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全盲の美術鑑賞者・白鳥建二さん×佐藤麻衣子さんによる『しゃべりながら観る』が発刊。PDF無料ダウンロード可
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書影
冊子『しゃべりながら観る』。紙の手触りや楽しい仕掛けが散りばめられたデザインの装丁・デザインは、矢萩多聞さんによるもの。(撮影:高岡弘)

冊子『しゃべりながら観る』が発刊。PDFで無料ダウンロードも可

2023年3月、全盲の美術鑑賞者・白鳥建二さんと、アートエデュケーターのマイティこと佐藤麻衣子さんによる、「会話型美術鑑賞」を紹介した冊子『しゃべりながら観る』が発刊になりました。

冊子のデータは、発刊元の〈公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京〉が主催する、アートプロジェクトの担い手のためのプラットフォーム〈Tokyo Art Research Lab(TARL)〉のサイトから、全編無料でダウンロードできます(PDFのデザインデータ、読み上げ用テキストデータともに)。

会話型美術鑑賞=しゃべりながら観る、とは?

冊子タイトルにもなっている『しゃべりながら観る』とは、著者である白鳥建二さんと佐藤麻衣子さんが名付けた、会話を中心とした美術鑑賞を指します。

佐藤さんと白鳥さん
左:佐藤麻衣子さん、右:白鳥建二さん(撮影:池田宏)

そもそも、会話型美術鑑賞の面白さに気づいたのは、20年以上前に、全盲の白鳥さんが人と会話しながら美術鑑賞をする独自の活動を始めたことまで遡ります。

「僕は何を観ているのか、何を楽しんでいるのか、不思議に思う人もいるかもしれない。作品を楽しんでいるのもあるけれど、それよりも作品を観た人たちの会話だったり、独自の視点だったり、想定していなかったような方向に話が広がったりすることを楽しんでいます」(『しゃべりながら観る』内「全盲の美術鑑賞って、どういうこと?」より)

年に何十回も日本各地の美術館を訪れるほか、講演や鑑賞会のナビゲーターを務めている白鳥さんは、今回の冊子制作にあたり、会話しながら美術鑑賞をする自身のスタイルを「白鳥流・会話型美術鑑賞」として紹介しています。

アートエデュケーターの佐藤さんは、現在、オランダのアムステルダムで活動しています(佐藤さんの連載「アムステルダムの窓から」はこちら)。白鳥さんとの出会いは、以前〈水戸芸術館現代美術センター〉で教育普及の学芸員として働いていた時でした。白鳥さんと美術鑑賞をすると、「驚きと発見の連続」と佐藤さん。

「白鳥さんと観ると、作品の説明をしないといけないのもあって、じっくりと観ることになります。たとえ以前に観たことがある作品でも、改めてじっくり観ると、新しい発見をしたり、疑問に思うことが出てきたり、まったく別の印象を受けたりします」(『しゃべりながら観る』内、「会話をしながら観ると、驚きと発見の連続です。」より)

こうした二人の活動は、〈こここ〉ニュースで取り上げた、川内有緒さん著・書籍『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』」でも詳しく描かれています。

二人の対話を聴くように作られた冊子

このような白鳥さんと佐藤さんの出会いや、美術鑑賞の思い出、作品を介して時間と場を共有しながらコミュニケーションをとることの面白さなどが、冊子『しゃべりながら観る』では、二人の対話を聴くような形で紹介されています。

冊子の導入部分に当たる、白鳥さんによる「全盲の美術鑑賞って、どういうこと?」からスタートし、白鳥さん佐藤さんそれぞれの視点から、誰かと一緒に美術鑑賞をすることの楽しさが、一人称で交互に語られていきます。

また、巻末には実際に会話型美術鑑賞を行うときのコツや、紙上鑑賞会も掲載しています。

「白鳥流 会話型美術鑑賞のすすめ」では、「情報は最低限で」「好きな作品を観る」「わからなくてもいい」「注意されたら?」など、会話型美術鑑賞をする際の12のポイントを紹介しています。ただし、こちらはあくまで、「白鳥流」の鑑賞方法。「鑑賞の方法は無限にあるしルールもない。自分が観たいように観たらいい」というアドバイスも。

また、紙上鑑賞会では、白鳥さんと佐藤さんが絵や仏像を見て、どのような会話を繰り広げているのかを図版とともに紹介。自由に説明や感想を届けあう様子は、これから初めて会話型美術鑑賞をやってみようかと検討している人にとって、「自由でいいんだ」と参考になるはず!

紙面上の会話型美術鑑賞
ヨハネス・フェルメール作「牛乳を注ぐ女」を例に、紙面上で会話型美術鑑賞をしている

しゃべりながら観るを実践してみては?

白鳥さんと佐藤さんが会話型美術鑑賞でアートを楽しんでいる様子は、今はまだ美術館と距離を感じている人にとっても、前向きな気持ちになれるはずです。

「気軽に会話しながら作品をみてまわったら、もっと楽しいことが起きるよ」と白鳥さん。ぜひ家族や友人と、「しゃべりながら観る」スタイルで、美術館に足を運びませんか。