持つ人たちがどのような方法でひとつの舞台をつくるのか。音声と手話を交えたこれまでにない演劇作品の挑戦を、どうぞお見逃しなく!