「いちゃダメと言われない場所を探して」―妄想恋愛詩人・ムラキングと「居場所」をめぐる話 ポロリとひとこと|妄想恋愛詩人 ムラキング vol.03
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なんだか落ち着く、ついつい通っちゃう、気づけば常連だったーー。この記事を読んでいるあなたに「居場所」と呼べるところはありますか? あるいは、日頃からそういった場所を探していますか?
妄想恋愛詩人・ムラキングの連載「ポロリとひとこと」。第2回のテーマは「居場所」です。「常に『居場所』を探している」というムラキングさん。打ち合わせでもしばしば出てくるのが「居場所」というキーワードでした。かたや、福祉をたずねるクリエイティブマガジン〈こここ〉でも、この「居場所」という言葉がよく出てきています。もしかしたら「居てもいい場所」は、“みんなの福祉=幸福”と深い関わりがあるのかもしれません。なんで居場所が必要なんだろう? どんな場所が居場所と呼べるのだろう?
そんなことをゆるやかに考えてみるべく、今回もムラキングさんが生活する静岡県浜松市にお邪魔しました。ファミレス、漫画喫茶、公共施設、フリースペース……ムラキングさんが居場所にしている場所を実際に一巡りしてから、コミュニティスペース「黒板とキッチン」に腰を落ち着けておしゃべりしました。
季節はまだ冬のことでした。冷たい雨で冷え切った身体をさすりながら。(こここ編集部・中田)
連載「ポロリとひとこと」とは?
「初キスはお昼ご飯の味でした」「全部中途半端」「添加物まみれのこの体」など、笑いと悲哀が詰まった「たまに名言」シリーズをはじめ、妄想恋愛をテーマにした詩や小説など、ことばを通じた表現活動をされている“妄想恋愛詩人”ムラキングさんの連載企画。ムラキングさんが通っている認定NPO法人クリエイティブサポートレッツのスタッフ・水越さんや、こここ編集部メンバーも交えておしゃべりしつつ、詩のワークショップを誌上で重ねていくシリーズです。ゆっくり更新していきます。
登場人物紹介
ムラキング: 1981年生まれ。高校生ぐらいから詩を書く。即興で詩を書くのが得意。認定NPO法人クリエイティブサポートレッツの就労継続支援B型を利用している。統合失調症。自信がなく、ときどき不安でいっぱいになることもあるが、興味のあることに対しては分野関係なく、まずは手をつけてみたいタイプ。気になるゲームは「NeiR」シリーズ。最近は五十肩がガタガタ。
水越雅人:認定NPO法人クリエイティブサポートレッツのスタッフ。障害のある人の活動・居場所・仕事づくりをサポートする就労継続支援B型事業担当。同い年のムラキングと出会って10年。ムラキングにツッコミを入れる担当でもある。たまに喧嘩したりしながらも一緒に活動している。自分に合ったカバンを探しているが、まだ見つからない。ムラキングと同じぐらい片付けができない。
大東 翼:建築家、アクティビティーデザイナー。建築家として活動していながらオルタナティブスペース「黒板とキッチン」の運営責任者。「人」と「場」の関係が主な関心事。日々、多くのスタッフや来てくれる人達から元気をもらっている。最近は子供の影響でオカメインコを飼い始め、鳥に興味を持ってきたが猛禽類はネズミが苦手なので諦めた。
中田一会:こここ編集長。前回の記事をつくる際、ムラキングから「原稿待ちの期間が不安になる」と言われてハッとし、連載チーム全員でオンライン会議を定期的にするようになった。その会議(ほぼ雑談)も面白いので記事にできないものかと下心を抱いている。私生活では去年から飼いはじめた猫に振り回されっぱなし。好物は卵とチーズと珈琲牛乳。
岩中可南子:こここ編集部メンバー。東京の東のはじっこ在住。ムラキングと生年月日が同じ。連載チームメンバーに、ムラキングと合同で誕生日を祝ってもらったのが最近嬉しかったこと。趣味は渋い酒場めぐり。
居場所=いちゃダメと言われない場所
「今回のテーマは『居場所』です。ここ、コミュニティスペース『黒板とキッチン』の運営責任者である大東翼さんも一緒に、皆でおしゃべりしてみようと思います」
「よろしくおねがいします」
「居場所を『いてもいいよと言われる場所』『いたい場所』ではなく『いちゃダメだと言われない場所』と捉えて、それを探してるんじゃないかなと言っているメンバーがいて。それってムラキングにも当てはまるんじゃないかなと僕は思いました。興味深い心持ちだな、と。
