ニュース&トピックス

福祉を社会に“ひらく”とは? 「ふくしデザインゼミ展」2023年3月21日〜26日
イベント情報 展覧会情報

  1. トップ
  2. ニュース&トピックス
  3. 福祉を社会に“ひらく”とは? 「ふくしデザインゼミ展」2023年3月21日〜26日

開催日時や会場、主催者が書かれたふくしデザインゼミ展のフライヤー表面

福祉と出会い、気付きを皆でまとめた成果を展示

人によって思い描くイメージが異なることも多い、「福祉」という言葉。高齢者や児童、車いすに乗っている人、ろう者……いわゆる「福祉サービス」の対象となる人が連想されやすいなかで、それを本来の意味、つまり「幸せ」への営みとして身近に感じている人はどれくらいいるでしょうか。

社会のあり方が大きく問われるいま、必要なのは「福祉」を自分ごとにしていきながら、人やまち、地域に向け、立場や領域を越えて“ひらく”ことではないか。2022年夏にスタートした「ふくしデザインゼミ」は、そんな問いを抱えた学生たちがさまざまな現場を訪ね、自分のなかにある福祉像を捉え直し、気付きをまとめていくプログラムです。

運営するのは、〈SOCIAL WORKERS LAB(ソーシャルワーカーズラボ)〉と〈社会福祉法人 武蔵野会〉。2023年3月21日(火)から26日(日)まで、これまでの活動をまとめた「ふくしデザインゼミ展」が、東京都八王子市の〈AKITEN BASECAMP GALLERY〉で開かれます。会場および周辺では、トークなどの関連イベントが多数開催されるほか、書籍『ふくしデザインゼミ 武蔵野会に関わる人図鑑をつくろう』が販売予定です。

「ふくしデザインゼミ展」関連企画

学びの共同体「ふくしデザインゼミ」

人口減少と超高齢化が進行していくなか、専門職だけが社会保障を担うような形では、あらゆる人にとっての健康で文化的な最低限の生活と基本的人権が尊重される社会をつくることはできません。「ふくしデザインゼミ」は、福祉を起点とした「ひらかれた対話と創造の場」を通じて、そうした社会に必要な視点を身につけていくプログラムです。

実際には、学生たちが福祉法人を舞台に、分野や領域の垣根を越えて実践的に福祉を学んでいきます。2022年9月には、企画第1弾「ふくしに関わる人図鑑をつくろう」がスタートし、施設で働く人や施設を利用する人に取材をしながら、得た気づきなどを一冊の冊子にまとめることを目指しました。

【写真】画面中央の机の上には資料が置かれ、そこを囲むように7名のゼミ生が、デザイナーと編集者からアドバイスを受けている制作風景
冊子づくりに欠かせない取材や執筆、コピーライティングや編集、デザインなどをプロの編集者やデザイナーから学び、制作をすすめました

このプログラムを企画する〈SOCIAL WORKERS LAB〉は、「ソーシャルワーカー」という概念を介して、多様な人びとが出会い、関わり合い、問い、学び合う社会実験プロジェクトです。これまで福祉に関わりが薄かった学生や社会人にも、「福祉の世界」の広がりやおもしろさを届けようと、さまざまな活動を展開しています。

〈SOCIAL WORKERS LAB〉が「ふくしデザインゼミ」で協働するのは〈武蔵野会〉。東京と静岡で、児童養護施設や特別養護老人ホーム、障害者支援施設など25施設、120事業を展開しています。

今年度は、第1弾ゼミテーマ「ふくしに関わる人図鑑をつくろう」にちなみ、13名の学生たちがそれぞれに〈武蔵野会〉の施設へ趣きました。そこで働くスタッフの方々や、施設利用者と出会いながら得た等身大の気づきや変化の過程は、「ふくしデザインゼミ」のnote記事でも発信されています。

福祉に出会い、自分にとってのまちづくりを改めて考えさせられた。福祉に触れて学んだ「人に寄り添う」視点は僕のまちづくり観を確かに豊かにしている。そして、この視点はまちづくりだけでなく、人の関わることであればどんな分野においても大切なものだろう。人に寄り添う。見失ってしまいがちだけれど大切なことを福祉は思い起こさせてくれる。

『僕と福祉とまちづくり|安島裕大|essay 04』より抜粋)
【写真】画面左手前にゼミ生がいて、右の職員から施設の説明を受けている
実際に施設を見学したときの模様

展示会場では書籍も販売、各種テーマ別トークセッションも

今回開催されるのは、プログラムの最初の集大成としての書籍『ふくしデザインゼミ 武蔵野会に関わる人図鑑をつくろう』販売にあわせた、各種イベントです。「ふくしに関わる人図鑑」のパネル展示をメインにしつつ、ゲストを招いたトークなどが予定されています。

【画像】
〈ふくしデザインセンター設立準備室〉が2023年3月21日より発行する『ふくしデザインゼミ 武蔵野会に関わる人図鑑をつくろう』(税込1000円/A5版/76ページ)の目次

展示開催を記念して開かれる3月24日のオープンフォーラム「ふくしをひらく」では、ゲストに、書籍『1階革命』の著者で〈喫茶ランドリー〉を運営する建築コミュニケーターの田中元子さん(株式会社グランドレベル)と、寺子屋やシェアオフィス、福祉施設などの機能が内包された地域共生文化拠点〈春日台センターセンター〉を運営する馬場拓也さん(社会福祉法人愛川舜寿会)、京都で福祉業界の人材採用・育成に取り組む川渕一清さん(有限責任事業組合 まちの人事企画室)、地元の福島県いわき市を中心に食や文化芸術など幅広い地域活動を行うローカルアクティビストの小松理虔さん(ヘキレキ舎)が登場。まちづくりや福祉、人材などさまざまな領域で活動する4つの視点から、福祉の可能性について語り合います。

また、展示会場で行われるトークコレクションでは、「ふくしデザインゼミ生誕の背景」に始まり、ふくし ×「まちづくり」「デザイン」「ローカル」などの各テーマで、図鑑に登場する方々や、多分野で活躍するフロントランナーがゲスト出演。展示を囲みながらトークが展開される予定です。

25日19時からの、「はたらく」をテーマにした〈こここ〉とのコラボレーション企画「スナックふふふ」の番外編には、編集部の垣花つや子も登壇し、〈武蔵野会〉の施設で働く赤崎正和さん(東堀切くすのき園)と吉村望美さん(希望の里)、そしてゼミ生の佐藤由さんをまじえ、福祉業界で働くことについてゆったりと話します。

他にも「ふくしデザインゼミ 参加学生の本音トーク」など、ゼミ生自らが登壇するセッションは多く、実際のゼミ活動のなかで得た気づきや学びなどを手がかりにした対話にも注目です。

福祉は、一分一秒単位で刻々と変化する「人」に、真正面から向き合う仕事だと思う。私が見かけたスタッフのみなさんは、どんな時でも目の前にいる相手の変化を具に捉えようとしていた。

『ふくしから捉え直す「取材者」のあり方|前野有咲|essay 03』より抜粋)

会期中には、普段のゼミ活動を体験できる参加型プログラムや、〈武蔵野会〉の仕事について触れられるイベントも行われる予定です。これから福祉に関して考えを深めてみたい人や、協働型のものづくりや福祉法人での仕事に興味のある人は、この期間中、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。