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「社会包摂とデザイン」をテーマにした〈九州大学社会包摂デザイン・イニシアティブ〉2021年度活動報告書が公開。Webからダウンロード可能
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〈九州大学社会包摂デザイン・イニシアティブ〉初年度の活動報告書を公開

〈九州大学社会包摂デザイン・イニシアティブ(Design Initiative for Diversity & Inclusion)(以下、DIDI)〉から、活動一年目となる2021年度活動報告書として、「社会包摂とデザイン ー何をみるか、どこからみるかー」が発行されました。WebサイトからPDFダウンロードも可能です。

包摂型社会の実現に向けたデザイン研究と実装を目指す

〈DIDI〉は、多様性のある包摂型社会の「仕組み」をデザインする先導的研究拠点。2021年4月に九州大学大学院芸術工学研究院附属の研究センターとして発足しました。

組織名にも含まれている「社会包摂」とは、障害、貧困、国籍、性的指向など様々な理由で疎外されてきた人たちを含め、あらゆる人たちの存在が尊重される社会の在り方を指します。このような包摂型の社会を実現するには、従来とは異なる方法で、もの・こと・サービス・社会制度を「仕組み」としてデザインし、社会実装していくことが不可欠だと〈DIDI〉は考えています。

こうした背景を踏まえ、〈DIDI〉は多様なニーズに応じたサービスを提供し、個人のポテンシャルを引き出すための「仕組み」をデザインすることを通じて、健全な成長や豊かさの新しい価値を生み出す社会づくりを先導することを目指しています。

仕組みのデザイン
〈DIDI〉が考える社会包摂デザインのプロセス

〈DIDI〉は3つのラボから成り立っています。一つは「活動」や「連携・体制」に関するデザインを行う「ソーシャルアートラボ」。二つ目は「もの」や「情報」のデザインを実際に行い、社会実装をはかる「シビックデザインラボ」。そして「デザインシンクタンク」では、これらの知見を体系化し、社会包摂デザインの「知」の社会還元を目指します。

2021年度はそれぞれ複数のプロジェクトを展開してきました。

シンポジウムやプロジェクトの概要を収録

報告書は全40ページで、初年度となる2021年度の活動がまとめられています。

〈DIDI〉の趣旨を説明する「ごあいさつ」と〈DIDI〉が社会包摂デザインをどう考えているかを記した「社会包摂デザイン・イニシアティブ(DIDI)について」に始まり、〈DIDI〉の3つのラボ、「デザインシンクタンク」、「ソーシャルアートラボ/シビックデザインラボ」について実際のプロジェクト事例をもとに紹介。「教育」では、授業「社会包摂とデザインA」や「創造農村デザイン演習(学部)」などの目的や概要を実施写真と共に掲載。この報告書を読めば1年間の活動を網羅できる内容です。

報告書8ページから9ページの見開き画像
「デザインシンクタンク」のページで紹介している「社会的処方:健康の社会的決定要因への社会包摂デザイン」(p.8-9)

「ソーシャルアートラボ/シビックデザインラボ」では9つのプロジェクトを紹介

なかでも「ソーシャルアートラボ/シビックデザインラボ」では、実際に取り組んだ9つのプロジェクトを紹介。活動内容とデザインプロセスを余すことなく公開しています。〈こここ〉でもいくつかピックアップしてご紹介しましょう。

PROJECT1は「舞台芸術と音響技術による社会包摂のデザイン」。舞台芸術を行うホールが、親子連れや障害のある人などが直接来場しづらい場所となっている実情を踏まえ、舞台芸術分野の社会包摂を目的として新しい技術を活用。実演パフォーマンスとライブストリーミング配信の双方向的融合を実施・検証しました。

報告書16ページ〜17ページの見開き画像
PROJECT1の報告ページ(p.16-17)

〈北九州芸術劇場〉×〈九州大学大学院芸術工学研究院〉×〈ヒビノ株式会社〉による共同企画として、「舞台技術セミナー」を開催。北九州芸術劇場大ホールと九州大学大橋キャンパス音響特殊棟2階録音スタジオをITネットワークでつなぎ、離れた場所の両会場に分かれて共演するデモンストレーションを行いました。

実践研究の様子
2022年度は「聴覚障害のある人にとってのコンサートのあり方についての実践研究」をテーマに、聴覚障害のある人にとっての「音楽」とはどのようなものなのかを質的に整理し、聴者にとっての「音楽」との接点をどこに求めることができるのかを探索しています

