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日々を新たな視点で捉え直す展覧会「⽇常アップデート」展が〈東京都渋谷公園通りギャラリー〉で2024年6⽉15⽇(土)より開催
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丸、三角、四角などのモチーフがデザインされた展覧会バナー画像
2024年6月15日(土)〜9月1日(日)まで開催される「日常アップデート」展

繰り返される日々を見つめ直す、参加型の展覧会

パンデミックや災害、生活様式を変える大きなできごとが起きるたびに、私たちはささやかな日常の尊さや儚さに思いを馳せます。しかしそうした記憶は、また日常が戻ってくるにつれ薄れていってしまいます。繰り返される毎日が「当たり前」になると、私たちは大事なものやそこにある豊かさなどを、つい忘れてしまいがちです。

日々の中で見過ごされるような光景や言葉、誰かとの関わりなど、さまざまな観点から日常を捉え直す展覧会「日常アップデート」展が、東京・渋谷の〈東京都渋谷公園通りギャラリー〉で、2024年6月15日(土)より開催されます。

出展するのは、飯川雄大さん、関口忠司さん、土谷紘加さん、原田郁さん、宮田篤さん、ユ・ソラさんの6名。期間中は、作品を運び出すインスタレーションや、絵を描くワークショップ、物語を作るワークショップなどを開催。それぞれの作品から見えてくる他者の日常に触れることで、いつもの風景やその価値がどのように変わっていくかを体感する、参加型の展覧会です。

ギャラリーと展覧会のコンセプト

〈東京都渋谷公園通りギャラリー〉はアートを通した共生社会の実現を目指して、2020年にオープンしたギャラリーです。美術教育の有無を問わない、独自の表現方法で制作を行う作家たち10名を紹介する「アール・ブリュット2022巡回展」、語りのあり方と語りを紡ぎ出す身体を想像する展覧会「語りの複数性」、「おかんアート」約1000点が集結した「Museum of Mom’s Art ニッポン国おかんアート村」、生活にまつわることを起点に表現する作家たちの作品や活動を紐解いた「共棲の間合い」など、意欲的な展覧会を企画してきました。

今回のテーマは「日常」。再び人々の交流や集いが動き出し、コロナ禍以前と同じ毎日を取り戻したかのようになった昨今。本展では、普段は見過ごされるような光景や体験、聞き慣れたことば、どこかの誰かとの共同作業、その日の大切な記憶や事柄の記録、安心できるいつもの風景など、さまざまな観点から、日常における人と人、人と社会の在り方について考えます。

6名の作家と展示の一部をご紹介

「日常アップデート」展に参加するアーティストと、その見どころをご紹介します。

橋の上でバッグをひいて歩く人の姿が映った写真
飯川雄大《デコレータークラブ―新しい観客》2022年「感覚の領域 今、『経験する』ということ」展  国立国際美術館と個展「デコレータークラブ:メイクスペース、ユーズスペース」兵庫県立美術館での連携実施の様子 撮影:飯川雄⼤

言葉や映像、遊具のような装置を使って、鑑賞者が作品に触ったり、動かしたりすることで、思いがけない場所で新たな体験を作るインスタレーションを展開する、飯川雄大さん。本展では、展示室にあるかばん「ベリーヘビーバッグ」を鑑賞者の手で、飯川さんの展覧会が開催されている別の4会場、鳥取県立博物館(鳥取県)・高松市美術館(香川県)・CUPSULE(東京都・三宿)・LAG[LIVE ART GALLERY](東京都・神宮前)のいずれかの展示室へ運ぶ作品を展開します。

鑑賞者が作品を運ぶという非日常体験によって気付きがもたらされるとともに、その行為を目撃した人たちも作品の鑑賞者になり得るという、多様な立場の視点が交差する作品です。

