こここ編集部より

福祉発プロダクトを紹介する「イッピン市」の開催レポート
レポート

  1. トップ
  2. こここ編集部より
  3. 福祉発プロダクトを紹介する「イッピン市」の開催レポート

こんにちは!〈こここ〉編集部の岩中です。新年度が始まったなあと思っていたら、あっという間に6月ですね……。みなさん、いかがお過ごしでしょうか。

2021年4月15日に創刊した〈こここ〉も、先日2周年を迎えました!リモート編集部としてスタートし、コロナの影響もあってなかなか外に出ていきにくかった1年目。2年目は取材などを通して記事を発信するメディア事業以外にも、ラボ事業で外部団体と連携したプロジェクトを行ったり、〈こここ〉編集部が独自にイベントを企画・運営したりする機会が増えてきました。

今回のブログでは、昨年度〈こここ〉が開催したイベントとして、2つの「イッピン市」を振り返ってみたいと思います。

  “福祉発プロダクト”の魅力を届けるイッピン市

「イッピン市」は、全国の福祉施設でつくられているグッズやこれからのものづくりを提案するプロダクトなどを紹介するコーナーこここなイッピン」で取り上げてきたものや、その他記事で取材した施設の商品などを販売するマーケットイベントです。

前回のブログでは、福祉発プロダクトの魅力について書いてみたので、よかったらこちらもご覧ください。

イッピン市を初めて開催したのは、2022年4月に創刊1周年記念として行った「のんびり縁日へようこそ」にて。その際には、たくさんの方に商品を手にとっていただきました。「かわいい!」「面白い!」という驚きや笑いがあったり、プロダクトが生まれた背景やストーリーを知っていただくことで一層魅力を感じてもらえたり、さまざまな会話が生まれたり。「モノのもつ力はすごい」と、改めて手応えを感じた機会になりました。

ケアリングノーベンバー 準備編

「のんびり縁日へようこそ」に続いて開催したイッピン市は、2022年11月26日(土)〜27日(日)の2日間、下北沢の〈BONUS TRACK〉で行われた「ケアリングノーベンバー」のケアリングマーケットにて。11月11日の「ケアの日」にちなんで、ケアにまつわるさまざまなプログラムが約1ヶ月間、〈BONUS TRACK〉にて開催されました。

「ケアリングノーベンバー」への出店は、イッピン市として外部イベントに参加する初めての機会だったので、はりきって「いろいろつくろう!」と気合が入りました。

実は、〈こここ〉編集部メンバーの出自はさまざまで、仕事やプライベートでイベント企画・運営に携わっていた/いる人たちがいます。「イベント」と聞くと火がついて、いそいそとプランのスケッチを描き始めたり、あれやこれやとDIYし始めたりする人たちが少なからずいるのです……。 最近では、〈こここ〉でイベントを開催する際には、このチームがテンション高めに出動するのがお決まりになってきました。(そして、そのチームをあたたかく見守りつつ、サポートしてくれるほかの編集部メンバーたち。いつもありがとうございます!)

手作り感溢れる感じですが、何事も楽しみながら行う〈こここ〉チームによるイベント運営の裏側から当日の様子を、写真多めでレポートしていきます!

イベント開催を約1週間後に控えたとある日、千葉県にあるクリエイターユニット〈岩沢兄弟〉のアトリエにて作業

まず取りかかったのは、サインや装飾類の制作。編集長の中田さんと仕事をご一緒する機会の多い〈岩沢兄弟〉のアトリエにお邪魔して、デジタル工作機器をお借りしました。「こんなものをつくりたい」というアイデアに対して、具体的な制作方法やデータ化などアドバイスをいただき、試行錯誤しながらつくったものは、〈こここ〉のミニ看板2種とバッジ。

完成したミニ看板!ウェブマガジン〈こここ〉の説明と、裏面にはLINE登録のご案内
今回の一番の力作「こここバッジ」。レーザーカッターで切り抜いた円形の土台に、「こ」のベース(白い部分)、「こ」の縁取りを重ねてつくっている。円形の土台部分にはクロスを張って、一つひとつ色や柄が違うこだわりよう(左) / 大量の「こ」のパーツを白く塗る中田さん(右)

このイベントグッズは、その後も使い続けているので、頑張ってつくってよかった!全面的にサポートいただいた岩沢兄弟のお二人、どうもありがとうございました。

他にも、お店のテーブルクロスやワークショップの備品を用意したり、ディスプレイ用の什器をそれぞれ持ち寄ったりして、準備を進めました。

こここなイッピン市 in ケアリングノーベンバー

当日オープンしたお店は、こんな感じです!