みんなが認めてくれるような関係性は誰でもつくりにくいものだし、相手に『いていいですか?』と許可を求めることは承認欲求に近くて、その場に縛られすぎてしまうと感じるので」
「なるほど。『居場所=いちゃダメと言われない場所』という解釈はおもしろいですね。今日ムラキングさんが私達を連れていってくれた居場所は、その塩梅としてはどうですか?」
「コロナ禍で、公共施設を含め感染対策を理由に、どんどん居られる場所が減っている感じがします。そのなかで、どれだけ自分がいられる場所を増やしていけるかなと思っていて。
それもあって、自分がいられる場所は、結果的にお金が必要なところです。たとえば、僕が毎日行くデニーズみたいな場所は、お金さえ払っていれば、『いていいよ』っていうところじゃないですか。そういう前提が決められている場所なら、『それだけ払いますから、ちゃんといさせてくださいね』って思える。安心できる。
お金がかからない公共空間とかフリースペースは意外と人がいっぱいいて、居心地悪いなと思っても、『じゃあ今日のところは僕が帰って寝てますよ』をやらなきゃいけないんだろうなと」
デニーズにいたくて洗濯機を買った
「お金を払えば安心していられるからデニーズが好き、と。なるほど。今日一緒にうかがって、店員さんにもしっかり覚えられていましたもんね」
「あ、でも、昔、服を何日も洗わないでデニーズへ行って『におうので……』って断られたことがあって。それで渋々洗濯機を買いました」
「デニーズにいたくて洗濯機を!」
「皆さん、どんどんムラキングに突っ込んでくださいね」
「こまめに洗濯するようになったらデニーズに長くいられるようになったんですよ」
「におわないから『いちゃダメ』とは言われないんですね」
「デニーズさんがそのときのムラキングに断りを入れたのは、まっとうなことだと僕は思います」
「そうですね」
「はじめに『お金さえ払えば居場所はある』ってムラキングさんは言っていたけど、実はそれ以外にも条件があるんですね。食事をする場所だから、他のお客さんの求めないものを持ち込まないとか、強いにおいに気を付けるとか。それを暗に理解しながら私も日々服を洗ったり、お風呂に入っているんだな、と気づきました」
「何かを言われないようにしなきゃな、とはすごく思います。でも、なんだろう、それでも行きたい理由がそこにあるんですよね」
「とりあえず免罪符を買うみたいに『居場所にお金を払う』のは、安心するんだよね。その塩梅を探るために、すみっこにいたり、何事もざわつかせず環境と化すっていう“居方”(いかた)がムラキングは巧いよなあ」
居場所は結局、ほかの人の居場所でもある
「僕が運営しているオルタナティヴスペース『黒板とキッチン』にはよく大学生がやってくるんですが、彼らがキラキラした雰囲気を醸し出すと、ムラキングはすっとこの場から出ていくんですよ」
「居心地、悪くなって」
「居場所は結局、ほかの人の居場所でもあるしね。ムラキングだけのものじゃない。そこが難しいところで。でも過去にムラキングから、デニーズは、独りじゃなくて喋り声が聞こえてくるのがいいと聞いたことがあるけど?」
「完全なひとりぼっちは嫌なんです。デニーズの雑談は大丈夫。けど、それこそ、キラキラ的なものは排除したい」
「キラキラした会話じゃなければ、ムラキングは大学生4、5人が側で会話していても、普通に座っているんですよ。だけどそのグループがキラキラしだすと、ムリ」
「キラキラってなんだろう。青春のきらめき?」
「それは俺も改めて聞きたいなあ」
「――あきらかに、楽しそうな感じ」
「なるほど!」
「そういうことか!」
「スペースの運営スタッフの若い人と話すのは楽しかったんですけど、集まっている大学生は少し違って。『僕がここにいたら迷惑になるだろうから帰ろうか』って思っちゃう」
「楽しそうだし、幸せそうだし」
「キラキラ」に抗う方法がない
「ムラキングはさ、『明らかに』楽しそうというのがだめなんじゃない? そこに集まる大学生が持つ『ポジティブ』とか『チャレンジ』の感じが場の空気をつくっていて。駄目でもいい感じとかギャグとか隙間がなくて、同じ温度じゃないと入れない感じがするっていうか」
「『入っちゃいけないな、ここにいたら多分俺、話題のネタにされちゃうんじゃないか』って思って、違う居場所に移動するようにしています」
「レッツのメンバーで『黒板とキッチン』の金曜日の店番をしているんですが、これもその入りづらい空気のなかに『ポジティブでもチャレンジしてなくてもいいよ』という感じを挿入しようとはしているね。でも決してすべての大学生がだめなわけではないよね?」
