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子どもの「意見を表す権利」を楽しく学ぼう!ワークショップキット『きかせてジャーニー』発売
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さまざまな動物と人のポップなイラストが描かれた「きかせてジャーニー」のパッケージ表面

身近な遊び体験を通じて「子どもの意見表明権」を学ぶワークショッププログラム

身近な子どもが、いつもより元気がなかったり、どこかもの憂げだったり、何か言いたそうだけど教えてくれなかったり。そんな姿を目にしたとき、皆さんはどうしていますか?

「話をきかせてね」と声をかけても、自分をよく知る大人には話しづらいこともあります。また、周りへの気遣いから声に表さなかったり、ひとりで我慢したりする場合もあるかもしれません。

もしそんなとき、その子が「すべての子どもは自分の声をきいてもらう権利がある」ことを知り、その権利を真に実感できたとしたら。心のもやもやを打ち明けてくれる場面も増えるのではないでしょうか。

折り紙、コマ、サイコロ、カード、ジャーニーパスポートなど、さまざまな「きかせてジャーニー」のキット内容の写真

2024年春、子どもが「子どもの権利」を実感しながら学ぶワークショップキット『きかせてジャーニー』が発売開始となりました。

これまでにも「子どもの権利」を学ぶ教材はさまざまに制作されてきましたが、『きかせてジャーニー』は「子どもの意見表明権(子どもが意見を表す権利)」に焦点を当てて制作されているのがポイントです。身近な遊び体験で自分の気持ちを表し、友だちや仲間の声を互いにきき合うことを通じて、「子どもの権利」を学んでいきます。

企画・発行は〈NPO法人子どもアドボカシーセンター福岡〉。企画・制作を〈一般社団法人福祉とデザイン〉と〈UMA/design farm〉が担っています。また協力者として、九州大学の田北雅裕研究室が参加しています。

世界で最も多く締結されている人権条約「子どもの権利条約」とは?

1989年の国連総会で採択された「子どもの権利条約」。世界で最も広く受け入れられている人権条約で、締約国や地域数は196に及び、日本でも1994年に批准しています。

この条約には、子ども(18歳未満の人)は成長の過程にあって保護や配慮が必要な存在でありつつ、単に大人から「守られる対象」ではなく、大人と同様にひとりの人間としての「権利(人権)をもつ主体」であると明確に表されています。

全40条を通じて定められているのは、子どもの生きる権利、成長する権利、暴力から守られる権利、遊ぶ権利、参加する権利など。その実現には子どもを育てる保護者が責任を持ち、それを支援するのが国であると、条約には明記されています。

子どもの権利条約については、〈日本ユニセフ協会〉のウェブサイトにも詳しい解説があります。子ども向けサイトもあるので、ぜひ一度チェックしてみてください。

「子どもの意見表明権」を活性化させる「子どもアドボケイト」

「子どもの権利条約」の第12条には、「子どもの意見表明権」が定められています。これは要約すると、子どもには「自分の声を表す権利」と「尊重される権利」があるということ。

近年はこの権利をサポートする活動を「子どもアドボカシー」と呼び、その活動を実践する専門家を「子どもアドボケイト」と呼びます。子どもの声に耳を傾け、かたちにならない気持ちや思いを受け止めながら、意見の伝え方を一緒に考えて表明できるようにサポートし、周りの大人に子どもの声をきくように働きかけるのが、その役割とされています。

現在、公的な資格にはなっていませんが、アドボケイトになるにはNPO法人などの養成講座を受講し、研修などで実践力を身につける必要があります。ワークショッププログラム『きかせてジャーニー』を開発した〈子どもアドボカシーセンター福岡〉も、定期的に講座を開いているので、気になる方は公式サイトをご確認ください。

『きかせてジャーニー』の内容と、3つのワークをご紹介!