そして、マーケットで一番大事なのは、やはり商品!今回のイッピン市では、この時期(11月)ならではのグッズから、「ケア」にちなんだもの、〈BONUS TRACK〉のある世田谷区の施設のプロダクト、「福祉」という言葉にはあまりピンときていない人にも目に入って手にとってもらえそうなキャッチーなものまで、セレクトして販売させていただきました。

▼こここなイッピン市出店ブランド/施設
〈嬉々!!CREATIVE(キキ・クリエイティブ)〉
〈irodori〉
〈NOZOMI PAPER Factory〉
〈西淡路希望の家〉
〈Good Job! センター香芝〉

各ブランドや施設から出品いただいたアイテムをご紹介します。

11月の酉の市にちなんで、〈嬉々!!CREATIVE〉の人気商品「辻太郎招福くまで」をセレクト。海洋生物好きの辻太郎さんによる手づくり熊手です
目玉商品のひとつ、〈嬉々!!CREATIVE〉の「しゃけグリップ」。一見やわらかな鮭のぬいぐるみかと思いきや、中に握力を鍛えるハンドグリップが内蔵されています。アメリカから旅行で来ていた人が「日本のお土産を探していたので、これはピッタリ!」と購入していきました
世田谷区にある〈玉川福祉作業所〉のオリジナルブランド〈irodori〉の人気商品、ビーズのブローチとバッジ。季節もの商品としてクリスマスモチーフもたくさん登場!つくられているご本人が登場し、店頭でセールストークを繰り広げてくれました
色とりどりの布やビーズ、糸でパッチワークと刺繍が施された〈irodori〉の刺繍バッグ。こちらも全て1点ものです
「NOZOMI PAPER®︎」の名刺カードやメッセージカードなど。色や手触りが楽しい手漉き紙製品
「NOZOMI PAPER®︎」の紙に好きな絵柄を選んでプリントできる、活版印刷ワークショップコーナーも設けました
オリジナルカレンダーが大人気だった〈西淡路希望の家〉(大阪)の「ジャスティンポーチ」。ジャスティン・ビーバーがつけているネックレスに似たチャームがついていることが、商品名の所以だそう。ネーミングセンスもさすが!
〈西淡路希望の家〉の刺繍商品も多数出品。こちらは文字が刺繍されたクッションカバー
〈Good Job! センター香芝〉からは、2023年の干支であるうさぎをモチーフにした陶器の人形や張り子などが出品

リアルイベントの醍醐味は、いらっしゃった方と直接コミュニケーションできることに尽きます。今回は〈BONUS TRACK〉でのイベントということもあり、〈こここ〉を知らないで来場した人、お散歩でたまたま通りかかったという人も多かったです。

商品が目に留まって立ち止まり、手にした人がいたら、様子をみて話しかけてみます。福祉施設でつくられている商品であること、どんな人が施設で活動しているか、どのような背景やプロセスでつくられているか、などを紹介すると、驚かれたり、関心を持っていただいたり。「福祉施設がどんな場所かあまりイメージがない」「『福祉』という言葉は自分とは遠いものだと思っていた」「身近に障害のある人がいる」「ものづくりやデザインに興味があってつくり方が気になる」……などなど、いろいろな声が返ってきました。

「いつも〈こここ〉を読んでます」と言ってくださる方も来て、なかなか読者と会う機会がない編集部にとって、直接感想をいただけるのは本当に励みになりました。

また、ケアリングマーケットの他の出店者の中には、これまで〈こここ〉の記事でご紹介させていただいたことのある施設やブランドも。一緒に出店しながら、交流できたのも良い機会でした。また、ディスプレイや什器の使い方、商品ラインナップなど、店舗づくりで学ぶことも多かったです。〈こここ〉編集部も、お店づくりのスキルを磨いていきたいと思います!

▼ケアリングマーケット参加店舗
・「こここなイッピン市」
・〈一般社団法人チャーミングケア〉
〈ココ・ファーム・ワイナリー〉
〈SOLIT!〉
〈HONAN LOCAL GOOD BREWERS〉

ニュース記事の掲載にあたり、杉並区にある新店舗を取材させていただいた〈HONAN LOCAL GOOD BREWERS〉も出店

2日間の「こここなイッピン市 in ケアリングマーケット」にご来場いただいた皆さま、出品にご協力いただいた施設の皆さま、主催の〈BONUS TRACK〉の皆さま、どうもありがとうございました。

イベント出店に際してお世話になった〈BONUS TRACK〉のミヤジこと宮崎さん(左)と桜木さん(右)。〈西淡路希望の家〉のマフラーとグローブがばっちりきまってます!

