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福祉実験ユニット〈ヘラルボニー〉による、“違うこと”の価値を問う展覧会『The Colours!』が8月7日まで東京・六本木で開催
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『ヘラルボニー4周年記念 The Colours!』の展覧会のロゴ画像

福祉実験ユニット〈ヘラルボニー〉が、“違うこと”の価値を問う展覧会を開催

“異彩を、放て。”をミッションに活動する福祉実験ユニット〈株式会社ヘラルボニー〉が、2022年7月16日(土)~8月7日(日)の期間、東京都港区六本木の〈ANB Tokyo〉にて、会社設立4周年を記念する展覧会『ヘラルボニー4周年記念 The Colours!』を開催します。

本展では『The Colours!』の名の通り、さまざまな「色」に焦点を当てた作品を展示。その「色」とは、作品が持つ色の鮮やかさもさることながら、個々の“違い”を「色」と捉え、その違いそのものが価値となり社会を彩る、というメッセージでもあります。

作品を手がけているのは、〈ヘラルボニー〉とライセンス契約を交わしている、主に知的障害のあるアーティスト12名。本展の企画・監修は、〈金沢21世紀美術館〉(石川県金沢市)のキュレーターであり、2022年7月から〈ヘラルボニー〉の企画アドバイザーに就任した黒澤浩美さんが務めます。

カラフルなアート作品が並ぶ展覧会場内の写真
展覧会場内

〈ヘラルボニー〉の分岐点となる、初の“原画”展

これまで、障害のあるアーティストが手がけたアート作品をデータ化し、アートライフスタイルブランド「HERALBONY」のデザインとして起用したり、建設現場の仮囲いに作品を転用するプロジェクトなどを展開してきた〈ヘラルボニー〉。

そんななかで、データとしての作品起用だけでなく、原画そのものが持つダイナミックさ、力強さ、繊細さ、鮮やかさなど、オリジナルならではの魅力をダイレクトに感じてもらえるような取り組みにもチャレンジしていきたいと考えるように。

黒澤浩美さんを企画アドバイザーとして迎え入れ、〈ヘラルボニー〉初であり、事業の分岐点と位置づけた、今回の“原画”の展覧会が企画されました。

2000点に及ぶアートデータの中から選出された、12名の作品とは?

さまざまな色・形の電車車両の組み合わせにより、作者が好きなアイドルを描いた緻密なアート作品
早川拓馬《アイドルトレインエキスポ2016》

展覧会場には、滋賀県の〈やまなみ工房〉や、三重県の〈希望の園〉をはじめとする日本各地の福祉施設に在籍する人や、個人でアート制作を行っている12名の作品が並びます。

家族との関係や、家族と過ごした風景がほんの少し垣間見えるような作品。果てしない集中力の集積に、観覧する側もだんだんと没入してしまうような作品。作家の目的は別にありながらも、そこで生まれた副産物が妙に美しい作品など。

それぞれのアーティストがとことん突き詰める、好きなもの、大切なもの、情熱、日々のルーティンが形となったアート。障害のある人の作品、という先入観を超えていく力強さや美しさに魅了される人も多いはずです。

富士山の手前に大きな赤い太陽が描かれ、雪のような白い点を散らした、ダイナミックな富士山の作品
伊藤大貴《太陽と富士山》

〈ヘラルボニー〉がライセンス契約を結ぶ作家のなかから、「色」のパワーを持つ作品を中心にセレクトしたというキュレーターの黒澤さん。個々の“違い”とアートについての思いを、以下のように述べています。

アートは「違い」にこそ存在価値がある。「同じ」や「普通」よりも、個人の「個性」こそが認められる。違いこそが大切な価値だ。世界中を見渡してみても、ひとつとして同じものがないのは、あらゆる存在に言えること。人間の存在も、「違い」そのものが価値となって社会を彩る。違いこそが多様性を支え多様性こそが生存の力になる。そして何よりも「違い」は美しい。

(中略)

全ての色が異なり、あるがままの色が美しい。「私」の色を大切に、「私」の力を信じて、「私」の好きな色を見つけよう!「私」の居場所を知らせよう!
「私」の色に、力を与えよう!

大小さまざまな6匹の亀が描かれた作品。黒いペンで緻密に模様が描かれ、背景は黒一色。すべての亀がこちらを睨んでいるようにも見える
岩瀬俊一《カメ》
洋画「黒いチューリップ」のジャケットを鮮やかな色彩で描いた作品
森啓輔(希望の園)《黒いチューリップ》

福祉実験ユニット〈ヘラルボニー〉とは?

日本全国の福祉施設や、主に知的障害のある作家と契約を結び、アートデータの著作権管理を軸とするライセンスビジネスを展開し、福祉を起点に新たな文化の創造を目指している福祉実験ユニット〈ヘラルボニー〉。双子の兄弟である松田崇弥さんと、松田文登さんによって、2018年に設立されました。

多様な事業のなかで、「障害」という先入観や「常識」といわれるものを超えていく活動は、さまざまな方面から注目を集めています。

ところで「ヘラルボニー」という言葉は、松田兄弟の4つ上の自閉症の兄・翔太さんが7歳の頃に自由帳に記した言葉。辞書にも、Web検索にもヒットせず、言葉としては何の意味も持たないかもしれませんが、当時の翔太さんにとっては、なにか心地のいい、特別な言葉だったようで、たびたび自由帳に登場したといいます。

〈ヘラルボニー〉という社名には、「一見意味がないと思われるものを、世の中に新しい価値として創出したい」という意味が込められています。

トークイベントや、「HERALBONY」の人気アイテムの販売も

2022年7月16日(土)・18日(月)には『The Colours!』のトークセッションが開催されました。アーティストやギャラリスト、アートとビジネスを結びつけた活動をされている方など多彩なゲストを招き、「NFT」「ビジネス」「アート」の3つのテーマに基づいたトークセッションを行ったほか、展覧会場を巡るギャラリートークも実施。その模様は、YouTubeヘラルボニーチャンネルで公開されています。

ヘラルボニーに登録されているアート作品を起用したバッグ、傘、扇子、ハンカチなどが並ぶポップアップショップ内の様子
〈ANB Tokyo〉の2階に併設された「HERALBONY」ポップアップショップ

会場2階には、アートライフスタイルブランド「HERALBONY」の人気のアイテムが購入できる期間限定ショップも併設。

さらに、会場の1階にあるノンアルコールバー〈0%〉では、今回の展覧会のために考案されたノンアルコールカクテル「HERALBONY」が8月7日(日)まで楽しめます。松田兄弟の出身地である岩手県のとある名物をオマージュしたカクテルは、見た目も味わいも驚きに満ちています。

プロダクトとして楽しむアートとはまた異なる、作家の息遣いや筆に込めた握力も伝わってくるようなダイナミックな原画は、見ごたえたっぷり。気に入った作品は購入も可能です。ぜひ展覧会場に足を運び、さまざまな「色」の作品を楽しんでみては?