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大人が変われば、子どもも変わる。学び場「トーキョーコーヒー」全国196カ所で展開中
活動紹介

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芝生の上にテントが広がり、その前に人が集合している写真

全国196拠点に広がる、大人と子どもの学び場「トーキョーコーヒー」

日本の小中学生の不登校児童数、24万人。小・中・高・特別支援学校におけるいじめの認知件数、61万件(※注)。ニュースを見てこうした情報に触れるたび、子どもたちの置かれた環境の深刻さが伝わってきます。

そんな中、「大人」の行動や意識の変化を通じて、現代の子どもを取り巻く教育システムを変えていこうとする活動が、奈良県生駒市からスタートしました。「トーキョーコーヒー」と名付けられたこの取り組みは、2022年8月に始まり、現在全国196拠点(準備中を含む)に広がりをみせています。

“コーヒー”と名がついているものの、コーヒーを飲んだり販売したりするわけではありません。「トーキョーコーヒー」とは、一体どんな場所なんでしょうか。

※…文部科学省:令和3年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について 

「トーキョーコーヒー」とは?

「トーキョーコーヒー」は、「登校拒否」のアナグラム(並び替え)として生まれた言葉。アートスクールの〈アトリエe.f.t〉代表・吉田田タカシさんが旗振り役となって始まったムーブメントです。

集まるのは、学校に行かないと決めた子どものいる親や、活動の趣旨に賛同する大人たち。農業やダンス、ヨガなどやりたい活動を通して、大人自身がワイワイ楽しく過ごすことを特徴としています。

テーブルを囲んで大人たちが話をしている写真
みんなで餃子づくりをする活動
トラクターに乗る子どもの写真
大人が使う道具で遊ぶ子どもたち

教育の中で生じている今の“問題”は、子どもの不登校などではなく、そもそもの「大人の無理解」にある。そんな吉田田さんの考えから、まずは大人自身が自分を肯定して、楽しめる場所を作ろうと活動してきました。

大人の活動の場だから、その間、子どもは「トーキョーコーヒー」で何をして過ごしてもいい。押し付けられない場所だから、学校に行かない子どもたちにとっても、安心して過ごせる時間になっています。

アトリエや駄菓子屋で多くの子どもと関わり見えてきたこと

「トーキョーコーヒー」の仕掛け人である吉田田さんは、20年以上に渡りアートスクール〈アトリエe.f.t.〉を主宰しています。「つくるを通して いきるを学ぶ」をテーマに、絵画や制作を学ぶクラス、放課後等デイサービスなどを大阪市と生駒市で営むほか、2022年度にグッドデザイン大賞を受賞した、地域みんなで子どもを支える〈まほうの駄菓子屋 チロル堂〉の共同代表も務めるなど、多くの子どもと関わってきました。

これまでの実践を通じて、「自分の個性や特徴が認められ、安心できる場所にしか能動的な学習はない」と感じていた吉田田さん。だからこそ、日本の教育を根底から変えたいという気持ちを抱くようになった、と話します。

「日本の教育は、戦後に出来あがったまま大きく変わることなく続いています。学力など、限られた物差しだけで子どもを測るような考え方や仕組みは『今の時代に合わなくなっている』とみんな頭ではわかっていても、具体的な行動ができていない状態です。根っこのところから変えなければ、子どもを取り巻く状況はいつまで経っても良くならないと考えていました」(吉田田さん)

トーキョーコーヒーで活動するみなさん
一番左が「トーキョーコーヒー」のロゴTシャツを着た吉田田さん

そのために必要なのは、子どもの傍にいる大人が変わること。そして、教育のあり方をみんなが問い直せる環境をつくっていくことだと、吉田田さんは親たちと一緒に考えるようになりました。

「学校にはまだまだ不可解な校則がたくさんあり、『正しい答えを暗記すれば幸せになれる』などと教えられます。そんな学校に息苦しさを覚えた子どもを問題児と呼ぶことも、親が子育てに失敗したと悩むこともおかしい。日本が教育に対する考え方をアップデートし、子どもが大切な個性や自己肯定感を損なわないためにも、『トーキョーコーヒー』のような新しい形の居場所が必要だと思っています」(吉田田さん)

活動開始半年足らずで全国196カ所に広がる仕組み

活動開始にあたり「トーキョーコーヒー」はクラウドファンディングを実施。811人の支援者から735万円以上の寄付を集めたこともあり、現在全国196カ所に拠点の広がりをみせています。

主催者になるのは至ってシンプルで、「トーキョーコーヒー」の事務局が開催する研修会に一度参加すること。研修費と加盟費あわせて3万円でライセンスを受け取り、あとは実際の参加者会費(各拠点で自由に設定可能)に応じたロイヤリティなどを支払います。

アトリエe.f.t.、全国のトーキョーコーヒー拠点、参加メンバーが相互関係にあることを示すイラスト

主催者も参加者も負担が少ないことから、全国に瞬く間に広がりを見せているのでしょう。主宰者の吉田田さんは、「全国に500カ所以上つくる」ことを目標に掲げています。

とはいえ、「トーキョーコーヒー」は決して学校に通うことを否定しているわけではありません。拠点を広げるのは、さまざまな理由で不登校を選択した子どもや親が、後ろめたさを感じることのない世界をつくるためです。

「応援している大人がいて、認めてくれる友だちがいること。自分で選択した行動が将来につながるんだと、自信を持てるようにすること。 『トーキョーコーヒー』が全国に広がることでそれらの大切さに社会全体が気づき、みんなが現在の教育のあり方をもっと考えていく世の中を実現したいです」(吉田田さん)

数カ月から数年先までのイメージを、上から下に4つの区分で示しているイラスト
活動を第1〜4フェーズまで分けて、大人と子どもが変わっていく姿を想定している

どんな子どもも自分らしく生きられる世の中をつくるためには、まずは大人一人ひとりの考え方や行動を変えていくことから。そんな「トーキョーコーヒー」の趣旨に賛同された方は、ぜひ近くの活動にまずは参加してみませんか。「トーキョーコーヒー」のWebサイトから、全国各地の拠点を確認することができます。