福祉をたずねるクリエイティブマガジン〈こここ〉

【イラスト】「いらずらに人を評価しない/されない場所ハーモニーの日々新聞」という題字が書かれている【イラスト】「いらずらに人を評価しない/されない場所ハーモニーの日々新聞」という題字が書かれている

コロナ禍で変わったこと、変わらないこと、はじめてみたこと(後編) いたずらに人を評価しない/されない場所「ハーモニー」の日々新聞  vol.14

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ふしぎな声が聞こえたり、譲れない確信があったり、気持ちがふさぎ込んだり。様々な心の不調や日々の生活に苦労している人たちの集いの場。制度の上では就労継続支援B型事業所「ハーモニー」。「ハーモニーの日々新聞」と題し、そこに関わる人の日常・出来事をよもやま記していただく連載です。(編集部 垣花)


こんにちは。コロナ以後の日常についてメンバーに聞いてみる「コロナ禍で変わったこと、変わらないこと、はじめてみたこと」の後編になります。

前編に出てくる「人と人の間にある膜」。日頃からメンバーたちの話を聞いている私にとっても新鮮な言葉でした。2世帯住宅の階上に住むお兄さん家族との日常のやりとりがコロナ禍によって思うようにならないことを「膜」と表現するメンバーのとこちゃんの言葉のセンスもさることながら、それを人が柔らかな泡の中に閉じ込められたようなイラストで表現した富樫さんのイラストも秀逸です。

考えてみるとマスクも「人と人の間にある膜」かもしれません。前編のもう一枚のイラストでは田中さんとマッサンがマスクの下で笑ったり口を尖らせたりしていますが、ここではマスクは自分をカモフラージュし安心できる覆いです。膜は時としてもどかしくもあり、人を孤独にし、時に安心できるツールかもしれません。

コロナと共にある毎日は、外界と自分の間を仕切る「膜」と共にある日々なのかもしれないと、ふと思いました。ホントにいま思いついただけなのであんまり自信はないですが。

2021年の11月のこと。ハーモニーのメンバーたちは文化活動家 アサダワタルさんや仲間たちと「新しい生活様式を送る私たちの実感と人力のスライドショー(※注1)」と名付けたイベントを行いました。

演出はアサダさん。ハーモニーにスタジオを作りオンライン配信を行いました。前半ではハーモニーのメンバーが日常で撮影した写真を「人力スライドショー」で映し、撮影したメンバー自身がコロナ禍での新しい生活についてアサダさんに語るのです。(ぜひ動画をご覧ください

スライドショーの素材になったのは、メンバーひとりひとりが撮影した日常の写真です。ハーモニーや自分の家の内外の様子、親しい人々や街角の風景や趣味の品々。 少しだけ垣間見ることができたメンバーひとりひとりの生活の風景は具体的で、多様で、私には、ちょっと寂しくて、ユーモアに溢れたものに感じられました。そこにはひとりひとりの確かな生の実感がありました。「新しい生活様式」とコロナ禍の前と後とを区切ってみても、実際のところ一人ひとりの「膜」の内側の世界は変わらず瑞々しくそこにある。そのことをこのイベントを通じて私は再発見したのでした。

※注1:このプロジェクトは、東京都、公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京、特定非営利活動法人Art’s Embrace、国立大学法人東京芸術大学が主催するアートプロジェクト「TURN」の一事業「TURN LAND」として実施されました。

前置きが長くなってしまいました。そろそろ後編を始めましょう。実はハーモニーには実際にコロナウイルスに感染して苦労したメンバーが何人かいます。後半は彼らの話に耳を傾けるところから始めます。

メンバーたちの療養日記

新澤

「最初はクミコさんです。クミコさんは緊急事態宣言の頃には不安を口にされることが多かったのを覚えています」

クミコ

「そうなんですよね。最初の緊急事態宣言の時は怖かった。感染することも感染して人にうつすのも怖くて外に出なくなりました。問題は受診です。精神科の主治医に電話して4週に1回の通院にしてもらいました。ところが受診間隔を4週に1回にしたら、先生に会えないことで不安が強くなった。薬をもらうだけでなくて先生の顔を見るのも自分にとって大事なことだったんです。これは随分ときつかった。結局、2週に1回で落ち着きましたけど」

