福祉をたずねるクリエイティブマガジン〈こここ〉

【写真】緑が生い茂る小道を、数人が歩いていく様子【写真】緑が生い茂る小道を、数人が歩いていく様子

出会いを広げながら、協働を生む「メディア」を目指して——〈こここ〉シーズン2を振り返る こここインタビュー vol.14

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「個と個で一緒にできること」を合言葉に、さまざまな福祉施設や専門家、クリエイティブなアイテム、活動などをたずねるウェブマガジン〈こここ〉。2021年4月の創刊から、あっという間に1年8カ月が経ちました。

すべてが初めてで、気づきや驚きの連続だった1年目から、撒いた種の育ちを少しずつ実感する2年目へ。手応えも、もちろん至らなさもたくさん感じながら、今も日々メディアを運営しています。

私たちが読者に伝えたいものは何なのか。「福祉」を入り口に見えてきたどんなものが、社会をどんなふうに変えていくと感じているのか。2021年に引き続き、年の締めくくりに編集部の振り返り座談会を開催しました。

※ 参加したのは、記事企画に携わる以下の6名。会の進行、および本記事の構成・執筆を佐々木が務めました。

座談会参加メンバー

中田一会 : 編集長。寄稿連載を中心に編集も担当しつつ、全体の方針を考えたり、ラボ事業やイベント企画を担当したりする役割。どれだけ脱色してもへこたれない頭髪を持つ。

及川卓也 : 統括プロデューサー。雑誌『anan』の編集を20年務め、2012年にウェブマガジン〈コロカル〉を創刊。〈こここ〉の仕掛け人であり言い出しっぺ。

垣花つや子 : 編集者。寄稿連載とインタビューやスタディ、レポート記事などの企画編集を担当。今年のどうでもいいニュースは、好きなアーティストを応援するためだけのSNSアカウントをつくったことです。

岩中可南子 : 編集者。こここなイッピンとニュースを主に担当。あちこち動きまわったり、人と会ったり、現場がすきなタイプ。

ちばひなこ : SNS担当、ライター。制作陣が大事にしているものを感じることを楽しみに、毎日映画をみて過ごす。趣味で映画祭の運営も行う。福祉領域に〈こここ〉を通して近づいたひとり。

佐々木将史 : 編集者。インタビューやスタディ、ニュース記事などを担当。関西(滋賀)在住で滅多にメンバーに会えないが、最近は子連れ旅行を兼ねた出張にも挑戦しはじめている。

【写真】低い本棚を囲んで7人がこちらに笑顔を向けている
2022年4月の1周年イベントにて。日頃はリモートで運営しているので、全員がリアルに集まるとても珍しい機会でした(撮影:ただ(ゆかい))

専門家・実践者と「一緒に」考えるメディア

佐々木

前回の振り返り記事を出してから、早くも1年が経ちました。数えてみたら、その間にまた200本を超える記事を掲載しています。新しい連載もいくつか立ち上がって、取材でたずねる領域もずいぶん広がりましたね。

中田

4月には1周年のイベントがあったり、11月にはマルシェに出店したりと、リアルな触れ合いも増えた2シーズン目だったなあと思います。秋にウェブサイトもリニューアルしたし、改めてみんなの手応えを私は聞いてみたいです。

佐々木

今年を象徴する記事としては、まずはやはり『こここスタディ』の信田さよ子さんのインタビューかなと思います。SNSでもたくさんのシェアがあったし、すごく読み応えがありました。企画した垣花さん、どうですか?

垣花

この数年何となく、「弱さを開示するって大事だよね」と言われることが増えたなと感じていました。でも、自分のなかでは「本当に開示するっていいことなのかな」「そもそも弱さって何だろう」と疑問があったんです。そこを起点に、信田さんにお話を聞きにいきたいと考えました。

この企画ではたしか、編集部会議のときに及川さんが「『弱さを開示してはいけない』と思っている人も、まだまだ多いんじゃない?」と指摘してくれたんですよね。

中田

「弱さは個人が乗り越えるもの、とするイメージのほうが実際は強いんじゃない? そう教わってきてない?」みたいな話をしましたよね。その人の置かれた環境や状況によっても捉え方が変わるテーマなんだなと感じて、これは多くの人に読まれるだろうなと企画段階から思ってました。

