福祉をたずねるクリエイティブマガジン〈こここ〉

福祉のしごとにん ― 働く人のまなざし・創造性をたずねて インタビューシリーズ

地域福祉、障害福祉、高齢福祉、児童福祉、社会福祉、医療的福祉、社会的更生、マイノリティ支援、居場所づくりなど、福祉の現場で働く、支援職やソーシャルワーカーなどの「しごとにん(仕事人)」にインタビューするシリーズ。

誰かの暮らしや身体に向き合う「福祉の仕事」。それぞれどのようなもので、どんな人が働いているのでしょうか? 福祉の現場で働く人が持つまなざしや、創造性、働きながら感じる魅力や課題について伺います。

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記事一覧

vol.062023.08.30“見過ごされやすい”若者たちと出会うこと、声から社会を動かすこと——〈認定NPO法人D×P〉COO・入谷佐知さん

「学費が支払えずに退学になりそうです」 「家族の介護に疲れて鬱を発症しました」 今にも消えてしまいそうな、一縷の望みを託した若者の声。全国各地から届くそれらの声に、10年以上に渡って寄り添い続けてきた団体がある。「ユース世代に、セーフティネットと機会提供を」をミッションに掲げる、〈認定NPO法人D×P〉だ。 オンラインで進路や就職の相談に乗る「ユキサキチャット」、繁華街にセーフティネットとなる場所をつくる「街中アウトリーチ事業」など、〈D×P〉は若者の声に耳を傾けながら、いくつも事業を生み出してきた。 柔軟な活動を支えるのは、個人や法人からの寄付金だ。 〈D×P〉の「活動報告書2022-23」を見ると、2023年3月末時点でのマンスリーサポーターは2843名。年間の寄付収入は1億7416万円と、法人の経常収益の9割以上を寄付で賄っていることがわかる。 今やNPO法人の寄付収入のモデルケースとして語られることも増えた、〈D×P〉のファンドレイジング。それを立ち上げ時から裏側で支えてきたのが、理事でありディレクター/COOの入谷佐知さんだった。 およそ10年前、広報の担当者として〈D×P〉に入職した入谷さんは、もともとコンサルティングの仕事をしていたという。彼女は、なぜ若者支援の世界へきて、何を大切にしながらユース世代の声に向き合ってきたのか。見過ごされやすい困難の実情をどのように社会に訴え、さまざまな人に応援してもらえるNPOをつくり上げていったのだろうか。 例年よりも早い梅雨入りを迎えた頃、オフィスのある大阪・天満橋でお会いした。

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vol.052023.06.28環境設計から見直し「わたしが居たい」と思える介護施設を。株式会社ゆず・川原奨二さんのまなざし

「介護」という言葉について、日頃、遠く感じてしまう自分がいる。 祖父が癌になったとき、パートナーのお父さんが倒れたとき。今までの人生で「介護」が身近になったのは、どちらも「自分の大切な人が当事者になったとき」だった。 そしてこれは私だけではなく、きっと、多くの人に当てはまることなのではないだろうか。自分自身が歳を取ったり、大切な人に介護が必要になって、はじめて「介護」について考える機会を得る。 ほとんどすべての人にとって、いつかは必ず必要になること。なのに世の中には、「介護」に触れ、想像できる機会があまりにも少ない。 「介護が遠い。それが、人々が介護に対して持つイメージが画一的になってしまう理由だと思います」 まさにそのことに課題感を持ち、福祉・介護領域でさまざまな取り組みを続けるのが、株式会社ゆずの代表、川原奨二さんだ。 多数の介護施設を運営するほか、「尾道のおばあちゃんとわたくしホテル」という、介護施設に隣接したホテルを作ったり、「みそのっこ」という、学生のシェアハウスと高齢者の暮らしが一体化した住居を作ったり……。 介護業界が、もっと身近に感じられ、多様な在り方であふれるように。何歳になっても、いきいきと個性を大切にしながら生きられる場所が増えるように。そんな思いで活動されている川原さんに、介護に対する考えや、現在の取り組みについてお話を伺った。

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vol.042022.11.28「なんでやろ?」から、領域・世代をまたぐ事業を福祉でつくり続ける——〈み・らいず2〉枡谷礼路さん

