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障害のある人たちの芸術運動を牽引してきた「エイブル・アート・ムーブメント」30周年記念フォーラムが11月28〜30日京都で開催
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障害のある人たちの芸術運動「エイブル・アート・ムーブメント」が30周年に

誰もが当たり前に表現できる社会は、どこまで実現しているでしょうか。障害の有無に縛られることなく、誰もが芸術を楽しめるようにしたいとの思いから芸術の社会化を目指し、1995年に芸術運動「エイブル・アート・ムーブメント」が始まりました。「エイブル・アート」は、障害のある人の芸術だと思われがちですが、実はそうではありません。障害の有無に限らず、アートの可能性や人間の可能性を再発見することこそが、エイブル・アート・ムーブメントなのです。

2025年、エイブル・アート・ムーブメントは30周年を迎えます。記念すべき節目として「エイブル・アート・ムーブメント30周年記念フォーラム」が、2025年11月28日(金)〜2025年11月30日(日)に京都市京セラ美術館にて開催されます。

期間中は、フォーラム(講演)、展示、交流プログラムなどが展開。全国から登壇者や参加者が集い、3日間にわたるフォーラムでは、表現や共生、デザイン、コミュニティといったテーマを軸に、アートと福祉のこれまでとこれからを語り合う場が開かれます。

「できる」を起点に、社会の見方を変える

エイブル・アート・ムーブメントは、1995年に奈良県を拠点とする〈一般財団法人たんぽぽの家〉によって提唱された市民芸術運動です。現在は〈一般財団法人たんぽぽの家〉と、ネットワーク組織である〈NPO法人エイブル・アート・ジャパン〉が中心となり、国内外の個人や団体と連携し、さまざまなプロジェクトを進めています。

運動の原点となっているのは、「障害者アート」の見方を広げたいという思いでした。活動をはじめた当時、障害のある人の表現は福祉の延長線上で扱われることが多く、アートそのものの価値や可能性については十分に語られていませんでした。そうした状況に向き合い、「エイブル(able)=できる」という言葉には、障害のある人たちのアートを「可能性の芸術」としてとらえると同時に、障害の有無に関わらず、アートを起点にすべての人の可能性を信じる、という意味が込められています。

エイブル・アート・ムーブメントは30年にわたり、多様な活動を展開してきました。例えば、障害のあるアーティストがつくりあげた作品や商品を社会に流通させる「エイブルアート・カンパニー」では、これまでに書籍の表紙やファッション雑貨、バスや車といった乗り物へのラッピングなど、さまざまに展開してきました。

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障害のある人が描きおろした作品のラッピングカー(トヨタ自動車)
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ショーウィンドウのアートデコレーション(京都高島屋)

演劇・音楽・ダンスなどの「パフォーミングアーツ」の分野では、障害のある人を含む多様な人たちと新しい舞台をつくりあげ、作品として発表してきました。また、アートを街に広げる実験的なプロジェクトとして近畿労働金庫と「エイブル・アート近畿〈ひと・アート・まち〉」を2000年からスタートし、2006年には企業メセナ協議会主催「メセナアワード2006」にて文化庁長官賞を受賞しました。

【画像】舞台上での発表の様子
多様な演者とともに舞台作品をつくり、発表(明治安田生命社会貢献プログラム「エイブルアート・オンステージ」)
【画像】屋外でのパフォーマンスの様子
アートプロジェクト「ひと・アート・まち」

その他、NFTアートと福祉の可能性を探るハンドブック制作や、アートにまつわるワークショップ、ドキュメンタリー映像上映会など、地域やテーマごとにさまざまな活動を展開してきました。本イベントの展示では、これまでの活動を映像や資料とともに振り返るだけでなく、これからを見通す12の視点や現在進行中のプロジェクトも紹介します。

 エイブル・アート・ムーブメントがつないできた、30年の実践と広がり

3日間にわたり行われるフォーラムでは、これまでの歩みや取り組みの背景を振り返りながら、未来のまなざしを語り合います。

フォーラムは各日1つのテーマを設け、期間中に全7セッションが行われます。アーティストや研究者、有識者など25名を超える方々が登壇。1日目のテーマは、「コミュニティと文化」。セッション1「企業とNPOでつくる市民社会」では、トヨタ自動車や日本マクドナルドなどからビジネスパーソンが登壇し、続くセッション2「場と営みからはじまるもの」では、建築家の大西麻貴さんらが講演を行います。

2日目は「豊かに生きるための技術」をテーマに、表現、ケア、テクノロジーの関係を探ります。セッション3「『傾き』に魅入られる私たち」では、編集者の白石正明さんらが登壇し、セッション4「表現とケアとテクノロジーのこれから」には、デザインエンジニアをはじめ、メディアアーティストや作業療法士などが、それぞれの視点を交わします。

3日目のテーマは、「参加のデザイン」。セッション5「舞台の先にある社会」には、ダンサーであり、俳優の森田かずよさんらがトークを行い、続くセッション6は「よきデザインの現在と未来」、最後のセッション7では「法の余白とルールメイキング」について議論を展開する予定です。

会場内の「光の広間」では、エイブル・アート・ムーブメントの30年を振り返り、未来を考える展示と交流プログラムが展開されます。展示では、芸術文化へのアクセス向上、地域アウトリーチ、福祉施設の新たな形、災害復興支援など、国内外の多様な取り組みを資料や映像、ポスターで紹介。交流プログラムも充実しており、ゲストによるトークや上映会が行われます。

さらに初日となる11月28日(金)の18時30分からは、講演の登壇者や参加者同士が交流できる交流会を予定しています。気になる方は、ぜひ参加してみてください。

 “表現”や“アート”の社会浸透を目指して

「エイブル・アート・ムーブメント30周年記念フォーラム」は誰もが安心して参加できるよう、充実した情報保障とアクセシビリティへの配慮がなされています。会場には手話通訳、文字による情報保障、案内ボランティア、筆談ボードが設置され、盲導犬・介助犬・聴導犬の同伴も可能です。多目的トイレ、授乳室、オストメイト対応設備、救護室も完備されています。

展示は誰でも自由に参加できますが、フォーラム(講演)と交流会の参加には事前申し込みが必要で、定員80名までとなっています。

フォーラムの3日間は、過去を振り返るだけでなく、これからの社会を描くための対話の時間でもあります。アートが社会に浸透し、福祉や日常の風景と溶け合っていく。そんな未来のために、エイブル・アート・ムーブメントの30年を、一緒に見つめ直してみませんか。