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子どもの「体験格差」とは? 寄付を通じて“体験”をギフトする、2つのプロジェクト
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大きな木の上に建てられたツリーハウスの写真
写真:こここ編集部(2022年夏の取材出張時に撮影)

子どもの「夏休み格差」「体験格差」に目を向けた、〈フローレンス〉の協働プロジェクトと、〈チャンス・フォー・チルドレン〉の奨学金事業

多くの子どもたちにとって、待ちに待った夏休みが到来しました。こうした機会を使って、普段できない旅行やお出かけを楽しむ子どももたくさんいることでしょう。

一方で、家庭の経済的な理由などから、学校外で思い出をつくる機会を得られなかったり、本当はしたい体験ができなかったりする子どもたちがいることをご存じでしょうか。

今回は、「体験格差」といった言葉で示されるこの社会的問題に注目した2つの取り組み、〈認定NPO法人フローレンス〉が中心となる「#夏休み格差をなくそう プロジェクト」と、〈公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン〉の子どもの体験奨学金事業「ハロカル」をご紹介します。

子どもの貧困と「体験格差」

日本では今「子どもの貧困」が大きな問題となっています。子どもの7人に1人が、その国の文化水準や生活水準と比較して困窮している「相対的貧困」の状況にあるといわれています。

相対的貧困にある家庭の子どもたちは、日々の習いごとやクラブ活動への参加が難しい場合も少なくありません。さらに休日や長期休暇などでも、旅行、博物館や水族館、テーマパーク、イベントやお祭りといった外出の機会が持ちにくい傾向にあり、近年「体験格差」として問題視されています。

〈チャンス・フォー・チルドレン〉が2022年10月に行った調査では、年収300万円未満の家庭の小学生約3人に1人が、直近1年間で「学校外の体験がない」という結果が報告されています。ここでいう体験とは、スポーツ、文化芸術活動、自然体験、社会体験などを指します。

学校外の体験がない子どもの割合(直近1年間)のグラフ。世帯年収300万円未満は29.9%、600万円以上は11.3%
子どもがやってみたいと思う学校外の体験をさせてあげられなかった理由(「保護者に経済的な余裕がないから」と回答した割合)のグラフ。世帯年収300万円未満は56.3%、600万円以上は16.9%
チャンス・フォー・チルドレン「子どもの『体験格差』実態調査最終報告書(2023)」より

また同報告書では、昨今の物価高騰により、世帯年収300万円未満の子ども約2人に1人は、「体験機会が減少した」または「減少する可能性がある」ことも示されました。日々の食事など、目の前の生活を守るものが優先されるため、低所得世帯ほど、子どもの体験機会を減らさざるを得ない状況が見てとれます。

所得の増加が見込みづらい社会のなかで、その格差は今後ますます拡大することが懸念されています。

物価高騰が子どもの学校外の体験機会に与えた影響のグラフ。「体験機会が減少した」または「減少する可能性がある」の回答が、世帯年収300万円未満は50.6%、600万円以上は34.7%
チャンス・フォー・チルドレン「子どもの『体験格差』実態調査最終報告書(2023)」より

「体験格差」がもたらす、子どもへの影響とは?

この「体験格差」は、さまざまな問題をはらんでいます。

子どもの頃の体験は、学力などに影響するだけでなく、自尊感情や外向性、精神的な回復力などの発達にも影響することが、文部科学省の調査でわかっています。「体験の機会がない」という状態は、子どもが持つ可能性を大きく狭めてしまうことになりかねません。

さらにもうひとつ、重大な懸念とされているのが「貧困の世代間連鎖」。先の〈チャンス・フォー・チルドレン〉の調査では、現在の世帯年収が低い家庭の保護者ほど、幼少期の学校外の体験活動がなかったという結果が示されました。

体験の有無がもたらす、認知能力・非認知能力への影響。それらに関連してくる、将来的な所得の実情。これらを見ていくと、親から子どもへと、世代を超えてさまざまな負の連鎖が続いていく可能性も否めません。

グラフ左:小学生の頃の学校外体験がない保護者の割合(定期的なスポーツ・文化芸術系の習い事やクラブ活動をしていなかった割合)、グラフ右:小学生の頃の学校外体験がない保護者の割合(自然体験・社会体験・文化的体験を年に1回以上していなかった割合)。どちらも年収が上がるごとに、割合が減少している
チャンス・フォー・チルドレン「子どもの『体験格差』実態調査最終報告書(2023)」より

そんな「体験格差」が拡大しつつある今、その問題に向き合う2つのプロジェクトが動いています。どちらも寄付による支援が可能で、認定NPO法人および公益法人が運営するため、所得税などへの税制優遇の対象となります。

子どもたちの多様な体験機会を、みんなで一緒に応援してみませんか?