「福祉」と聞くと、私は障害者福祉や高齢者福祉を真っ先に思い浮かべる。でも、そもそも「福祉」は「しあわせ」や「ゆたかさ」を意味する言葉だ。すべての人に幸福を追求できるだけの社会的援助を提供する、という理念を表しているはずなのに、どうして特定の分野や対象に偏った印象を自分は持ってしまっているのだろう。 大阪を拠点に活動する〈NPO法人み・らいず2〉理事の枡谷礼路(ますたに あやじ)さんにお話を伺っていると、そんな疑問が湧いてきた。 「社会的な機能は分けても、居場所は分けたくない」と枡谷さん。その言葉からは、“障害は社会がつくるもの”という考えのもと、知的障害や発達障害のある人たちへのサポート、不登校やひきこもりなどの状態にある子ども・若者たちの支援や居場所づくりなど、目の前の人に必要と思う事業をつくってきたきた〈み・らいず2〉の信念を感じた。多様な状況、多様な世代の利用者やスタッフと向き合う日々の中で、枡谷さんは何を見て、何を感じてきたのだろうか。

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vol.032022.02.15「所得」だけではなく「可能性」も分かち合う。障害のある人とともに仕事をつくる〈Good Job!センター香芝〉センター長・森下静香さんの仕事

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vol.022022.02.07目の前にいる人を大切しながら、ここにいない人へのまなざしを忘れない。社会福祉法人〈ライフの学校〉 村松直美さん・菅原篤人さんの仕事

「老人ホームかあ……そういえば行ったことないな」 「中学生のとき、夏休みの宿題の介護体験で一回だけ入ったことある」 自分の祖母が通っていたデイサービスのことや、取材で訪れた福祉施設のことを周囲の友人に話すと、そんなリアクションがしばしば返ってくる。 なかには、家族が老人ホームに入居していた経験があったり、実際にいま施設を利用しているという人もいる。けれど、多くの若い世代にとって、福祉施設は接点のない場所になりがちなのだな、ということをそのたびに痛感する。 もちろん、福祉施設になじみがない、ということ自体は悪いわけではない。福祉施設は主に利用者とその家族のための場所であり、家族や親しい人に介護・介助を必要としている人がいない限り、その輪のなかに自分から入っていこうとするのはたぶん、難しいはずだ。 だからこそ、社会福祉法人「ライフの学校」の理事長・田中伸弥さんにお話を聞いたときはとても驚いた。田中さんの運営するライフの学校は宮城県仙台市で特別養護老人ホームをはじめとする複数の施設を展開しており、そのすべてに共通するコンセプトとして、“福祉施設を地域にひらいていく”ことを掲げている。 「『えっ、誰あの人?』と思うような人が、ごく自然にそこに居られる環境」が施設にとっての理想だと語る田中さんの言葉を聞いて、実際にライフの学校に滞在し、一緒に時間を過ごしてみたくなった。 福祉施設や福祉サービスの現場で働く人に焦点を当てたインタビューシリーズ「福祉のしごとにん」。今回は、そんなライフの学校の拠点のひとつである仙台市の「萩の風キャンパス」を訪れ、現場で実際に働く村松直美さんと施設長の菅原篤人さんにお話を伺った。

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vol.012021.04.15「何者か」を問うて、子どものやりたいことを育む。放課後等デイサービス〈ホハル〉滝沢達史さんの仕事

「あなたは何者ですか?」 この質問にさらりと答えられる人は、どれだけいるでしょう。学校教育では「生きる力」を育てるためのカリキュラムが組まれ、“自分の旗を立てること”や“好きを仕事にする生き方”が重視される時代になりました。 しかし、みんながみんな「何者か」である自分に出会えているわけではないようです。 福祉施設や福祉サービスの現場で働く人に焦点を当てたインタビューシリーズ「福祉のしごとにん」。今回は、岡山県倉敷市にある放課後等デイサービス「ホハル」の代表であり、アーティストでもある、滝沢達史さんをご紹介します。 そこで出会ったのは、自分が何を好きで何をしたいのか、日々向き合って全力で表現している子ども達。どのような環境や大人の関わりが、自分が「何者か」を知っている子ども達を育んでいるのでしょうか。放課後のホハルを訪れました。

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