PROJECT2は「共創的アート活動を通じた認知症ケアのコミュニケーションデザイン」です。認知症の介護現場には「支援する人/される人」のように立場が固定されると、支援される人がモノ扱いされることが多いという課題があります。こうした背景から、地域共生社会の実現に向けて、共創的アート活動を認知症ケアの現場や日常生活に反映させる仕組みを開発し、知見を体系化することを目指しています。

2021年度は、認知症高齢者とアート活動を行ってきたコーディネーターや自治体職員などにヒアリングを実施したほか、「認知症デイケア施設でのアートワークショップの実施と調査」やシンポジウムを開催しました。

報告書18ページから19ページの見開き画像
PROJECT2の報告ページ(p.18-19)
担当教員の中村美亜先生が九州大学 アジア・オセアニア研究教育機構のセミナーで発表した「『支援する/される』からの脱却 ー障害・認知症ケアの場における共創的アート活動の可能性-」アーカイブ動画

PROJECT5は「ジェンダー/LGBTsのデザイン」です。「ジェンダー・ギャップ指数2021」(世界経済フォーラム)のランキングで120位と低迷が続く日本。〈福岡市男女共同参画推進センター・アミカス〉と連携して、ジェンダーの新しい啓発の手法の開発や組織間連携の仕組みを検討。また、自治体間で異なるジェンダーに関わる施策についても、専門家とともに再考を試みています。

報告書24ページから25ページの見開き画像
PROJECT5の報告ページ(p.24-25)

2021年度は、福岡市と共催で「写真とことば」ジェンダーデザイン・コンテストを実施。また、複数の展示も実施し、日頃使われている言葉や身に着けるもの、図形や色など様々なテーマをジェンダーの観点から見つめ直す、問い直すことを提案しました。

受賞作品
「2021年度『写真とことば』ジェンダーデザイン・コンテスト」では、応募103作品から最優秀賞1作品、優秀賞2作品が決まった。画像は最優秀賞を受賞した作品。2022年にも同コンテストの第2回が実施されます。(詳細はInformation欄をご覧ください)

包摂社会の実現に向けて有用な事例集

「社会包摂とデザイン ー何をみるか、どこからみるかー」は、社会包摂について先駆的な研究を行う専門家の知が集結した報告書です。

〈九州大学大学院〉芸術工学研究院 前研究院長 谷 正和先生は「はじめに」(p2-3)でこのように話します。

「社会包摂デザイン・イニシアティブは具体的な社会の新しい仕組みをデザインし、社会実装していくことで、デザインの可能性を拓き、包摂型社会という新しい社会モデルが現状の閉塞した社会に対する有効な解であるということを示していきたいと考えています」

より多くの人が幸せに暮らせる社会をつくるために、社会包摂デザインは一つのヒントになるのではないでしょうか。「社会包摂」という言葉やよりよい社会をつくるためのデザインに関心のある方は、ぜひ一読してみてはいかがでしょう。

Information

〈九州大学社会包摂デザイン・イニシアティブ〉2021年度活動報告書「社会包摂とデザイン ー何をみるか、どこからみるかー」

ダウンロード:DIDI2021_REPORT

<活動報告書>
・編集:木下 貴子(CXB)、尾方 義人、中村 美亜、白水 祐樹、古賀 琢磨
・執筆:朝廣 和夫、伊原 久裕、尾方 義人、工藤 真生、古賀 琢磨、白水 祐樹、須長 正治、谷 正和、知足 美加子、長津 結一郎、中村 美亜、宮田 智史、村上 泰樹、村木 里志、森 千鶴子(50音順)
・デザイン:大村 政之(図案考案クルール)
・発行:九州大学社会包摂デザイン・イニシアティブ
・問い合わせ:社会包摂デザイン・イニシアティブ事務局
・メール:didi-office@design.kyushu-u.ac.jp

<九州大学社会包摂デザイン・イニシアティブ(Design Initiative for Diversity & Inclusion)>
Webサイト
ソーシャルアートラボ 
シビックデザインラボ
デザインシンクタンク

舞台芸術セミナー

2022年度「写真とことば」第2回ジェンダーデザイン・コンテスト 
8月1日よりDIDIのWebサイトにて募集要項を公開しています。9月30日まで作品募集中
2021年度の詳細はこちら