ただ、公開後の反響にはやっぱり驚きましたね。カウンセラーである信田さんのところには、さまざまなトラウマや生きづらさを抱えた人が訪れていますが、世の中にはそういう場所に辿り着けていない人もまだたくさんいる。信田さんが持っているような知見、あるいは社会的に今マイノリティとされている方々が抱えているような課題を、どうみんなで考えられるものにしていくかは、〈こここ〉をはじめたときからの大きなテーマでした。

今回それを「弱さ」というキーワードで共有できる形がつくれたのは、一つ大きな発見でしたね。記事の途中から、信田さんとの対話になっていくような記事構成もすごくよかったし。

【写真】テーブルをはさんで信田さんと、垣花、岩中が向かい合って座っている
(撮影:川島彩水)
及川

『こここスタディ』のシリーズは、どれも「人が感じる生きづらさや困難の裏には、実はさまざまな構造的問題がある」と気づかせてくれる内容になっているのが、一つの特徴かなと思います。僕らが気づかないうちに身につけてた固定観念とか、自己責任論的な発想や行動をちょっとズラしてもらえる。それが、読者にも伝わっているというか。

そういうテーマはまだたくさんあると思うので、編集部で一つひとつ問いを持ちながら、そこに何か解を持っていそうな、あるいは一緒に考えてもらえそうな人をたずねていくのが大事かなと考えています。

垣花

正解を聞きにいくというよりは、まず真ん中に、私たちが考えたい問いがある。そこを一緒にうろうろさせていただく感覚がありますね。

佐々木

『こここスタディ』や『こここインタビュー』は、取材を受けてくださった方々とも一緒に考えていく時間を大事にしていますよね。実際にお話をしていくなかで、例えば岡田武史さんが澤田智洋さんに悩みを伝えてくださったように、専門家や実践者のみなさん自身が抱えた葛藤を打ち明けられる場面がいくつもありました。すごくありがたいことだなと思ってます。

中田

疑問や戸惑いに対して「これが正しい」と決めつけないメディアであることは、創刊当初から気をつけてきたかなと思います。だからこそ、取材時の揺らぎを文字にして、ある意味で情報を固定する記事原稿に仕上げていくのはすごく難しい。実際に毎回リードから本文の構成まで、ぜんぶ形の違う記事が並んでいます。

「〈こここ〉って結構バラバラだな」と思われているかもしれないけど、そこはみんながすごく悩みながらつくってくれているなと、編集長として感じています。

 

合言葉「個と個で一緒にできること」をたずねて

中田

問いを考える連載としては、今年はじまった『健康で文化的な最低限度の生活ってなんだろう?』も大事なシリーズですよね。憲法25条「生存権」で示されているこの言葉は、広い意味で「福祉」、人の幸せをたずねる私たちにとっても欠かせないテーマだと思っています。

垣花

「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」。基本的な権利としてみんな享受できるはずのことが、実際にはなかなか実現されていないと感じています。その理由や、それぞれの人にとって違う「健康」や「文化的な生活」を、じっくり考えてみたいと思いました。

「福祉をたずねる」や「個と個で一緒にできること」を掲げるメディアで、自分は何を模索したいのか。自分なりに言い換えられる言葉を探して、出てきた問いでした。

佐々木

自分たちが何をたずね、何を大事にするかを考えていくときに、かなり早い段階から出してもらってたキーワードでしたよね。「個と個で一緒にできること」は、そういう企画の面でも、それから取材のシーンでも、すごく大事な合言葉になってきているなと感じていて。

インタビューでもさまざまな方が、“個と個”に触れてくださっています。〈やまなみ工房〉の山下完和さんもその一人でした。

佐々木

この記事は、コロナ禍でなかなか難しさもあった『アトリエにおじゃまします』シリーズの3回目で、『こここなイッピン』の取材もかねて岩中さんと一緒に行きました。福祉現場の実践を目で見ることの大事さも、改めて感じた取材でしたね。