新澤

「家から出られないので、いろいろと工夫しましたね」

クミコ

「はい。そこで自分の家で出来ることをと思い、絵を書きました。それから写経しました」

新澤

「両方ともハーモニーの活動として、公開させてもらいました」

ハーモニーのコロ休み特設ページ:「Gallery」「ただいま写経中

クミコ

「写経は昔、病院のOT(作業療法)でやったことがあるんですよ。沢山書きました」

新澤

「何をやっても、トコトンやるのがクミコさんですね」

クミコ

「最近は編み物かなあ。90~100センチのものを半年で25本作りました。なにかやっていないと煮詰まってしまいますね」

【写真】クミコさんが編んだものが3種類置かれて机に並んでいる
新澤

「趣味を充実させて、コロナ禍を乗り切る作戦だ」

クミコ

「はい、それなのに、なんと(2022年)12月末にコロナウイルスに感染してしまったんです。鼻づまりになって、あれれと思っていたら夜になって体温が38.5℃でした。翌朝、ハーモニーからもらった検査キットで陽性が出て驚きました。訪問看護師さんは感染者の所には来てくれないのだけど、実際に罹ってみると、いろいろ情報があったのでそれほどの不安はなかったです」

新澤

「わあ、ずいぶん気をつけていたのにね。回復されてよかったです。クミコさんありがとう。続いてはまさるさんです。緊急事態宣言の頃はどうでした?」

まさる

「本当に行くところがなくて手持ち無沙汰でした。ハーモニーも閉まっている時期があったり、趣味でやっていた卓球もできなかったね。残念なのは近所の居酒屋が軒並み、閉まってしまったことです」

新澤

「やることないと困っちゃうねえ。まさるさんは趣味が豊かなので、退屈していないかと思った」

まさる

「歌が好きなので市民合唱団に参加したんですよ。年末に『第九』をホールで歌うの。第4楽章のみでピアノの伴奏で60人の合唱隊がね。でもコロナで事前の練習ができないでしょ」

新澤

「うん。そうだよね」

まさる

「それぞれで譜面を用意して当日、ぶっつけ本番(笑)」

新澤

「それで、早さとかタイミングとか、合うものなの?」

まさる

「あわないよ(笑)」

新澤

「あわないけどやっちゃうんだ(笑) なかなかスリリング。ところで、まさるさん自身が感染した時はどうだったのですか」

まさる

「うん。おかしいなと思って発熱外来のあるかかりつけの病院に行って検査しました。重たい風邪という印象でした。東京都からの支援物資はなぜか来なかった」

新澤

「どうして、来なかったのかなあ。それで、まさるさんの生活全般はコロナでどんなふうに変わりましたか」

まさる

「貧しくなった感じ。だっていつもと同じものが同じ値段で買えなくなったでしょ。ヨーグルトとか196円で買えていたものがいつの間にか211円になっているんだよ。ハーモニーの昼食は230円で食べられたけれど、ハーモニーのお昼ごはんが中断して自分で作ってもそんなに安くはできない」

新澤

「それは世界的なコロナの流行とウクライナの戦争の影響かもしれないですね」

DRG57

「あのね! 私のところは、おかあさんにもうつってしまいました」

新澤

「そうでしたね!」

DRG57

「下北沢に行ったのが良くなかったの。陽性になった後、精神科のクリニックで解熱剤など貰いました。気を付けていたのに母にもうつってしまいました」

新澤

「気をつけていても感染するのは仕方ないと思いますよ。だれが良くて誰が悪いという話しではなくてね。次は金ちゃん。金ちゃんは緊急事態宣言後から、一人でいる時間をもてあましていたようですね」

金ちゃん

「はい。最初は散歩行ったりしていました。ほんとにやることがみつからなくて、神社の境内でギター弾いて怒られたり」

新澤

「そうそう、散歩してもらって、ハーモニーのページにも『きんちゃん放浪記』として連載しましたっけ。あれは評判よかったです」

金ちゃん

「それでもコロナになって生活習慣が崩れてそのまま立て直せてない感じです。まさに悪癖とでもいいましょうか。夜中に目が覚めて、空腹なのでコンビニに唐揚げを買いに行って食べたりタバコが増えたりして金欠になりました。

やることがないので夕方の6時には布団に入ってしまい深夜の2時には目が覚めてしまう。

それで、だらけた生活が続き教会にも行けなくなってしまい、自分の大事にしていた信仰生活が崩壊してしまったのも大きいです」

新澤

「でも、金ちゃんの家には友人が来ることが多かったですよね。それでも足りなかった?」

金ちゃん

「時にはマスクをしっかりしてもらって、うちで話したりしますが。それでも自分の生活が崩れることで気が荒れてしまいました」

新澤

「自分の生活が乱れるとどうして気が荒れちゃうのかな」

金ちゃん

「お金がないのもありますし、タバコも増えてしまいます。自分の思うような生活を送れないとイライラしてしまい、怒りっぽくなります」

新澤

「それで友達の小さなことが気になると……」

金ちゃん

「はい。小さなことが許せなくなるんですよね。そうやって友達と反目しながらも、それなのに友達と出掛けて、マスク無しでカラオケで絶唱してコロナに感染してしまいました」

新澤

「それは困りましたね」

金ちゃん

「友達から感染したかもと連絡をもらっていたのに、他の友達を自分の部屋に呼んだりしてしてしまって、それでもうつさなかったのはラッキーでした。本心では僕は神様に守られているので、マスクしなくても自分はかからないと思ってたんですよね」

新澤

「ええ!?」

金ちゃん

「それが、不思議なことに感染してしまいました。これからは気持ちを入れ替えます」

新澤

「あれえ、神様!! ハーモニー内で流行ってしまわないように十分な配慮をお願いしますよ。みんながみんな神様に守られてるわけでもないですから」

金ちゃん

「は~い」

最近、何食べてます?