キットの中身を取り出す子どもの写真

今回発売となった『きかせてジャーニー』のキットでは、「子どもの意見表明権」にフォーカスしたワークショップを行うことができます。

ファシリテーターとなる大人以外、参加者は子どものみ。子どもたちは、“旅(ジャーニー)”をコンセプトにした3つのワーク「もやもやフライト」「ぺちゃくちゃスカイ」「ジャーニーパスポート」を体験し、子ども同士の声をきき合いながら「子どもの権利」を学び、理解を深めていきます。

子どもの率直な気持ちを引き出すことが重要なため、ファシリテーターは直接その子どもたちと関わりのない第三者、できれば「子どもアドボケイト」が担うことが推奨されています。

・ワーク① もやもやフライト(意見形成・意見表明)

子どもが日常生活で感じる、もやもやした気持ちを自由に折り紙に書き、その折り紙で紙ひこうきをつくって一斉に飛ばすワーク。自分の気持ちに向き合い、表現し、また誰かの気持ちを受けとめる体験を通して、「意見を表す権利」を実感していきます。

気持ちを書いた折り紙を折る子どもの手の写真

・ワーク② ぺちゃくちゃスカイ(意見表明・対話)

1グループ4~6人で行う、すごろく形式のワーク。子どもたちは2人1組にわかれ、2つのサイコロを振ってコマを進めます。マスに書かれているお題をもとに、お互いの気持ちや声をきき合い、それにひもづく権利について考えていきます。また、自分の意見を共有したり、相手の意見を受けとめて尊重したりすることの大切さを実感していきます。

すごろく型のシートを上から見た写真

・ワーク③ ジャーニーパスポート(知識学習)

「ジャーニーパスポート」とは、日常生活で起こりうるエピソードとともに、関連する子どもの権利の紹介などをわかりやすく解説した冊子。子どもたちに手渡し、子どもの権利とはどういったものなのか、より詳しく学んでいきます。

このワークに限り、ファシリテーター以外の大人(教師や保護者など)も参加可能です。

「ジャーニーパスポート」を読んでいる子どもの写真

これらのワークは、学校での活用しやすさを踏まえ、所要時間が45分程度(平均的な授業時間)に設定されているのもポイント。

役割が異なる3つのワークすべてを体験することで、効果的に子どもの権利を学ぶことができますが、人数や時間に制限がある場合を想定したプログラム応用例も提示されています。

・基本プログラム

「ワーク1」から「ワーク3」までの基本プログラムの構成表

・プログラム応用例

「例1:45分×2コマで実施する場合」「例2:60分×1コマで実施する場合」と書かれたプログラム応用例の構成表

子どもの学ぶ機会と、「子どもアドボカシー」が学校や地域に広がるツールを目指して

『きかせてジャーニー』の発端は、2021年に〈子どもアドボカシーセンター福岡〉が、社会的養護(※注)のもとで暮らす子どもたちに向けた「子どもの権利ノート」(福岡市)を制作したこと。

翌年には対象となる子どもを拡大し、小・中学校で活用できる「子どもの権利ノート」の制作を企画します。その際に協力を仰いだのが、子ども家庭福祉の課題を乗り越えていくための実践・研究に取り組む、九州大学教育学部の田北雅裕研究室でした。

プロジェクトを進めるにあたって田北さんから提案されたのは、子どもが自らの権利を学び、その主体である認識を持つには「ノート学習」よりも「体験」としての学びが重要であること。そして、制作におけるテーマを「子どもアドボカシー」に置き、それを学校や地域全体に広げることの必要性でした。

そこで同法人は、これまでにも行ってきた、子どもを対象とする意見表明権を学ぶワークショップを改良し、プログラムとして体系的に発展。多くの子どもたちや、外部の制作メンバーとも対話を重ね、『きかせてジャーニー』が誕生しました。

今後は、福岡市内の小・中学校で『きかせてジャーニー』を用いたワークショップや、ファシリテーターを担う「子どもアドボケイト」の研修などを行っていく予定だといいます。

自分の思いや意見が尊重されることは、子どもにとって大切な経験です。

すでに子どもアドボケイトとして活動されている方はもちろん、保護者、教員、保育者といった子どもの養育や支援に携わる方は、ぜひこれらのツールを活用してみてください。子どもの内なる声に大人が目を向けること、そうした環境が整っていくことは、子どもたちのこれからの人生に、きっと大きな影響を与えていくはずです。

(※注)虐待や経済的理由などで保護者と暮らせなくなった子どもを公的に育てること