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「叱る」の限界と依存性について伝える書籍『〈叱る依存〉がとまらない』が発売中。刊行記念オンラインイベントも
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しょせきひょうし
『〈叱る依存〉がとまらない』が、〈紀伊國屋書店〉より発売中です

「叱る」の本質と依存性について書かれた一冊

親が子に、先生が生徒に、上司が部下に……日常のさまざまな場面で目にすることも多い「叱る」という行為。「怒るのは良くないが、叱ることは必要」「叱られた経験がないと弱くなる」などと言われやすい背景には、「叱ることは大いに効果があり、人を育てるには必要なのだ」という思いがあるかもしれません。

こうした「叱る」への捉え方に一石を投じる書籍『〈叱る依存〉がとまらない』が、2022年2月に発売されました。

著者の村中直人さんは本書で、「叱る」という行為の本質を科学の知見に基づいて詳らかにしつつ、その効果が限定的であること、かつ依存性が高いことを示します。そして、そうした「叱る」ことへの依存性=〈叱る依存〉が加速しやすい権力構造に言及しながら、「叱る」の弊害を社会全体で理解し、一人ひとりが依存に陥らないための方法を紐解いています。

科学的知見に基づいた内容を、広く伝える村中直人さん

もともとスクールカウンセラーとして、教育現場にいた臨床心理士・公認心理師の村中直人さん。現在は、発達障害にカテゴライズされることも多いニューロマイノリティ(神経学的に少数派な人)への支援や、「発達障害サポーター’sスクール」での支援者育成を中心に活動されています。著書『ニューロダイバーシティの教科書ーー多様性尊重社会へのキーワード』(金子書房)などを通じて、「脳や神経、それに由来する違いは人それぞれであり、人間の多様性のひとつとして尊重されるべきである」というニューロダイバーシティの考え方の重要性も発信されてきました。

これまでも「専門的な知見を現場につなぐ」という役割を担ってきた村中さん。本書が書かれた背景には、発達障害を理解するために学んだ脳科学や認知科学の知見に加え、自身が関わってきた方々が「叱られる」ことの多い人たちであり、身近なテーマとして「叱る/叱られる」を扱ってきたことがあります。

さまざまなデータから「叱る」には本質的な課題解決につながる効果がほぼないと明らかであるにも関わらず、なぜか最善手であるかのように扱われてしまうーー誤解されやすいその仕組みを解き明かし、一般の方にもわかりやすく伝えたいという思いが、〈叱る依存〉という概念を提案するきっかけとなりました。

ブログトップのがぞう
ブログやSNSなどでも精力的に発信を行う村中さん。この「叱るの依存性と限界について」の記事を〈紀伊國屋書店〉の編集者・塩野綾子さんが目に止めたことが、今回の出版につながりました

効果は限定的で依存性が高い。私たちは「叱る」とどう付き合うか

本書では、「叱る」を「ネガティブな感情体験を与えて相手をコントロールすること」と定義しながら、その行為がはらむ攻撃性と、一方でそれが極めて限られた場面にしか有効でないことを、科学的な裏付けとともに明らかにしていきます。

さらに「叱る」という行為には、状況を定義する権利のある人がない人に対して行う、という「権力の非対称性」があることに注目。構造的な要因と、人の「脳」の特性を絡めながら、「叱る」ことをやめられなくなる〈叱る依存〉になぜ人々が陥っていくのか、社会の中でなぜ「叱る」が過度に評価されているかを説明します。

また、村中さんは私たちの周りにある問題の多くが、そうした〈叱る依存〉と切っても切り離せない関係にあるといいます。たとえば児童虐待や体罰、DV(ドメスティック・バイオレンス)、ハラスメント、理不尽な校則、SNSでのバッシングなど。これらを社会全体の問題として見つめ、〈叱る依存〉を予防していく発想や、自らの思う「正しさ」を疑ってみる姿勢が重要であるとメッセージを送り、「叱る」とうまく付き合う方法を伝えていきます。

子育て中や教育に関わる人はもちろん、誰かを「叱る」可能性があるすべての人にとって考えさせられる一冊です。

“「普通」「常識」「当たり前」などの言葉で自らの責任をごまかしてしまうのではなく、堂々と自分を主語にして語ることが大切です。そして叱る人が自分を主語に語り始めると、もう一つの主語の世界が浮かび上がってきます。それは「叱られる人」が主人公の世界です。当然ですが、叱られる人にも本人が望む未来や、ありたい姿が存在しています。しかしながら、〈叱る依存〉状況ではそれらが完全に無視され、軽く扱われることが多いのです 。”

(p.175より引用)

本書の刊行を記念したオンラインイベントが開催

本書の刊行を記念したトークイベントが、2022年3月16日(水)にオンラインで開催されます。著者の村中直人さんが、薬物依存を中心とした依存症の治療・研究で知られる精神科医の松本俊彦さんと共に、〈叱る依存〉を防ぐためのヒントを語る予定です。

しょせきひょうし
松本俊彦さんは、『〈叱る依存〉がとまらない』の帯にもコメントを寄せています

村中さんが本書の企画・執筆する際に影響を受けた、という松本さんですが、お二人が顔を合わせるのは今回が初めて。参加者にとっては、専門家の話から〈叱る依存〉について一歩深めて考えることができる、貴重な機会となりそうです。

イベントはリアルタイムで配信されるほか、期間限定でアーカイブ視聴も可能。「叱る」にひそむ依存性を回避し、周囲とお互いに尊重しあえる関係をつくるには、まずは私たちが「叱る」を理解するところから。ぜひ本書を手にとり、二人の話に耳を澄ませてみませんか。

Information

書籍『〈叱る依存〉がとまらない』

著者:村中直人
発行所:紀伊國屋書店
発売日:2022年2月4日
四六判/205ページ
定価:1760円(本体1600円)

【目次】
はじめに
Part 1 「叱る」とはなにか
1 なぜ人は「叱る」のか?
2 「叱る」の科学――内側のメカニズムに目を向ける

Part 2 「叱る」に依存する
3 叱らずにいられなくなる人たち
4 「叱らずにいられない」は依存症に似ている
5 虐待・DV・ハラスメントとのあいだにある低くて薄い壁

Part 3 〈叱る依存〉は社会の病
6 なぜ厳罰主義は根強く支持されるのか?
7 「理不尽に耐える」は美徳なのか?
8 過ちからの立ち直りが許されないのはなぜか?

Part 4 〈叱る依存〉におちいらないために
9 「叱る」を手放す

あとがき/〈叱る依存〉をより深く考えるためのブックリスト/注

Web: 紀伊國屋書店

『〈叱る依存〉がとまらない』(紀伊國屋書店)刊行記念オンラインイベント 
著者:村中直人さん ゲスト:松本俊彦さん

日時:2022年3月16日(水)19:00〜20:30(予定)
会場:Zoom(オンライン)
※申込者に登録用リンクをメールで連絡
※期間限定でアーカイブ配信もあり(申込者にイベント終了後メールで案内予定)

【参加費】
視聴チケット:1000円
書籍付きチケット:3000円(書籍代1760円+チケット代540円+送料700円)
※書籍は受注後随時発送。配送先は国内のみ
※書籍付きチケットは100枚限定。定員に達し次第締切

【申込方法】
2022年3月16日(水)18:00までにPeatixサイトよりチケットをご購入ください。

イベント詳細:紀伊國屋書店 チケット申し込み:Peatixより

書籍の内容に関するお問合せ:紀伊國屋書店 出版部
03-6910-0508
publish@kinokuniya.co.jp