「はい、一対一とかであれば話せるんですよ。集団になったときがちょっと苦手。僕が何かするときにキラキラした大学生グループがいるのがだめなんです。自分が手にできないものがあるから」
「キラキラに抗う方法がムラキングにはないんで。HP(ヒットポイント)、2ぐらいなんで」
「MP(マジックポイント)もないです」
「ムラキングに限らず一人だと部外者って感じになっちゃうのかな」
「でも、大学生の輪に平気で入っていくおじさんもいるんですよ。うらやましいなって思っていて」
「それでその人のことが憎くなるんです、ムラキングは」
「コミュ力の塊みたいで……」
「あはは!」
「あはは!」
「ちなみに、デニーズはキラキラしない場所なんですか? マクドナルドだとどう?」
「マクドナルドはなんだかソワソワするんです。例えば店内で、自分より先に来ている人が同じくらい滞在してくれればいいんですけど、その人たちがいなくなったら『そろそろ帰らないとなにか言われるんじゃないか』と思ってしまう」
「周りの人たちの『こうなんじゃないか』が心の中で同時に立ち上がるんですね。優しいと思います、ムラキングさんは。私もお店に一人でいるとき、自分が場違いなんじゃないかとか、店員さんに長くいすぎだと睨まれてないだろうかとか実は気になっています。ちょっとわかるかもしれない」
ベストオブ居場所の条件って?
「ちなみに、ムラキングの思い描く、ベストな居場所の条件ってなんなの?」
「ベストオブ居場所かあ」
「お金がかからなくて、静かで……」
「でも人の存在は感じたい」
「Wi-fiは?」
「最悪なくても大丈夫」
「電源も?」
「電源はないと困る。電源を独り占めしちゃう人がいる場所とかも困ります。スマホをテザリングにつなぐから。あとは最悪、水があれば……」
「ベストオブ居場所の話だから、最悪の想定じゃなくていいですよ」
「そうだったそうだった。改めてベスト・オブ居場所は?」
「家」
「そうか。でも体調によるよね、きっと。家が嫌な日もあるでしょ? いられなくてデニーズ行ったり」
「コロナ禍になってからはデニーズも20時までだったりするから。そしたらあとは家」
「やっぱりデニーズの次かぁ。デニーズがベストなんだね。デニーズのよさって?」
「そこまでワチャワチャしない感じがする。ご飯食べられるし、詩を書いたり作業しやすい。家だとテーブルが小さいし、椅子もない」
「人の気配がするとか?」
「それもありますね。下手すると朝昼晩と3回行く」
「すごい」
「めっちゃ行ってますね!」
「マニュアル化されているのがいいんですよ。いちいち初めての店員に緊張しなくてすむから」
「デニーズだったらどこでもいい?」
「うん。デニーズだったらどこでも安心して行ける」
「デニーズへの信頼、厚いですね」
二重丸な居場所より、バツじゃない居場所
「僕、ムラキングは『居場所ハンター』だなと思っていて。よくアンテナを伸ばしていて自分で居場所探しにチャレンジしている。でも正直、僕自身『居場所づくり』をサポートする仕事はしているものの、自分の生活上は意識して考えたことがないテーマだったんです」
「居場所について気になっている人と、居場所について考えずとも大丈夫な人は分かれそうですね」
「ムラキングや他の人の声を聞いて『あ、こういう場所がいいんだな』とはなるけど、自分自身についてはわからないですね。ムラキングはその道の大家なので彼の感覚や言葉を聞きながら、もしかしたら居場所って個別に分解していくと決して場所だけじゃない『在り方』も関係しているのかなって妄想してます」
「在り方」
「以前、レッツの利用者が気軽に行ける場所が増えるといいなと思って、とある浜松のカフェとスタッフ側で、ドリンクの値段をレッツ利用者には安くできないかと交渉したことがあって。でも最終的には、それを利用した精神障害のあるメンバーから『正規の値段を自分で払いたい』って意見が出て」
「『居場所としているための値段』みたいな話をしましたね」
「そのとき、かえって居場所にしにくくしてしまったのかもしれないって気づいて。ちゃんと払いたいという気持ちが、僕が思うよりも皆にあったから、もうちょっと相談すればよかったと反省しました。でもやってみてよかったです。
だからレッツのスタッフとして『居場所づくり』にどこまで関与するべきなのか、そういうバランスをもう少し考えたくて。うーん、モヤモヤするなあ。でも正直、『こんな場所がほしい』『あんな場所がほしい』というニーズばっかり聞いても、よくない気もして。うん、すごくよくない感じがする」
「それってどういうことですか?」