こここなイッピン市 in なんだかんだ

続いてのイッピン市は、2023年3月31日(金)〜4月1日(土)に神田の路上で開催された「なんだかんだ」への参加でした。

こちらは、〈こここ〉の1周年イベントの会場としても協力いただいた〈神田ポート〉を運営する〈株式会社ゆかい〉が実行委員を務める路上実験イベント。なんと道路に150畳もの畳が敷かれ、「あたらしい神田の縁日をつくろう!」をテーマに、さまざまなコンテンツが繰り広げられました。

イッピン市には、2日間で5つのブランド/施設に参加いただきました。
〈空と海〉
〈ハーモニー〉
〈KOMONEST〉
〈HERB AND… 〉〈かすたねっと〉
〈駄菓子屋 横さんち〉

今回は出品プロダクトのセレクトも基本的に施設側にお任せし、新作や今の時期のおすすめをチョイスいただき、販売も施設の職員さんやメンバーさんにお願いしました。

神田ポートビルの前の道路に敷き詰められた畳。普段オフィス街で車の行き来も多い風景が一変。「イッピン市」は神田ポートビルの軒先でお店を出せていただきました
初日3月31日は、千葉県船橋市の〈空と海〉と東京都世田谷区の〈ハーモニー〉が出店。紙漉き、織物、木工などのクラフトグッズを幅広く制作する〈空と海〉からは、今回木工と紙製品をメインに出品いただきました
〈空と海〉の木工商品。
【左】動物たちは干支にちなんだモチーフ。右側の男性は、施設長の奥野さんだそう
【右】裏面には「かっこいい」という、制作したメンバーさんの心の声(?)も書かれてました
静岡県掛川市から参加いただいた〈駄菓子屋 横さんち〉。メンバーさんが考案したオリジナルキャラクターグッズを出品いただきました
〈駄菓子屋 横さんち〉では、ポカポンに勝つと駄菓子がもらえるというコーナーも。この後も小さい子どもたちが集まって駄菓子を食べながら路上で遊んでいたりと、なんだか懐かしい風景でした
東京都練馬区にて〈社会福祉法人 花水木の会〉が運営するお菓子屋さん〈かすたねっと〉と、2021年に新しくオープンしたハーブティーと焼き菓子のお店〈HERB AND…〉。かわいい缶に入った〈HERB AND…〉の焼き菓子の詰め合わせは、プレゼントにもピッタリ!
東京都板橋区にある〈小茂根福祉園〉のオリジナルブランド〈KOMONEST〉からは、こここなイッピンでもご紹介した「みんなのエプロン」。このイベントのために新作を用意いただきました!生活介護、就労継続支援のメンバーさん「みんな」で工夫しながらつくっている、1点ものの商品
〈KOMONEST〉の「ドローチ」。手描きのドローイングを刺繍してブローチにした商品です
〈ハーモニー〉からは「幻聴妄想かるた」やかるたモチーフのグッズのほか、メンバーさんの制作した詩集やBL小説なども販売

また、イッピン市にも出店いただいた〈ハーモニー〉による出張・幻聴妄想かるた大会も開催!メンバーさんが実際に体験したかるた札を読み上げたり、かるたの内容を紹介したりしながら、来場者の方たちと畳の上でかるたを楽しみました。

かるた大会は1日2回実施。〈ハーモニー〉はどんな場所かを紹介したあとは、メンバーさんが読み札を読み上げて、その背景についてお話しいただきました
〈ハーモニー〉の施設長 新澤さん(右)kagesanさん(左)
かるたの札に書かれた体験について紹介する〈ハーモニー〉姫さん(中央)と黒瀬さん(右)

かるた大会のほかにも、〈ハーモニー〉メンバーさんによる詩の朗読や似顔絵、自分の思いや体験をかるたにしたためる「みんなのかるた」コーナーなども実施。かるたや皆さんの表現を通して、たくさんの出会いが生まれました。

神田ポートビルの2階窓から下にいる人たち向かって自作の詩を朗読する益山さん(中央)。「なんだかんだ」に参加していた劇団の役者さんが、益山さんの読む詩を復唱する、即興的なコラボが!
【左】〈ハーモニー〉のこまねずみさんによる似顔絵コーナーも。イベントに遊びに来ていたライラさん(右)と、似顔絵を描いたこまねずみさん(左)。「れんぶらんとじぞう(仮)」という似顔絵描きの名前は、前日に決めたそう
【右】こここ編集長の中田さんの似顔絵。特徴捉えてる......!
畳の一角には〈ハーモニー〉による「幻聴妄想みんなのかるた」コーナーも。来場した人が自分の体験や思いをかるたの絵札と読み札にしたためます
「なんだかんだ」の撮影コーナーで記念撮影。編集部の垣花(上)、中田(中)、岩中(下)。撮影は〈ゆかい〉さん。今回はお声かけいただき、ありがとうございました!

長くなってしまいましたが…… 昨年度開催した2つの「イッピン市」を振り返ってみました。こんな風にイベントをつくっているんだという雰囲気が伝わったら嬉しいです。

イベントを行うことは私たち編集部にとって、普段メディアを通して発信していることをダイレクトにお届けできたり、新しい出会いがあったり、とても貴重な機会です。お店づくりや運営についてはまだまだ勉強していく部分も多いですが、ご覧の通り編集部メンバーも楽しみながらイベントに携わっています。「イッピン市」を開催してほしい、〈こここ〉でイベントを企画してほしいなどご希望があれば、ぜひお声かけいただけたら幸いです。

こここ編集部・岩中可南子