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【イラスト】ハーモニーの日々新聞【イラスト】ハーモニーの日々新聞

それぞれのお墓事情から見えかくれするもの 私のお墓の前で〜♪ 前編 いたずらに人を評価しない/されない場所「ハーモニー」の日々新聞  vol.06

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ふしぎな声が聞こえたり、譲れない確信があったり、気持ちがふさぎ込んだり。様々な心の不調や日々の生活に苦労している人たちの集いの場。制度の上では就労継続支援B型事業所「ハーモニー」。

「ハーモニーの日々新聞」と題し、そこに関わる人の日常・出来事をよもやま記していただく連載

第6回は、メンバーそれぞれのお墓事情について、綴っていただきました。

誰かの家族の老いや死が珍しくないものとして日常に溶けこみはじめている

2021年、晩秋の日のこと。日々新聞でも御馴染みの金ちゃんとヒロちゃんが厨房のカウンターで話していました。

金ちゃん

「うちのオヤジの墓参り行こうと思うんだよ。納骨以来、行ってないしさ。」

ヒロちゃん

「一緒に行ってもいいよ。おとうさんには世話になったしね。10年くらい前のお正月、おとうさんが一人暮らしで頑張っていた頃、金ちゃんと遊びに行ったことがあったよねえ。」

金ちゃん

「そうだっけ?」

ヒロちゃん

「うん。手作りの韓国料理を振舞ってくれたんだよ。うどんにカマボコに鶏肉にモチでしょ。それから野菜も盛りだくさんだったなあ。」

金ちゃん

「オヤジ、年をとっても、一人暮らしを頑張ってたもんなあ。」

ヒロちゃん

「とてもしっかりした逞しいおとうさんだったね。仏教徒の僕がお参りに行ってもいいんだったら行かせてもらいたいなあ。」

金ちゃん

「新ちゃん。コロナだけど墓参り大丈夫ですかね。」

新澤

「墓参りは屋外だし。マスクして黙食と手洗いに注意していけばいいんじゃないかしら。いままで、ずっと我慢してきたんでしょう。おとうさんの最後の入院の時も、新型コロナのおかげで十分に面会ができなかったし、お参りに行くのは金ちゃん自身のためにも大事だと思います。」(※注1)

金ちゃんの父上のお墓は遠くの都立霊園にあります。その霊園の中にクリスチャンの共同墓地があり、金ちゃんの母上や教会の人たちと共に父上は眠っています。信者のグループに合流してお参りに行くという話でした。

私自身も秋分の頃に母を亡くしたばかりで、お墓をどうしようかと思案中でした。そこで、お二人に都立霊園に行ったらどんなところだったか教えてねとお願いしたのです。

ハーモニーのメンバーの平均年齢は、すこしずつ上がって56〜57歳になりました。60前後の何人かは親の介護や看取りの時期に差しかかっています。高齢者介護施設ではないので頻繁ではありませんが、それでもハーモニーの日常の中には誰かの家族の老いや死が珍しくないものとして、溶けこみはじめています。

※注1 金ちゃんと父上のお話はこちらに書いています。
【超・幻聴妄想かるた、できました 新澤克憲】第14回 僕らはみんな生きている(その8)  名前を書く

お墓の中には、もう僕の両親はいないって実感できたんです

何週間か後の日曜日のことです。金ちゃんからメッセージが入りました。

「寿司、食ってます!」

なんだ、なんだ?!

「これから、ヒロちゃんと墓参りなので、景気づけです!!同じ教会の人たちに同行することになりました。」

なるほど…。その日は一日、お二人から次々に墓参りの写真が送られてきました。

【写真】共同墓地の前にある道路、車が一台止まっている
【写真】さまざまなお墓が敷地内に並んでいる
【写真】共同墓地の前の金ちゃん
共同墓地の前の金ちゃん
【写真】石碑に「我は復活なり 生命なり 我を信ずる者は 死ぬとも 生きん」と刻まれている

一日がかりの遠出だったようです。帰ってきた二人にどうだったか聞いてみました。

ヒロちゃん

「遠かったですね〜。東京を横断した感じです。びっくりしたのは、同行したクリスチャンの方たちの明るさでした。皆さん讃美歌を歌って霊を弔い、その歌声が真っ青な晴れ上がった空に溶けていくみたいでした。」