岩中

障害のある方の表現活動では、世界的にも名前が知られている〈やまなみ工房〉ですが、現場に行って初めて知れることはやっぱりありましたね。その人がその人らしくいられる環境づくりの先に、みんなが知るような作品が生まれていく。最初にメンバーさん「全員」を紹介していただく出会い方も含めて、背景にある思想やスタッフの方々が大事にしていることが、すごくよくわかりました。

【写真】地面の上に紙を置き、立って制作する男性と、そばに座って語りかける山下さん
(撮影:進士三紗)
垣花

「障害のある人」というかたまりではなく、「◯◯さん」という“個”として一人ひとりに出会ってほしい……という発言が私はすごく響きました。

具体的な「〇〇さん」として出会うことを大事にしつつ、社会構造によって生まれている抑圧や差別、不平等な状況についても忘れずに考えていく。どちらかではなく、両方のまなざしを持つ大切さを多くの取材先から教えてもらった気がしますね。

ちば

『アトリエにおじゃまします』だと、私は〈しょうぶ学園〉もすごく記憶に残っています。特に施設長の福森伸さんが、“ありのまま”の捉え方について、目指すところの違いによって人それぞれの形がある……とおっしゃられていたのが印象的で。

「ここをひとつの社会にする」など、他の福祉施設とはまた違う考え方を持たれているのも新鮮でした。〈しょうぶ学園〉の取材は朝から1日滞在して、すごくたくさんの施設を見せてもらいましたが、わくわくするような空間が広がるなか、改めて“個と個”について考えるヒントをいくつもいただけた気がしています。

【写真】緑が生い茂る小道を、数人が歩いていく様子
(撮影:川島彩水)

〈こここ〉に多様な視点を与えてくれる連載たち

佐々木

『アトリエにおじゃまします』『福祉のしごとにん』が貴重な現場訪問の機会になっている一方で、僕たちが足を運べる範囲にもやはり限界があります。その点、いろんな立場の方が〈こここ〉にご寄稿くださっているのも、メディアの深みになっているなと感じていて。

去年からの人気連載だと、齋藤陽道さんの『働くろう者を訪ねて』や就労継続支援B型事業所〈ハーモニー〉の『「ハーモニー」の日々新聞』。他にもさまざまな当事者の方や、福祉現場をよく知る方の文章が〈こここ〉の連載一覧には並んでいます。

中田

今年始まったもので言うと、『アムステルダムの窓から』が印象深いかも。海外の福祉と表現が交わる場を知る機会ってあんまりないからこそ、すごく貴重な連載になっていますね。

岩中

『アムステルダムの窓から』は、アートエデュケーターのマイティ(佐藤麻衣子)さんがオランダにしばらく滞在すると聞いて、「海外の事例を知りたい!」と思って立てた企画でした。ただ、始まってみると単なる事例紹介や滞在記ではなく、マイティさんの過去の体験や葛藤が現地の風景と結びついていくような、とてもおもしろい連載になったなと思っています。

及川

日本の福祉制度、福祉的なまなざしのあり様などを海外と比較してみたとき、何が見えてくるのだろうという、単純な関心もありました。ですが、マイティさんの体験を通して示されていることは、“個”の連続性やつながりの普遍性を示しているような気がして、僕の個人的な想像を超えた連載になっています。これからも楽しみです。

そして、連載のイラストもいい。これって実は、たくさんの方が参加して描いているんですよね。

岩中

昨年インタビューでも掲載した福祉施設の〈小茂根福祉園〉の利用者さんたちです。絵を描く方が多いのを知って連載の挿絵をお願いしたところ、スタッフの方が「描く人を私たちでは選べないから、希望する人全員にとりあえず描いてもらいますね」とおっしゃられて。なんと50点以上のイラストを送ってくださったので、毎回そこからマイティさんの原稿に合うものを選ばせてもらうことにしたんです。

活動の機会を限定させない関わり方など、やり取りの過程にも学ぶことがたくさんありました。

【画像】街並みのイラスト。運河のむこうに窓のある色とりどりの建物が並んでいる
(イラスト:Emiko Nakayama(板橋区立小茂根福祉園))
佐々木

メディアを運営していくなかでさまざまな人に出会って、そこからさらに文章、イラスト、企画そのものに関わってくださる方も幅が広がったのかなと思います。認定NPO法人〈クリエイティブサポートレッツ〉など、いくつかのシリーズにまたがって登場される場所も増えてきました。僕は特にムラキングさんの連載、『ポロリとひとこと』がすごく気になってます。

