2024年も200本以上の記事を公開してきた、福祉をたずねるクリエイティブマガジン〈こここ〉。今年はイベントなどWeb以外の活動もさらに広げながら、今までに出会った「問い」をさらに深めたり、今この時代に大切にしたい新たな「問い」を考えたりしてきました。
この1年に公開した、たくさんのインタビューや連載の中から、年末年始に読み返してほしいものを「5テーマ/16記事」に絞って紹介します。まだ読んでない記事がある方は、この機会にぜひ触れてみてください。
1. 新しく立ち上がった連載たち
『生き方は、ひとつじゃないぜ。|スウィングからの贈る言葉』
「ギリギリアウトを狙う」をモットーに、既存の価値観・仕事観にとらわれない取り組みを続ける、京都市・上賀茂の福祉施設「スウィング」。代表を務める木ノ戸昌幸さんに、社会の中にある既成概念を問い直してくれる6つの言葉をいただきました。
『「ルッキズム」に立ち止まる|NPO法人マイフェイス・マイスタイル』
「見た目問題」の解決を目指す〈マイフェイス・マイスタイル〉外川浩子さん、口唇口蓋裂の当事者支援を行う〈笑みだち会〉小林えみかさんとともに「ルッキズム」を考えていく新連載。さまざまな専門家をたずねながら、言葉の意味や、背後にある今の社会の構造を考えていきます。
『たとえ答えが出なくとも|インディペンデントキュレーター・青木彬』
全国各地の展覧会やアートプロジェクトの企画・運営を手がけながら、福祉に関わっていく青木彬さんは、「アートは“よりよく生きるための術(すべ)”になる」と語ります。答えの出ない状況や世界に向き合い続ける青木さんは今なにを考え、実践しているのか……日常の風景から綴る新連載。
『言葉のもやもや歩き』
社会の中でときどき聞く、人々の幸せ(=福祉)に確実に影響を与えているだろう言葉を、みんなで考えていく連載シリーズ。毎回1つのフレーズをテーマに、その言葉を取り巻くモヤモヤや、乗り越えるためにできそうなちょっとした工夫についてご寄稿をいただきます。
2. 身近な問いに目を向ける
「昔と今」の価値観のズレをめぐって
子どものころ夢中になっていた漫画や小説を読み返したとき、「男らしさ」「女らしさ」の表現や、「セクハラ」「パワハラ」とも取れるシーンが気になった経験はありませんか? 自分の、あるいは社会の変化を受け止めながらも、かつてのめり込んだ“古い”作品を楽しんでいく方法はないのか……文学研究者の小川公代さんと考えました。
「私とあなた」の間をめぐって
人には、どんなに親しい関係でも、他者に踏み越えてほしくない境界線(バウンダリー)が存在します。自分の線を守りながら、相手の線を尊重していく方法について、「生きづらさ(病、貧困、トラウマ等)」を抱えた方々の支援に携わる鴻巣麻里香さんに解説をいただきました。
「能力」や「価値」の意味をめぐって
むやみにしたくない、されたくないと思っても、社会の隅々にまで入り込んでしまった「評価」のまなざし。なぜ私たちはこんなにも評価に振り回されてしまうのか……『働くということ』などの著者である組織開発コンサルタントの勅使川原真衣さんと、就労継続支援B型事業所「ハーモニー」の新澤克憲さんをお招きし、語り合いました。
3. 地域を“面”で捉える
注目のまち「上田」で、場と人に出会う3記事
東京から新幹線で1時間半。周囲を険しい山に囲まれた長野県上田市に、個性豊かな施設がいくつもあると聞いた〈こここ〉編集部は、2024年春、その歴史ある町並みを訪れました。
「何気ない自由」をテーマにたずねた、障害のある人がアート活動を行うアトリエ「スタジオライト」、文化施設「犀の角」、そして映画館「上田映劇」。それぞれ単独でも読める取材記事ですが、互いのつながりを意識しながら読み返すと、点ではない“面”としての地域の姿も見えてきます。
4. 福祉に出会い直すデザイン
本当に「誰でも遊べる」環境を問いながら
さまざまな特性のある子どもが一緒に遊べる遊具シリーズ「RESILIENCE PLAYGROUND」の開発者、〈ジャクエツ〉デザイナーの田嶋宏行さん、監修した医師の紅谷浩之さんのインタビュー。のちに、2024年度の「グッドデザイン大賞」も受賞することになるプロジェクトへの、思いやプロセス、描く未来を語っていただいています。
デザインの領域を拡張しながら
過去のグッドデザイン賞の受賞先から、福祉とデザインが交わるところをたずねる連載『デザインのまなざし』。2024年の第1弾は、デザイン事務所〈方角〉のチャレンジを紹介しました。聴覚障害のある方に特化した求人サービス「グラツナ」の開発背景を、代表の方山れいこさんの“デザイナー”と“経営者”、二つの視点で紐解いていきます。
歴史を継ぎつつ、組織を変える伴走者として
幼稚園と認定こども園で現在400人あまりの園児を受け入れながら、さまざまな福祉事業を展開する〈加藤学園〉。学校法人が、なぜ乳幼児の保育や障害福祉までを担うようになったのか、地域でどのような存在を目指しているのか……リブランディングの背景を、理事長の加藤裕希さん、デザイナー/アートディレクターの小田雄太さんに伺いました。
5. 〈こここ〉の活動
「福祉」と「メディア」を考えた、3周年ありがとうトーク&交流会
〈こここ〉のプロジェクトや記事の制作にかかわるパートナー、〈こここ〉へ記事を寄稿くださる方、〈こここ〉と一緒に事業をしている方などを招いて5月に開催した「こここパーティー」のレポート記事です。編集部がこれまで思い描いてきたことや手応え、課題に触れつつ、関わる方々同士が交流しあう様子が写真に収められています。
クロストーク「福祉にメディアができること」などを通じ、この先やっていくべきことをみなさんと考える時間にもなりました。
3年目に入る、行政×メディアの共同事業〈せせせ〉
世田谷・福祉生まれのモノゴトを届ける、魅力発信プロジェクト〈せせせ〉。世田谷区と〈こここ〉の共同事業として2022年12月に立ち上がった事業が、3年目を迎えました。
区内の福祉施設で生まれた商品を扱うECサイトの構築や、施設職員に向けたセミナー&ワークショップ、実際に商品を手に取ってもらうマルシェの開催などの実践を積み重ねながら、今年度は福祉施設とクリエイターの出会いを広げるべく、「クリエイティブキャンプ」を新たにスタート。2日間の様子を、記事でレポートしています。
編集部主催のブックパーティがスタート!
〈こここ〉4年目の新しいチャレンジの一つに、「テーマから連想した一冊」を持ち寄る読書会イベント「こここブックパーティ」があります。9月に開催した第1回のテーマは、「“創造性”を考える一冊」でした。
会場は、〈こここ〉に長く連載をいただいたアサダワタルさんの拠点である、“本と音楽のお店, ときどきゼミ”〈とか〉。関東メンバーが多い編集部が、関西に出張していく貴重な機会にもなりました。
【アザーカット集】
2024年に記事を公開した取材やインタビューで、構成上、掲載できなかった写真をまとめています。本記事とあわせて、こちらもぜひ。