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ろう者による芸術表現を発信する展覧会「​ 〜 視覚で世界を捉えるひとびと​」が5月4日(木)〜7日(日)開催
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展覧会バナー画像。椅子の肘掛けの上で指を動かす人の手元が映っている
ろう者の芸術表現を発信する展覧会が〈BUoYギャラリー〉で5月4日〜7日に開催されます

言語や身体感覚の関係性や可能性を問い直す展覧会

私たちと日々ともにある感覚。人はその感覚をどのように捉え、どのように使い、人々と関わり世界を構築してきたのでしょうか。音声言語を使用する人々が大部分を占める社会において、“手話で話すろう者”は、主に視覚を使い、手話という言語を通して世界を認知します。

そんなろう者による芸術表現の新たな可能性を模索し、社会への問いを発信するアートプロジェクト〈Re; Signing Project〉による展覧会「 〜 視覚で世界を捉えるひとびと」が2023年5月4日(木)〜7日(日)の4日間、〈BUoYギャラリー〉(東京都足立区)で開催されます。

出展作家は、牧原依里さん、管野奈津美さん、Creole Projectなど。会期中は作品展示のほかに、パフォーマンス公演、アーティストトーク、映画上映、ワークインプログレス上映、ワークショップ、ギャラリーツアーなど多彩なプログラムを実施。言語や文化、身体感覚の関わりについて考え、語り合う場を開きます。

ろう者による芸術表現の可能性を模索し、社会への問いを発する

本展覧会を主催する〈Re; Signing Project〉は、ろう者アーティストたちが自ら企画運営に関わるアートプロジェクトです。“Re”は「再生」「アイデンティの再構築」、“Signing”は「手話で話す人々」「手話で話している」を意味し、手話という言語やろう文化についてアートを通じて発信していくことを目的としています。

本展のステートメントでは、「感覚と身体性の再構築」 というテーマで以下のように述べています。

本展は、音声言語優位の社会によって形成された既成概念、思考、行動形式に対し、言語や身体感覚を起点として人間の本質に対する問いを投げかけようとする試みである。
異なる文化や身体感覚、浮かび上がってくる日常と現実、仮装と現実を行き来する中で見えてくる言語の未知の可能性に目を向け、感覚の多層の紐解き、その多様性について共に考えること。人と人が繋がり、その空間で交わされる言語、せめぎ合う各々の身体に構築された記憶、そこに確かに存在する言語と非言語の揺らぎ。
それらの集合体と記憶が蓄積された身体の意味を捉え直し、“単なる”聞こえない身体そして“視覚で世界を捉えるひとびと”の様々な視点を通して、言語や文化、身体性との関わりを探っていく。

多様な角度から、手話やろう者の表現を捉える出展作家の作品

本展には、感覚と身体性をテーマにした作品、相互コミュニケーションの可能性に着目した実験プロジェクト、音声言語優位の世界に対して批判的な観点をもたらす作品、さらに言語の未知の可能性に焦点を当てたプロジェクトなどが展示されます。

映画作家の牧原依里さんは、市営団地で共に暮らすろう者の母娘にカメラを向けた家族ドキュメンタリー映像『私は母の夢をみる』を発表。また、ろう者の両親のもとで手話を第一言語として育ったインタープリターの和田夏実さんとの共同制作で、音声言語から解放された視覚言語の可能性を探る作品を展示します。

団地の部屋の中で、母と娘がキッチンの前にあるテーブルについてお互いに顔を見て会話している様子
牧原依里《私は母の夢をみる》2023年 © Deafbirdproduction
手の動いた痕跡を表したような、ピンクや赤、薄橙色で描かれた作品
牧原依里・和田夏実《架空手話》2023年 @Natsumi Wada

アメリカでろう者の芸術表現活動や欧米におけるデフアートの歴史について研究を行った管野奈津美さんは、映像作品『集う空間』を出品。カフェに集まった3名のろう者の会話を記録した本作では、絶え間なく繰り出される手話と視線の交差など、ろう者ならではの身体感覚と空間を目の当たりにするでしょう。

ソファに腰掛けた女性と男性。画面右側にいる人と会話している様子である
管野奈津美《集う空間》2023年

また、視覚身体言語の新たな翻訳やメディア表現を探る実験的プロジェクトであるCreole Projectは、手話におけるメディア表現の可能性を問う作品を展示します。

ワークショップ、演劇、トークイベントも開催

会期中は、ワークショップやトークイベントなど、体験し、共に考える場が多数開かれます。

5月4日(木)13:30/16:30、5月7日(日)13:30の計3回開催されるのはワークショップ「ずれる、ふえる、のこる、からだとことば」(無料、事前申込優先)。表現をずらしたり回転させたり。言語の未来を想像しながら、新たなメディアで遊ぶワークショップです。

牧原依里さんが演出し、舞踏家の雫境(だけい)さんが舞台監督を務める演劇『聴者を演じるということ 序論』は5月5日(金)11:30-12:30/15:30-16:30、5月6日(土)14:30-15:30に上演されます。演じるのは、ろう者役者の數見陽子さんと山田真樹さん。ろう者の身体で演じる聴者に、私たちはどこまで言及することができるのか、また演じる者と演じられる者の関係を超越し、分かち合うことは可能なのかを問いかけます。

出演者の2人がガラスのブロックになった壁の前で立ってこちらを見ている
牧原依里 演劇《聴者を演じるということ 序論》2023年 © Deafbirdproduction Photo by Nobu Tanaka

5月5日(金)18:30-20:00には、牧原依里さんと雫境さんが共同監督し、ろう者の世界の「音楽」を描いたアート・ドキュメンタリー『LISTEN リッスン』の上映と、映画完成に至るまでの経緯や論考などをまとめた書籍「『LISTEN リッスン』のかなたに」の出版記念トークを開催。2016年の映画公開から7年の間に、どのような展開や変化があったかを語ります。

青いジャケットを着た人が、青空をお会いで両手を頭の横で広げて動かしている
雫境・牧原依里《LISTEN リッスン》 2016 58分 © Deafbirdproduction

5月6日(土)11:00〜12:00は、キュレーターと出展作家によるアーティストトーク「視覚で世界を捉える人々の視点」、5月6日(土)16:30〜17:30は、ろう児の言語・認知発達の研究者や手話表現の有識者を迎えたトーク「日常に存在する『〜』の延長上」を開催します。

視覚で世界を捉えることや、多様化したコミュニケーションのあり方について、ろう者の表現を通して多様な視点から問い直すことができる4日間。ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。