中田

ムラキングさんの……といいつつ、毎回なぜか〈レッツ〉のスタッフ・水越さんや編集部員を含めた、浜松市内での座談会になっているんですよね(笑)。実は最初、お願いしようと思っていたのは詩の連載だったんです。でも、ムラキングさんが「やってみたいけれど、インターネット上に自分の何かが残っていくことに怖さもある」と悩まれていて。

その不安も含めて、どうすればいいか一緒に考えましょう、と打ち合わせを繰り返していくうちに、プロセスも含めて記事にすることになりました。取材と取材の間にもオンラインで定期的にお話しして、お互いを少しずつ知りながら今も進めています。

垣花

テーマに関する話だけをストレートに聞くのではなくて、「誰と、どこで、どのように共に過ごすか」を模索している連載ですよね。「編集後記」でそこの葛藤を残しているのも私はいいなと思っていて、最後の文章から、中田さんや岩中さんがどう悩んでいたか、その場で何を感じたかが伝わってきます。

中田

第4回の「表現をめぐる葛藤」の編集後記なんかは、すごく長くなっちゃったんですけどね。でも、メディアとして“表現者”を紹介することの意味には、ちゃんと向き合いたいと思っていて。「この人はアーティストです」と打ち出すこと自体、その方の重荷になることもあるし、いち側面だけを切り取ることにもつながります。

一方で私は、やっぱり“表現”や“表出”という行為が、人が生きていくうえで手放せないものでもあると感じるんです。そういった揺らぎのあるテーマについて、ムラキングさんが胸の内を開いて語ってくださったのはすごくありがたいなと思って、あの編集後記を書きました。

【写真】ムラキングさんほか数名がテーブルの上の紙に向かって手を合わせている
(撮影:鈴木竜一朗)

場やモノの力が、新しい読者との出会いを広げる

佐々木

2022年を振り返るなかで、今日もう一つ触れておきたいのが、取材対象者だけでなく「読者」との出会い方も広がった1年だったことです。創刊1周年を記念して行った4月の「のんびり縁日」と、11月にBONUS TRACKで開催した「イッピン市」は、ウェブマガジンの〈こここ〉がオフラインの場を持つ、貴重な機会になった気がしていて。

ちば

リアルの空間ならではの、偶然の出会いはおもしろいですね。いつもならクリックしないと辿り着かない情報に、たまたま散歩をしている方、近くに遊びに来た方、あとは何かモノ自体や場にいる人が持つ力に引き寄せられた方にも触れてもらえるというか。

もちろん、普段なかなか会えない〈こここ〉の読者にも会えるのもうれしいです。「こういう人が読んでるんだ」「ここをおもしろいと思ってくれるんだ」と感じられたのは、すごくエネルギーになりましたね。

【写真】会場の様子。編集部スタッフや来場者が思い思いに過ごしている
(撮影:ただ(ゆかい))
中田

リアルのイベントも、場という意味では重要なメディア(媒介)だと思っています。そこで、なかなかお目にかかれないアイテムに出会ったり、編集者と記事の感想を話したりできる。「実は『こここなイッピン』の記事を楽しみにしてます」という方が何人も来てくれるのが、私はすごくうれしいです。

岩中

福祉施設発、と知らずに見たり買ったりする方も結構いらっしゃるんです。それから、たとえば「ハハハノハコ」のようなアイテムが、その場でものすごくいろんな会話を生んでいるのも見ましたね。“モノ”の持つ魅力の一つに、コミュニケーションを生むってこともあるなと思いました。

岩中

あとイッピンの記事企画では、一般的な知名度などより、モノ自体のおもしろさ、ユニークさを大事にしています。なるべく自分の目で見たり、使っている方の声を聞いたりしてから、思わず手に取りたくなりそうなアイテムを掲載するようにしていますね。