金ちゃん

「霊園は広かったです。世田谷でいうと羽根木公園の3倍はあるんじゃないかなあ。そのなかで教会の墓地は最近、改装されたので、真新しい白い塗装が美しかったです。」

新澤

「やっと、お参りできましたね。よかったよかった。ご両親に再会した感じでしたか?」

金ちゃん

「それがね!帰ってきてから頭の中にこの歌が聞こえてくるんですよ。」

そういって、金ちゃんは歌いはじめました。

【イラスト】歌を歌う金ちゃん
金ちゃん

「♪わたしのお墓の前で〜♪」

私のお墓の前で 泣かないでください そこに私はいません 眠ってなんかいません 千の風に 千の風になって あの大きな空を 吹きわたっています

(千の風になって 作詞:不詳*/日本語詞・作曲:新井満) *一説には、Mary Frye
金ちゃん

「なんだかねえ。あの墓の中にお骨はあっても、そこにはもう僕の両親はいないって実感できたんですよ。」

なるほど…父上は風になって、空を吹き渡っているのか。

家族を亡くしたばかりの自分には、新鮮に聞こえる言葉でした。

そんなふうに金ちゃんが感じるのはどうしてだろう。その背景を知りたくて、お話しさせてもらいました。彼自身の信仰のこと。一緒に行った信者さんたちの底抜けの明るさ。朝鮮半島に出自をもつ父上の望郷の想いなど。色々と聞かせてもらいました。

そして「教会の共同墓地があったからよかったけれど、そうでなければ父方も母方も僕には『我が家の墓』ってないんですよね」と彼は言いました。

この言葉は、母の死を契機に「墓」のことを考えはじめていた私の中にストンと落ちていきました。

家族の最期をどう弔うのか、自らの最期をどうしたいのか。両親の介護に直面し自らの老いを自覚しはじめたハーモニーのメンバーたちは、「お墓」や「死」について何を考え、どんなふうにこれからの人生を過ごしていこうとしているのか。そんな話をしてみたいなあ。それが、今回の新聞部のテーマです。

そこで、急遽、新澤の提案による新春特別座談会の開催です…。

お墓ってなんだろう?

新澤

「先日、金ちゃんがお父上のお墓参りに行ってきたそうです。みなさんのうちのお墓のこと聞かせてくださいな」

最近、ハーモニーに仲間入りした、さちこさんです。

さちこ

「うちは先祖代々のお墓があります。おばあさん、おじさん、おばさんのお骨もそこに納められています。もし、私に何かあったらしっかり者の妹がそこに入れてくれると思います。」

じゅんじさんは、家族と離れて一人暮らしです。

じゅんじ

「長野の実家の側に先祖代々のお墓があり、自分もそこに帰るのが自然かな。最近、コロナで帰省できてないのが残念なんですけどね。」

ぷすけちゃんはキリスト教の信者です。

ぷすけちゃん

「実家の墓は所沢の霊園で父や妹が眠っています。そこは姪っ子が管理するんじゃないかな。自分は家内がカトリックなので二人で横浜の墓地に入るのもいいなあ。」

新澤

「なるほど。上の世代から引き継がれた墓所があって、父母や自分もそこに埋葬されるという昔からの形でいこうという人たちも当然いますね。

一方、先祖代々の墓が遠かったり、親戚づきあいの大変さを考えて、新たに自分たちの墓を購入したりする人が増えたとも聞きます。」

トムさんも東京での単身生活が長くなりました。

トム

「はい。宮崎に墓があるけど、あんまり自分が入るって気持ちにはなれないんです。東京が長いからなあ。東京の墓といってもお金がかかりますかね。骨を東京に半分、宮崎に半分に分ける分骨というのはどうかなと考えたりしています。」

実はお墓参りが大好きな田中さんも言います。

田中

「はい。うちは先祖代々の墓はあるにはあるのですが、亡き父とおばさんが終活を頑張って樹木葬のお墓を買ったのです。そこに残された母と僕も入れてもらえることが決まっているんですよ。万一、高齢の母が亡くなったとしても、埋葬する場所が決まっているのは安心ですよ。」

トコちゃんは最近、相次いでご両親を見送りました。三人兄弟の末の妹です。

トコちゃん

「うちも母が公園墓地を買ったのね。最近、相次いで亡くなった父母はそこに入っています。私もそこに入る予定です。でも、私の考え方は昔風かもしれないけれど、お墓は代々、継いでいくものだとも思うんですよ。男の子が継いでいくのが本当かもと。」

家系と墓じまい

新澤

「トコちゃんのいうような男子が家を継いでいくという考え方と日本のお墓って密接に関係があるのは確かですね。

でも、ハーモニーの亡くなったメンバーでも、何年かぶりにお墓参りに行ってみると墓じまいをされて合祀・合葬されている場合がありましたよね。核家族で子どもが少ない中で、子どもたちが継ぐのも難しい時代でもあります。」

公園清掃では大活躍のK2さんも言います。

K2

「そうだねえ。僕の場合は、区内に実家の墓はあって父や母はそこに埋葬されているのだけど、僕以外には姉と妹しかいないのと、僕の後にも子どもがいないから墓じまいの話は出てるよ。」