日常の健康を支えている大事なこと。それが食事です。コロナ禍の到来で食事はどのように変わったでしょうか? ハーモニーの特徴に食事をあげる人は多いです。

コロナ以前は年間240日ほどスタッフの手作りの昼ごはんを食べられたのですが、様々な理由から2020年から中断したままなのです。メンバーたちからは安価で、栄養のバランスのいい食事がとれると好評でした。人々が集まってテーブルを囲む(ハーモニーにはカウンターもあるけれど)のは、そこを自分の居場所と感じるためには大事なことだったと今更ながら思います。

一時期は家族でも黙食やマスク会食が求められることもあった風潮の中で、みんなの食事の風景を教えてもらいました。

袋小路犬太郎

「コロナ前にはハーモニーには毎日でも来ることができて、食事を摂れたので、食べながらメンバー同士が自由に交流できたり、個性豊かな調理スタッフさんたちと話ができました。それができなくなったのは残念です。今ではうちで食事をとることが多いです」

このんちゃん

「麺類をご飯に変えました。うどんは、お腹がすくのでご飯を炊くようにしたんです。お腹がすくと言ったらヘルパーさんと主治医にアドバイスされたんです。コストは同じくらいかな。好きなメニューは卵かけごはん(笑)」

トム

「外食が少なくなったかな。スーパーで買物して家でご飯食べたりね。刺身やアジフライ、ギョーザが多いですね。あと納豆やキムチも。それで健康になったのかな。最近、血管年齢28歳っていわれました」

岡村

「お金が入った時に、食材を買っておいて自炊もするようになりましたね。安上がりなんですよ。蕎麦やパスタを茹でたり、オカン直伝のヤキソバを作ります。ヤキソバはあらかじめ、麺を1分間、レンジでチンするのが秘訣なんです。おいしくできます。おすすめ」

E

「コロナコロナというけれど、その前からお金がなくて節約生活だもの。私はできるだけ以前と習慣を変えないようにしてるんです。外食するのが好きではないので、相変わらずお弁当を買ってきて食べていますよ」

新澤

「なるほど。マイペースを維持している人もいるのですね」

こまねずみ

「僕の生活よりも世の中の仕様がすっかり変わってしまったからなあ。あえて言うならば、生活のリズムが以前とかわったかな。それで夜中にどうしても目が冴えちゃう。ま、困ったことばかりでもない。これ幸いと、夜中の時間を使って本を読んだり、動画を観たり」

新澤

「うん、よかったじゃないですか。食事はどうなりました」

こまねずみ

「それがねえ…….最初は良かったんですね。自分の時間を満喫したから。でも夜中に起きていることで、睡眠不足で翌日の体力がきつくなったり。カップラーメンを深夜に食べるんで、お金がなくなったり、実は踏んだり蹴ったりです……というわけで夜食べると太った」

「私も深夜におやつを食べますよ。昔は眠れないとすぐに眠剤だったけど、今はおやつを食べる。どっちがいいと思う?」

新澤

「うーん。眠れなくて睡眠薬が増えるのがいいか、おやつがいいのか悩ましいですね」

「おやつは、チョコパイがおいしいよ(笑)」

kagesan

「僕もコロナで太ったかな。最近、足が痛くて整形外科に行ったら、筋肉が固まって骨を圧迫しているそうです。つまり運動不足。ちょっと何とかしなくちゃね」

新澤

「確かに僕もそうだけど、太ったという人は少なくない。運動量が減った人がいる一方で外出しないとやっていけない人もいます」

マッサン

「僕は日中、家にずっといるのが苦手なんで、外に出るんです。前はハーモニーで昼ご飯を食べていたのに。コロナでハーモニーでは飲食はできなくなったので、食べる場所がなくなったんです」

新澤

「それは困りますね。居場所がなくなったということだろうか」

マッサン

「弁当を買って友達の家で食べさせてもらうこともあります。お弁当代で出費が増えたり、いつも友人宅というわけにもいかないので悩みます」

かえられないこと、かわったこと

新澤

「『新しい生活様式』などと言われ、かえたほうがいいとわかっていても『かえられないこと』だってありますよね。一方でいつの間にか『かわったこと』もあるかもしれない。そんなことがあったら聞かせてください」