四角形の上部が緑色、下部が蛍光ピンク色でぐにゃりと曲がったのアイロンビーズの作品
シリーズ名「COLORNY(カラニー)」はcolor(色彩)とcolony(群体)を合わせた造語です 土谷紘加《COLORNY (No.24) 》2015年

大阪府阿倍野区の生活介護施設〈Atelier CORNERS(アトリエコーナス)〉に通所する土谷紘加さんは、アトリエ活動の中で、アイロンビーズを使って製作をしています。毎日2〜3点ほどの作品を完成させ、その総数は2500枚を超えました。偶然のように見える構図も、全て土谷さんの頭の中で配置が決められているものを形にしているといいます。

ビーズの配置、色の選択、熱の当て具合など、土谷さんの感覚によって構成された作品は、ひとつとして同じものがありません。今回は展示作品のほかに、触ることができる作品も制作されます。ぜひ作品に手を触れ、その質感やどんな思いで作られたかを感じてみてください。

コンピューターで描かれた、黄色い屋根のツリーハウス。地面から家の入口まで黄色いはしごが伸びている
原田郁《tree house 2023》2023年

原田郁さんは、2008年頃より、コンピュータ内に仮想の理想郷を立ち上げ、その世界で目にする疑似体験の風景を主に絵画として描いています。展示期間中の6月15日(土)〜7月28日(日)には、会場内とウェブサイトから参加できる「窓の絵」を描くワークショップを開催。参加者が描いた「窓の絵」は、8月1日から、原田さんの仮想世界内のギャラリーにて展示・公開されます。現実と仮想世界の融合はどんな「日常」を私たちに見せてくれるのでしょう。

子どもが鉛筆を持ち机に向かって、何かを書いている様子を捉えた写真
宮田篤《ペンびぶんフレンドクラブ・いなわしろ -》2019年「わくわくなおもわく」展  展示風景 はじまりの美術館 撮影:森田友希

みんなでつくる小さな本“おとなもこどももあそべるぶんがく「微分帖」”などのワークショップや、ドローイングによって他者との関わりの中にある差異を見つめることを制作のきっかけにしている宮田篤さん。〈こここ〉の記事にもイラストで関わったことがあります。

今回はギャラリーの交流スペースに「びぶんブックセンター」が出現。期間中にゲストを迎え、ワークショップを実施します。6月22日(土)14:00〜18:00は、「向坂くじら(詩人)1日研究員」を開催。その他に、まいにちあそべる「微分帖」や遠方の方も参加できる文通での「はさもう!びぶんまんが」なども企画しています。

展覧会では、その他に、会話の中でひらめいた言葉やテレビで耳にした言葉など、日常生活の中で湧き上がる言葉を書き連ねた、関口忠司さんの作品や、白い布と黒い糸を使った刺繍作品のインスタレーションを展開するユ・ソラさんの作品が展示されます。

バナーと似たモチーフを使った、展覧会チラシの表
期間中、7月19日、26日、8月2日、9日、16日、23日、30日の金曜日は、サマーナイトミュージアムにつき21:00まで開館しています

7月27日(土)と28日(日)は、飯川雄大さんを講師に迎え、「Kids meet 04」を実施。渋谷の街中に、気がつきそうで気がつかない、だけどもし気がついたら目が離せないような仕掛けをみんなで作ります。感覚の変化や物の見え方など、新しい気づきを得ることができる本ワークショップは、大人も参加可能です。

また7月3日(水)(予定)より随時、アーティスト・トーク「日常ラジオ」をYouTubeポッドキャストで配信。「日常アップデート」出展作家と担当学芸員が、作家の日常から出展作品についてまでおしゃべりをします。手話による作品解説動画や、担当学芸員や鑑賞サポーターによるギャラリートークなども鑑賞の手助けになりそうです。各ワークショップやトークの参加方法はWebサイトをご確認ください。

展覧会は9月1日(日)まで開催しています。ぜひ展示に足を運び、ワークショップなどに参加して、「日常」をさまざまな角度から見つめ直してみませんか。