ミチコさんは、時々、ホームに入居中のお母さまの話をしてくださいます。

ミチコ

「私は結婚していて、自分は婚家のお墓に入るつもりですが、実家の方は墓じまいをしました。すでに埋葬されていた祖父は合同墓地に、洗礼を受けた父は富士霊園のクリスチャンのお墓に移し、お墓を閉じました。」

お姉さんと二人暮らしが長い小川さんです。

小川さん

「うちは1回墓じまいをして、そのあとロッカーが当たったんで、お母さんがそこにいます。お寺にあるロッカー式のお墓です。管理費は5年で1万1千円。」

サイヤ人さんも世田谷で家族と暮らしています。

サイヤ人

「うちから徒歩5分のところに先祖代々の墓があります。幸いうちは同居している父も母も健在ですが、自分が継ぐのかなあと思ってはいます。母は家には独身の僕しか残ってないから、これからどうしようかとも言ってます。」

家族同居と単身生活

新澤

「そうか。お墓の難しいところは、それぞれの境遇と関係があるところかもしれない。家族がいれば家族の気持ちも考えなくてはいけない。一方、単身者には自分が死んだ時はどうしようという宿題が残されちゃうような気もするし。」

最近、ハーモニーに参加したシナクソロウさんです。

シナクソロウ

「わかります。実のところ、この歳になって実家や親戚との付き合いは気が重いことも多いんですよね。でも、勝手に聞こえるかもしれないけれど、自分の行き先(実家の墓)があるというのは安心できる気もするんですよね。」

姫さんとこまねずみさんのご夫婦です。

「私一人だったらどこに葬られてもいいと。死んだら何もなくなっちゃうし。でも、結婚してからは夫婦いっしょのお墓がいいなあと思ったりもするよ。」

こまねずみ

「はい。姫さんの夫としても夫婦が同じところに葬られるのが望みです。ただ、その形が実家の思いとすれ違うと厳しいですね。今も自分たちを応援してくれる父の思いもあります。父の気持ちも大事にしたい。」

新澤

「ふむふむ。他に家族のことで言っておきたいことはないですか?」

小岩さんは、いつも健康に気をつけていますが、自分の最期のことを気にかけています。

小岩さん

「姉貴がいるけど、俺は関係ないね。俺は先祖代々の墓に入ることになってるんだ。俺が死んだら、スタッフから坊さんに電話してほしいんだよ。そうしたら迎えにくる手筈になっているから。」

介護保険の年齢に入ったEさんも常に不安がある様子。

Eさん

「単身生活ですが、実家と不仲なので家族の墓には入れてもらえないんです。それで懇意にしてもらっているお寺さんとお約束をして、そちらのお寺のお墓に引き取ってもらえることになっているんです。私もお寺に連絡お願いしますね。」

新澤

「なるほど。その時のために準備している人がいるんですね。一人暮らしの人たちは万一に備えて、自分がどうしてほしいかを回りに言いふらしておくのが大事かもしれない。小岩さんも、Eさんも安心してください。ちゃんとお寺の連絡先をハーモニーのスタッフは知っていますよ。」

<後編につづく>

編集後記

金ちゃんの墓参りと私自身の個人的事情をキッカケに始まったメンバーの「それぞれのお墓事情」のお話、いかがだったでしょうか。

個人的な事情を先に言えば、日常では、長男が墓を継ぎ、女性は嫁ぎ先の墓に入るという慣習や名字(=氏)によって人々の生き方、死に方を決めていくシステムはとっくに破綻してるなどと言っているくせに、母の死により目の前に「先祖代々の墓」が見えてきて狼狽しているといったところでしょうか。

もちろん、メンバーたちは千差万別。お墓を考えはじめると「核家族」と「少子化」という社会の大きな流れに加え、一人ひとりが抱えている気持ちと事情が見えかくれします。「家族」であったり「お金」や「宗教」だったり。そして「生活保護」という制度の壁も。

後編は、メンバーたちの死生観から始まり、「お墓がないよ!」という人たちの声も紹介したいと思います。

それから、今回の座談会ですが、いまだに収束の兆しを見せない新型コロナウイルスの蔓延に伴い、ハーモニーでもみんなが一堂に会してのミーティングは1年以上も開けていません。それで、オンラインミーティングをしたり、対面でも1~5人程度の話し合いを何度も開いて、その言葉から抜粋し、再構成しています。以前の調子に乗ると脱線続きで収集のつかない大人数のミーティングが懐かしくて恋しいです。はやく再開できるといいのですが。

そんなわけで次回もお楽しみに。

【イラスト】ハーモニー新聞部メンバーの顔イラスト

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連載:いたずらに人を評価しない/されない場所「ハーモニー」の日々新聞