「何でこれがつくられたんだろう」と思うようなモノって、それが生まれたプロセスや、制作者の方とスタッフの方の関係性などにも固有のストーリーがあるんです。まだあまり知られていないようなアイテムも含め、もっと幅広く紹介していきたいです。

佐々木

「幅広く」という方針はもう一つ、『ニュース&トピックス』にも言えますよね。1年で100本以上、新しい展覧会やサービスから、書籍、中長期的なプロジェクトまで、改めて見返しても多岐に渡っています。

ちば

福祉施設そのものの取り組みではない情報も、今年はずいぶん紹介させてもらった記憶があります。施設の外で行われているプロジェクトや、制度的に「福祉」とされる領域ではないけれど、「個と個で一緒にできること」とつながりがありそうなイベント、新しい切り口を持つメディアとか。

中田

「クリエイティブマガジン」として、映像や舞台などの創作物だけでなく、ビジネスパーソン向けのイベントや、スマホアプリなどのテクノロジーについても紹介してきました。

また新しいカテゴリとして、複数の調査データなどから一つのテーマを掘り下げる「トピックス」も増やしましたね。『ニュース&トピックス』コーナーは、サイト上でも目立つように調整をしたので、来年に向けてもっと広げていけたらと考えています。

メディアの機能を高めながら、協働できる関係へ

佐々木

2021年4月のスタート以来、連載や新コーナーがどんどん増えてきたなかで、サイトを2022年11月にリニューアルしたんですよね。

中田

基本的には、読者側と私たちつくり手側、双方の使いやすさを考えた改善です。メニューに「すべての記事」「すべての連載」の一覧を追加したり、先ほどもあったニュースの位置を変えたり、各記事でより関連記事を見やすくしたりしました。〈こここ〉がより読まれるよう、外部配信先の追加もしています。

中田

また、「サニーバンク」というアクセシビリティ診断サービスを利用して、さまざまな特性を持つ方にサイトを評価いただきました。実は〈こここ〉立ち上げ当初から、アクセシビリティの配慮についてはサイト制作の〈株式会社Shhh〉さんに相談していて、「しばらく運用してからチェックをかけ、そこでもう1回ブラッシュするほうが、本当に使う人のためになるんです」と教えてもらっていたんです。

なので、創刊前からこのための予算を組んだ設計にしていた。これはすごくよかったねと及川さんと話していました。

及川

視認性もよくなったし、トップページのローテーションを含め見せ方のバリエーションも広がりました。あとは今回の改善で、『こここインデックス』を今まで設定できなかった記事群にも紐付けられるようになっています。 たずねた場所や活動などを一覧で表した『こここインデックス』は、メディア運営にとって大切な機能なので、それがより活用されることを期待したいですね。

実際に〈こここ〉では、出会った専門家やクリエイターの方々と協働して、さまざまな課題に向き合う「ラボ事業」も行っています。この1年で、新たに行政の取り組みのお手伝いをしたり、企業から記事づくりの依頼をいただいたり、今もイベントの運営や企画の相談を受けたりしてきました。みなさんと相談しながら、来年もちょっとずつ連携を強めていきたいと考えています。

中田

〈こここ〉を通じて出会った人と、いろんなプロジェクトをご一緒できたら、というのは当初から一つのテーマでした。ちょっとずつですが、施設の方からライターさんやフォトグラファーさんまでいろんな人とチームになって、ある特定の課題を解決していくような試みが始まっています。

具体的なお披露目は来年以降になりますが、メディアからそういった動きにつながる仕掛けを、コツコツと増やしていけたらと思っています。

岩中

メディア運営という意味では、今年は〈こここ〉の編集方針を定める「コンパス」の見直しも行いました。大切にしていた「倫理」「遊び」「所在なさ」を、「倫理」「遊び」「揺らぎ」に変えたり、1年経験してきたぶんをきちんと更新できたのが私はよかったなと思っています。

どうしても「福祉」や「クリエイティブ」など幅のある言葉をテーマにしているだけに、その解釈をみんなで話すのはすごく大事だなって。もちろん正解はないですが、そのなかで私たち自身が揺れながら、読者の人ともどう一緒に遊ぶか、もっと来年考えていけたらと思います。