〈認定NPO法人フローレンス〉が夏の思い出づくり体験をお届け! 「#夏休み格差をなくそう プロジェクト」

女の子が座ってこちらを見ている写真。〈フローレンス〉の「#夏休み体験格差をなくそう」プロジェクトのアイキャッチ画像
目標金額1000万円・1000世帯への支援を目指してスタートした「#夏休み格差をなくそう プロジェクト」。8月に入り目標を達成し、現在は金額を1500万円に拡大。1500世帯への支援を目標にさらなる寄付を募っています

すべての子どもが夏休みの体験を楽しみ、大切な思い出がつくれる社会を目指し、2023年7月12日から「#夏休み格差をなくそう プロジェクト」を始動した〈認定NPO法人フローレンス〉。

これまで、病児保育や食の提供、多胎児の支援など、子どもに関わる支援を行ってきた同法人は、家庭による格差が拡大しやすい「夏休み」に着目。ひとり親家庭や、経済的に厳しい子育て家庭を対象に、子どもたちに夏の思い出をプレゼントするプロジェクトを立ち上げました。

例えば、5000円のご寄付で1世帯に。家族で海の宝石箱へ!「水族館」入場チケット / 例えば、1万円のご寄付で2世帯に。子どもにキラキラの1日を!「遊園地」プールチケット / 例えば、5万円のご寄付で10世帯に、家族みんなで外食!「ファミリーレストラン」お食事券

日本最大級の遊び予約サイトを運営する〈アソビュー株式会社〉をメインパートナーに迎え、全国のレジャー施設などで使えるチケットを発行。また、さまざまな民間企業と連携のもと、個人や法人から寄付を募り、体験プログラム、飲食店のクーポン、衣服などを、対象となる家庭に配布します。

本プロジェクトにおける目標金額は1500万円。1回のみの寄付はもちろん、マンスリーサポーターも募集中。全国1500世帯に夏の体験の機会を届けることを目指しています。

「#夏休み格差をなくそう プロジェクト」の仕組みの図。子どもたちと支援法人を、フローレンスがつないでいる
アソビュー株式会社をはじめ、日本航空株式会社、日本生命保険相互会社、日本テレビ放送網株式会社、アステラス製薬株式会社、トリンプ・インターナショナル・ジャパン株式会社、株式会社あきんどスシロー、株式会社ユニクロなどとの協業の仕組み

〈公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン〉 子どもの“体験奨学金”を届ける「ハロカル」

子どもがピアノを弾いている画像。〈チャンス・フォー・チルドレン〉のプロジェクト「ハロカル」のアイキャッチ画像
「ハロー・カルチャー(文化・体験との出会い)」と「ハロー・ローカル(地域との出会い)」という2つのメッセージが込められたプロジェクト「ハロカル」

小中高生の「学びたい」「やってみたい」に寄り添いながら、子どもの教育格差の解消を目指す〈チャンス・フォー・チルドレン〉。生活困窮家庭の子どもたちに、塾、習いごと、体験活動など、学校外の教育機関で利用できるスタディクーポンを提供したり、相談支援を行ったりしてきました。

新プロジェクト「子どもの体験奨学金事業『ハロカル』」では、主に小学校を対象に、スポーツ、音楽、芸術、自然体験などに特化して利用できる奨学金(給付型)を提供します。

「ハロカル」プロジェクトの仕組みの図。ハロカル地域コーディネーターが、地域の活動と子ども・保護者、自治体などをつなぐ

本事業では、日本各地に置かれた「地域コーディネーター」が、地域に根ざしたクラブや教室と連携し、きめ細やかなサポートで子どもたちの体験を支えていきます。すでに2022年度、「東東京」と「岡山」の2拠点で、このモデルでのトライアル事業が実施されました。

今回、2023~2025年度までの3年間で、約1000人の小学生への提供を目指しクラウドファンディングを開催中。目標金額は2000万円で、本プロジェクトで集まった寄付金の全額が、奨学金の費用として使用されます。寄付募集期間は2023年8月31日(木)までです。

ハロカル東東京・参画パートナーマップ
〈チャンス・フォー・チルドレン〉の本部がある東京都墨田区を中心に、2022年からトライアルを行ってきた「ハロカル東東京」。現在、体験格差をなくすという理念に共感した60の教室・クラブなどが参画中

子どもたちの多様な体験は、ただ「成長」や「未来の礎」を築くためだけのものではありません。子どもたちが「今、この瞬間」を豊かに過ごすことそのものも、守られるべき大切な機会であると〈チャンス・フォー・チルドレン〉は訴えています。

今回の体験をきっかけに、なにかが変わる子どもたちもいるはずです。家庭の経済状況に関係なく、子どもの「やってみたい」を叶えられる社会を目指して、ひとつの歩みとなるこれらのプロジェクトをぜひ覗いてみてください。