「みんなが欲する居場所は、抽象的で感情的なことも多いんですよね。ないものについて語るより、ある程度のフレームのなかで自治としてやるほうが自由度も高まる気がする。あとはやっぱり利用者のみんなも自分で適度にサバイバルしていってほしい、と思うので」
「そうなってくるとレッツが運営している『のヴァ公民館』は?」
※注 のヴァ公民館:NPO法人クリエイティブサポートレッツが運営する障害のある人、ない人、さまざまな人たちが利用できる私設の公民館。>公式ウェブサイト
「のヴァ公民館も、誰かの居場所になっているときは誰かの居場所になっていないときも絶対にある。たとえば、Aさんが入ってきただけで、その前までの雰囲気が壊れるというか、劇的に変わっちゃう瞬間がある。完璧な居場所ってないんじゃないかなと。
だからやっぱり『理想的で二重丸な居場所』より『バツじゃない居場所』のほうが現実的だと思うんです、心の持ち方としては。そのなかでお互い一緒にいることってなんだろうな、っていうのは思いますね」
くだらない企画がすごく大事
「『黒板とキッチン』を運営している大東さんとしてはどう思いますか?」
「『バツじゃない居場所』、まさにそうだなって。僕のなかで一番、この空間が持つ意味で重要なのは、お金がかからないってこと。僕たちの存在が、金銭で絡め取られていくことへの抵抗感がすごくあって、『黒板とキッチン』はとにかくフリー、0円でいられることが大事なんです。
ただ、居場所を作るうえで、特定の人だけが出入りしていると、どんどんマニアックになっていく。かといって、ただ外に開いていくことだけを意識しても意味がない。そのなかで熟成されていく人間関係も、それを一度解きほぐしてくれる第三者が現れることも、両方のバランスが必要」
「そのために、どんなことをしていますか?」
「スタッフには、ちゃんとした企画を打たなくていいと伝えています。適当に思いついたことをやればいい。実際に、ある人の『衣替えをしたい』というアイデアが地域を巻き込むガラクタ市に発展したりするんですよ、くだらない企画はすごく大事なことです」
「おもしろいですね、ガラクタ市」
「『くだらない』が大事なのはすごくわかります。人とちゃんと喋らなきゃいけないことって、結構きつくて。喋るのが苦手な人も多いし。ムラキングもおしゃべりの輪に入れないのが嫌で、つまはじきを感じるタイプだよね?」
「そうなんですよ。そういうのがしんどくてキラキラした会話の横にいられない感じ」
「今、言葉でコミュニケーションしなきゃみたいな空気がすごい高まっている。だから、そういうよくわからないミッションをとりあえずやってみて、何が起こるかわからないことも一緒に経験する時間は、過ごし方としても大事なのかも」
“家族感”を感じたくて、デニーズへ
「〈こここ〉編集部の皆さんにとって、思い入れのある居場所はありますか?」
「私は昨年末から2ヵ月ほど、関東にある自分の家を離れて、両親と祖母が暮らす四国の一軒家で生活していたんです。つまりは居候。それで、『いるための対価』が家族でも必要だってことに気づきました。ちょっとした家事をやるとか、家の生業を手伝うとか、それぞれの立場を尊重して会話をするとか、出された食事にちゃんとリアクションするとか。
居候って、家のなかでの役割が明確じゃないから、なにか渡せるものとか果たせる仕事はないかなってよく考えています。それが悪いことなのかというと、そうでもなくて。ムラキングさんがお金を払えばいられるデニーズが居心地いいと感じるのと同じで、手伝うことがあると居心地がいいんですよね」
「岩中さんは?」
「つい最近も、ひとりで居酒屋に行ったんですよ。〈こここ〉の撮影の帰り道でした。いろんな情報がわーって入ってきて、そのまま家に帰れなくて、どこかで落ち着きたくなると一人で飲み屋に入っちゃう」
「わかる。僕もそれです。アルス・ノヴァに行った後ってそのまま帰れないんですよ。なんか掻き乱されるんですよ。アルス・ノヴァは場所として動いているというか、毎日なにかがちがって。家帰ってもやもやを抱えたままだと暗い詩を書いちゃうんで。外に出て“家族感”を感じたくて、それでデニーズへ」
※注 アルス・ノヴァ:NPO法人クリエイティブサポートレッツが運営する障害福祉サービス事業所。生活介護、就労支援B型、放課後等デイサービスなどの福祉サービスを2拠点で展開している。 >公式ウェブサイト
「家族感!」
「家族感!」
「コメダ珈琲は“学生感”があるんですよ。罰ゲームとか大声でやっていたりして」
「近所のコメダは、学生多いからね」
