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多様な“個”が重なりあう建築とは?「大西麻貴+百田有希 / o+h展:⽣きた全体――A Living Whole」、9月には講演会も
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【画像】展覧会のフライヤー画像。太陽、月、山、木、シカ、地下水など、自然が描かれたイラスト

建築を通して、寛容で多様な社会について考える

障害のある人とともに新しい仕事づくりを行う〈Good Job!center KASHIBA〉、インクルーシブな子どもの遊び場〈コパル〉をはじめ、福祉施設や公共施設、まちづくりにおける建築設計などを数多く手掛けてきたユニット「o+h」。その取り組みを紹介する展覧会「大西麻貴+百田有希 / o+h展:⽣きた全体――A Living Whole」が、2024年11月24日(日)まで〈TOTOギャラリー・間〉(東京都港区)にて開催されています。

「o+h」が大切にしているのは、利用者や地域の人々の声、土地に伝わる物語、地域の営みを丁寧に拾い上げ、建築に“翻訳”すること。本展では、多様な個が重なりあう建築のあり方を提示し、誰もがありのままで過ごせる寛容な社会について、見る人に問いを投げかけます。

さらに2024年9月27日(金)には、〈イイノホール〉(東京都千代田区)で2人による講演会も予定。参加申し込みは9月15日(日)までです。

営み、空間、時間、“生き物”としての建築を大切にするユニット

【写真】女性と男性が横並びに立っている正面の写真
大西麻貴+百田有希 / o+h
左)大西麻貴、右)百田有希
©Yurika Kono

「o+h」とは、大西麻貴さんと百田有希さんが2008年から共同主宰する建築家ユニットです。2023年の「ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展」日本館キュレーションなどでも注目を浴びており、現在はそれぞれ、横浜国立大学大学院Y-GSA教授、横浜国立大学非常勤講師も務めています。

2人が設計をするときに意識するのは、建築物を取り巻く「全体」について考えること。その場所での営みはどのようなものか、建築が内側と外側をつなぐ空間となることはできるか、過去や未来を含めた時間とつながることはできるか、そして建築を自立した“生き物”ととらえることはできるか……。

「o+h」はこうした問いの立て方を、詩人のT.S.エリオットの言葉であり、今回の展示会のコンセプトである「生きた全体(a living whole)」として打ち出しています。

【写真】震災ミュージアムKIOKUを上空から撮影した写真
熊本地震 震災ミュージアム KIOKU(熊本県、 2023 年)
©Takumi Ota

これまで住宅、レストラン、美術館、子どもの居場所、お寺の鐘撞堂、そして熊本地震の記憶を継承する〈熊本地震 震災ミュージアム KIOKU〉など、多岐にわたるプロジェクトを手がけてきた「o+h」。〈こここ〉でも、2人が手がけた建築や拠点を紹介しています。

〈Good Job!center KASHIBA〉(奈良県香芝市)は、障害のある人とともに、アート・デザイン・ビジネスの分野をこえ、社会に新しい仕事をつくりだすことをめざして、〈たんぽぽの家〉が2016年にオープンした施設。作業スペース、カフェ、福祉施設が手がけた商品を並べた店舗が共存し、障害のある人や地域の人が出入りする、広々とした明るい空間をつくりあげました。

「何歳からでも、リスタートできる社会へ」をスローガンとして、2021年に就労継続支援B型事業所としてオープンした〈ムジナの庭〉(東京都小金井市)では、建築家・伊東豊雄氏が設計した住宅〈小金井の家〉の改修を担当しています。

さらに2022年4月にオープンした児童遊戯施設〈シェルターインクルーシブプレイス コパル〉(山形県山形市)では、施設設計を担いました。バリアを解消するスロープや手すりを、好奇心や探検心を引き立てるものと見立て、子どもを含むさまざまな人にとっての新しい遊びや学びのきっかけとなるよう心がけたといいます。〈コパル〉の設計では、日本建築学会賞(作品)を受賞しています。

【写真】建物の内観。広々とした天井やスロープのある体育館
シェルターインクルーシブプレイス コパル(山形県、2022年)
©copal

複雑な総体としての建築を伝える「大西麻貴+百田有希 / o+h展」

展覧会「⽣きた全体――A Living Whole」では、これまでのプロジェクトを模型や言葉、これまでの作品を一枚の絵に表した展示などを通して振り返りつつ、建築の意義や未来について考える空間をつくりあげています。

 

「シェルターインクルーシブプレイス コパル」では、スロープが車椅子を含むすべての人の動線でありながら、同時に子どもたちの遊び場でもあるように、一部分だけを取り出すことができない複雑な総体を生み出しています。個々の価値観や機能を出発点に、それらが折り重なり合うことによって誰もが自分の居場所を見つけることができるように、「生きた全体」を考えることとは、各存在のかけがえのなさを大切にし、寛容で多様な社会の理想形を、建築を通して示そうとしていると言い換えられるのではないでしょうか。

展覧会公式サイトより
【画像】黒い天井と床の会場、白い什器の上に模型が置かれている
〈TOTOギャラリー・間〉3F展示室
【写真】オレンジ色の壁に展示された建築の写真
〈TOTOギャラリー・間〉4F展示室

2024年9月27日(金)の講演会では、2人のこれまでの取り組みや思いが語られます。参加申し込みは9月15日(日)まで。詳しくは下記のInformationをご参照ください。

建築に関心がある人も、「ありのままで生きやすい社会」について考えたい人も。ぜひ一度、足を運んでみませんか。