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“作り手”と“使い手”が共創するパナソニックのインクルーシブデザイン──ものづくりの可能性を探る「OUR PRODUCTS展」を5月23日〜30日に開催
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【画像】OUR PRODUCTS
会場:FUTURE LIFE FACTORY(ARA神宮前プレイス B1F)

大量生産品から、多様なニーズに応えるパナソニックの新たなものづくりって? 5月23日〜30日「OUR PRODUCTS展」

私たちの生活を支える技術は、日々進化を続けています。2015年に51%だったスマートフォンの所有率は、2024年には97%となり、電子決済もいまではすっかり当たり前の光景に。AIの台頭で、そうした変化のスピードは今後さらに加速していくでしょう。

それに伴い、ものづくりのあり方も、かつての「同じものを大量に生産する」モデルから、多様なニーズに応じて「その人に合わせていく」方向へとシフトしています。とはいえ、このアプローチにはまだ明確な正解がなく、まだまだ探求していく必要があります。

〈パナソニック株式会社〉が2025年5月23日(金)〜30日(金)に開催する「OUR PRODUCTS展」では、“作り手”と“使い手”の関係を見つめ直しながら生み出されてきたインクルーシブデザインのプロセスと、そのプロトタイプが展示されます。

“使い手との共創”&“使い手との共創”のプロセスを展示

過去さまざまな家電製品を大量生産によって提供してきたパナソニックは、近年、ユーザー一人ひとりに合った形で製品を届けるために、社外との共創を通じた新しいデザインプロセスを探ってきました。今回「OUR PRODUCTS展」で展示されるのは、その変遷と、実際に生み出したプロダクト群です。

同社が挑んだ新しいアプローチの一つが、“作り手との共創”。木材を使った家電パーツのプロトタイプ制作を、岡山県西粟倉村の木工・林業関係者と〈VUILD株式会社〉と連携しています。

家電本体を一から自作して「自分だけに使いやすい製品」を生み出すのはハードルが高いものです。そこで本プロジェクトでは、「操作部分をユーザー自身が自由にカスタマイズできる仕組みが整えば、より多様なニーズに応えられるのではないか」という仮説のもとに、オーブントースターのハンドルやつまみ、テレビのスタンド、電動歯ブラシのブラシなどを制作しました。

【写真】オーブントースターの操作部分をカスタムするためのたくさんの木製パーツ

もう一つのアプローチが“使い手との共創”です。今回は視覚障害のある方々の声をもとに、家電の操作部に貼り付けるチップの作成に挑みました。

インクルーシブデザインの手法を用いて、当事者の意見を繰り返し取り入れながら改良された拡張パーツが、会場でも実際に展示されます。3Dプリンターで作られたこのチップを電子レンジなどの家電に貼ることで、よく使う操作ボタンの位置が手探りでも分かる仕様となっています。

【写真】3Dプリンターで制作した電子レンジの操作部。パネルの上に樹脂のパーツが貼られている

大企業の横断組織が取り組む、インクルーシブデザインを実体験

本展示を牽引するのは、パナソニックのデザイン部門「FUTURE LIFE FACTORY」と、「トランスフォーメーションデザインセンター」です。

「FUTURE LIFE FACTORY」は、「未来の豊かさを問い、具現化するデザインスタジオ」として2017年に立ち上がりました。大量生産では対応しきれないパーソナルな課題の解決を目指し、社内を横断する少数精鋭の組織としてエンジニアとデザイナーによって編成されています。これまでに、感性センシング技術を活用した新しい瞑想体験や、子どもの触覚の発達を促すパズルの提案、“おいしい”を通じて価値観に気づく食主義診断など、さまざまなプロジェクトを生み出してきました。

そして、「FUTURE LIFE FACTORY」に今回のプロジェクトで協力したのが、「トランスフォーメーションデザインセンター」ストラテジーデザイン1部のDEIデザイン課。2024年に「IAUD国際デザイン賞2024」で大賞を受賞するなどした、パナソニックのインクルーシブデザインの取り組みを牽引している組織です。これまで見過ごされてきた人々の声に耳を傾け、その課題の解決策を探るとともに、必要とする方への届け方を考えてきました。

【画像】全体の考え方として、ひとりのためのアイデアから、すべての人の生きやすさを実現することが図の中央に示されている。それをとりまいて、気づく、考える、つくる、伝えるの4つの行動が示されている
トランスフォーメーションデザインセンター」ストラテジーデザイン1部のDEIデザイン課が作成した「インクルーシブデザインで実現したい考え方 ~5つの行動指針~」

一人ひとりの課題を解決できるものづくりを、どのように実現するか。こうしたパナソニックの試行錯誤を参加者自身が体験できる機会として、本展の会期中には、3つのワークショップも開催されます。そこで生まれた成果物は随時会場に掲示され、新たな展示として加わっていく予定です。

初日、5月23日開催のワークショップ「つくろう、わたし仕様。3Dプリントで家電をもっと使いやすく」では、3Dモデリングや3Dプリンターの基本的な使い方を学びながら、家電用拡張パーツのアイデアをスケッチし、実際にモデリングから3Dプリントでの生成までを体験します。講師を担当するのは、3Dプリンタによる自助具制作のプラットフォーム「COCRE HUB | コクリハブ」を運営する〈一般社団法人ICTリハビリテーション研究会〉理事長の林園子さんと副理事長の濱中直樹さんです。

また5月24日に開催される「デジタルデータで手触りをデザインしよう – 木製ノブ×トースター プロトタイピングWS -」では、パナソニックのオーブントースターを題材に、木製ハンドルの製作に取り組みます。講師となる〈VUILD〉デザイナーの戸倉一さんと共に、デジタル木工加工機「ShopBot」や、オンライン上でデザインからパーツ加工までを行えるプラットフォーム「EMARF」を使い、ものづくりのプロセスを体験することができます。

【写真】木材を電動のこぎりで加工している様子

「大量生産で製品を届ける」という従来のアプローチから、一人ひとりのニーズに寄り添い、使い手と共にものづくりを行うスタイルへと変化が進むなか、〈FUTURE LIFE FACTORY〉は、こうした新たなものづくりを探究する組織として、数々のインクルーシブデザインに取り組んできました。

ぜひ、プロトタイプの展示やワークショップを通じて、その取り組みの変遷を体感してみてください。