「雰囲気に合わせて使い分けたりしますよね。仕事で集中したいときは、あのカフェに行こうとか」
「岩中さん、一人飲みはどんな居酒屋いくんですか?」
「昨日は有楽町のガード下。人があまりいなくて、一品が500円ぐらいでちょこちょこ食べられそうな感じ。あと、外から見て、一人で飲んでる人がいるお店を選んでます」
「それってなんでですか? 寂しい気持ちになったりしません?」
「そうですねときどき寂しい気持ちになることもありますね。結婚しても家族が増えても、結局、一人だなと思うときはいつまでもあるんだと思う。そういうのを抱えながら、一人で飲んでる人の中で一人飲みするのは好きだったりします」
「僕も居酒屋へ行きたいんだけど、居酒屋って作業する人いないじゃないですか。一回、眠くてすき家で寝て、怒られたことがあって。コメダも睡眠をとろうとしたら怒られた。店員の大学生に……。結果、コメダも大学生が多いんですよ」
「大学生、だいぶ苦手ですね(笑)」
「ムラキングにとって大学生が何かの象徴な気がする。他の言葉に置き換えられるんじゃないの? そういえば5年ぐらい前まで、ムラキングは大学に行きたがっていたよね。僕はその、愛憎まじりの理由が気になる。大学生みんながキラキラしているわけじゃないと思うよ」
「水越さんて面談するとそういうこと言ってくれますよね」
「え、そんな話したことないと思う」
「え、してますよ」
「してない」
「どっち?」
「いつもこんな感じなんです。すみません」
ところで、詩のワークショップやりましょう
「さて、今回もたくさんおしゃべりしましたね。最後にゲストの大東さんとムラキングさんで詩のワークショップをやってみませんか」
「楽しみ! ムラキングとはよく会っているけど書いてもらうのは初めてだ」
「いつも、生まれ変わったら何になりたいか聞いているんです。みなさん、聞けばちゃんと答えが返ってくるんですよ」
「それ、結構むちゃぶりだよね」
「大東さん、何になりたいですか?」
「うーん……バッタかな。僕が、というよりは子どもがいてはじめて感じたことで。子どもがまだ小さいから虫捕りに行ったりするけど、バッタは捕まえた瞬間が嬉しいだけで、そのあと家で育てたいみたいな気は起きないんだよね。その、歩いていくとぴょんと跳ねるといるのがわかる曖昧な存在、ほっとかれている感じもありつつ、あるときは捕まえたい、その感じが面白いから」
「わかりました」
「できました」
「おお〜。ありがとう」
人にとって
何もうまく興味の
なさそうな
草の中にいるバッタとして
もし僕がなって
生まれかわったムスコが
僕に興味を
持ってくれれば
今の僕の未来は
バッタでいいと思う
「『今の僕の未来は』の部分が、今の僕と地続きなんだなって。別の来世が存在しているんじゃなくて、僕の地続きのままでいいって感じがすごい、うん、いいですね」
「優しい視点だぁ。いいですね。ありがとうございます。みなさん、今日は本当にありがとうございました」
編集後記
以上、今回もまたゆったりした「妄想恋愛詩人・ムラキングのポロリとひとこと」をお届けしました。
生活すること、生きること、表現することがつながっていて、ときどき絡まったり、落ち込んだりもしながら考えつづけるムラキングさんとのおしゃべりは、ともすれば見過しがちな人間のやわらかい部分に繋がっている気がして、毎回心身をほぐしていただいています。
今回のテーマ「居場所」も、当初は優しくて温かい場所……というイメージを抱いていたのですが、「いちゃだめだと言われない場所」だという切実な定義にはっとしました。対価が必要だという視点もとても大切。そして自分自身もまた、心身の置きどころについては常に悩んできたんだな、と、座談会のあとに考えたりしました。
そんな問いかけにも出会えるムラキングさんの言葉は、ご本人のInstagramアカウントで日々更新されています。ぜひこちらもチェックしてみてください!
さて次回はどんな話題や言葉、そして詩に出会えるのでしょうか。お楽しみに。
(こここ編集部・中田)
Profile
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- ライター:遠藤ジョバンニ
-
1991年生まれ、ライター・エッセイスト。大学卒業後、社会福祉法人で支援員として勤務。その後、編集プロダクションのライター・業界新聞記者(農業)・企業広報職を経てフリーランスへ。好きな言葉は「いい塩梅」、最近気になっているテーマは「農福連携」。埼玉県在住。知的障害のある弟とともに育った「きょうだい児」でもある。