佐々木

「遊び」は課題の一つだなと僕も感じてます。特に自分自身が地方からリモートで関わっているので、うっかりすると頭の中だけで物ごとを考えてしまう。身体性とか、手触りのようなものを感じて「遊ぶ」機会も大事にしながら、場所や時間を超えられるウェブメディアとして〈こここ〉の価値を届けたいです。

ちば

リアルイベントをやったり、「LINE」での記事配信も始めたりしていますけど、〈こここ〉というメディアを届ける工夫として、もっとできることがあるはずです。取材以外でもどんどん人に会っていくとか、新しいことを3年目も積極的にやっていければいいなと思います。

垣花

こういうプロジェクトって、短期間やって終わりではなく、続けることも大切だと思うんです。〈こここ〉という場でさまざまな人が出会って、考えて、悩んで、間違えて、怒って、悲しんで、よろこんで、学んだプロセス含めどう残していくか。どう共有していけるのか。携わる人が無理せず続けていける方法を具体的に考えていきたいなと、今日振り返りながら改めて思いました。

 

記事では紹介できなかった取材写真

〈やまなみ工房〉の取材では、それぞれのフロアでスタッフの方に対応いただくなかで、その関係性が垣間見えるシーンが何度もあった(撮影:進士三紗)
作家・川内有緒さんとTHEATRE for ALL・金森香さんの対談のアフターショット。川内さんの映画作品などを通じ以前から関わりのあるお2人ですが、直接お話ししたのはこの日が初めてだそう(撮影:川瀬一絵)
〈日本デザイン振興会〉の連載『デザインのまなざし』で、インクルーシブなものづくりの形を目指す〈NPO法人motif〉井上愛さん、愛知県立芸術大学の本田敬さんをたずねました。井上さんが手にしているのは、デジタル工作機による刺繍の軍手です(撮影:進士三紗)
妄想恋愛詩人・ムラキングさん(写真右)による連載「ポロリとひとこと」では、毎回詩のワークショップを実施しています。「居場所」がテーマの第3回、記事中では紹介しきれなかったのですが編集部・垣花つや子(写真左)も詩を書いていただきました(撮影:鈴木竜一朗)
「まるっとみんなで映画祭 2022 in NASU」野外上映の会場となったGOOD NEWS NEIGHBORSには、さまざまなショップなどが集まる。写真は、規格外の花に価値をつける取り組みをしている「Norfolk Gallery by Dear,Folks&Flowers」のアイテム(撮影:加藤甫)
〈こここ〉の創刊1周年イベント「〈のんびり縁日〉へようこそ」で、会場の隅っこに置かれていたキャプション。マルシェや喫茶、本棚、ゲームコーナーなどいろいろな企画があったけれど、実は「会場内をうろうろしている編集部」もコンテンツだった……らしい?(撮影:ただ(ゆかい))

〈こここ〉2022年公開記事の制作に携わっていただいた方々

執筆 : アサダワタル、五十嵐大、ウィルソン麻菜、遠藤光太、遠藤ジョバンニ、大島悠、大政愛、北川由依、齋藤陽道、庄司智明、白坂由里、新澤克憲、南雲麻衣、たばたはやと、塚田真一郎、友川綾子、生湯葉シホ、ハーモニー新聞部、林貴代子、福井尚子、福本理恵、マイティ(佐藤麻衣子)、ムラキング、森田かずよ、もりやままなみ、もろずみはるか、矢島進二
(ご寄稿者を含む)

撮影 : 加藤甫、川島彩水、川瀬一絵、進士三紗、鈴木竜一朗、高倉夢、ただ(ゆかい)

イラスト : おおえさき、くぼやままさこ(HUNKA)、板橋区立小茂根福祉園(Emiko Nakayama、Shota Taguchi、Takashi Sagara、Takizawa Tetsuya、Yamato Furukawa、Yu Kiyosawa)、しかとまいこ、惣田紗希、富樫悠紀子、ミカヅキユミ、間弓浩司

プロップスタイリング : 堀千夏

モデル協力 : ライラ・カセム

翻訳 : 和田夏実

アドプランニング : 栗城慶一

アクセス解析 : 絹川憲人


Series

連載:こここインタビュー