マッサン

「古本を買うのは相変わらずです。これだけはね、やめられない」

トム

「もともと、歩くのは苦になりません。成城(東京都世田谷区)まで往復14キロを一日3往復したことがありますよ。混雑した電車には乗らず、結構、歩いてますよ」

DRG57

「コンサート会場やライブハウスに足を運びにくくなったとはいえ、対策をしていると思った時には行ったりします。全般的にYouTubeで楽しむことが増えたけれどね」

サイヤ人

「ネットの通販は便利ですよ。メーカーによっては専用のアプリがあったりするので楽しいです。自分のサイズを覚えていれば、サイズの間違いもないですしね。

母もスマホケースを通販で買っていました。コロナで出られないのが辛い半面、通販っていう新しい楽しみを見つけましたよ」

袋小路犬太郎

「居酒屋のバイトがなくなったので、今はマンションの掃除です。夏の暑さが辛かったので、エアコンの風が吹いているエレベーターのなかで涼んだり、床が冷たくて気持ちがいいんで管理人室の床に寝転がったりしてます。これは一人職場のメリットと言えばいえるかな(笑)」

ふみ姫

「休みになって自分はハーモニーの作業ができなくて困ったけれど、働いてお金を得ている友達も大変だったみたい。世の中の景気に左右されるので、収入が半分くらいに減ったと言ってました。今では少し仕事も上手く行っているようで、大丈夫になって休みの日には一緒に出歩くことが出来るので楽しいよ」

ミチコ

「最近、気分転換にドイツ語を始めました。昔、サッカーのワールドカップを見てドイツ語に興味をもって講座に通っていたんです。その勉強を再開しようかと思って。将来、日本にオリンピックやワールドカップが来たら、ボランティアでドイツ語ガイドしたいな」

とこちゃん

「コロナだからってあんまり引きこもっちゃうのはダメかなと思っています。最近、3年ぶりに世田谷のボロ市が復活したんだけど、久しぶりに人ごみに入ってみました」

田中

「インターネットを使って交友範囲を広げました。メンタルヘルスにまつわることに関心のある人たちのLINEでのグループ通話にハマっています。50人ぐらいが参加していて、病気のことから仕事のことまで色々と話しています。普段の交友関係とは違う人との交流もいいものですね」

E

「変わったことはねえ。コロナウイルスを警戒してスタッフが一生懸命、掃除してくれるからハーモニーがきれいになった。これはいいことね」

新澤

「アルコールで拭いているうちにあちこちがピカピカになりましたね。コロナは関係なしに掃除はしなくちゃなりませんね……。

うーん、沢山のお話ありがとうございました。みなさん、自分の状況に応じた工夫があるのですね。これからも情報交換の時間を持ち続けたいのでよろしくお願いします」

編集後記

新型コロナウイルスの流行による行動の制限は、ハーモニーの人たちの日常に影響を与えているのは確かです。

短期間にワクチンを何度も接種するなど3年前には誰が想像したでしょう。最初のうちは「とりあえず」と思ってやってきたことが、度重なる流行の波を経るうちに日常の一部になり一連の出来事が「いつまで続くかわからない」という現実が目の前にあります。これがなかなか辛い。100%思うようにならないからこそひとりひとりにとって大事なことが何であったのかを問うているような気がします。

2022年7月、ハーモニーで久しぶりに自主的なイベントを行いました。とても楽しい時間でした。その名も「答えにならない喫茶店」。ライラ・カセムさんとテンギョー・クラさんの2人が企画をたててくれました。

ライラさんは「超・幻聴妄想かるた」の制作の時から交流のあるデザイナーで「ひとり国連」を自称しています。

テンギョーさんはアートイベントのゲストとしてハーモニーを訪ねてくれた自称「ヴァガボンド」。放浪者とでも訳したらいいのか。時々、やってきておいしいコーヒーをご馳走してくれます。

公園で遊ぶDRG57さんとライラさん 写真提供:工藤由夏

ともにハーモニーの日常を知る友人たちです。今回の「答えにならない喫茶店」は、ハーモニーを喫茶店に見立て、常連客に扮したメンバーがハーモニーに縁のある人々の相談事を動画を公開するというものです。

例えば、こんな感じです。

収録風景: 左から 姫さん、こまねずみさん、kagesanさん 、スタッフの黒瀬さん

まず、司会役のスタッフの黒瀬さんが「お悩み」を読みあげます。答えるのは、姫さん、こまねずみさん、kagesanですがその場にいる人も画面の外から声をかけます。

【質問】ここ一年ほど、外食かテイクアウトのみの生活をしていたら太ってしまいました。栄養バランスを考えて自炊することにした。でも、自分は0か100の性格なので、作るとなったら頑張りすぎて、さらに作りすぎて太ってしまった。運動もしたくない。どうしたらいいでしょうか(50代の漫画家 高木ちえこさんより)

質問者は、ひとたび自炊するとなると、トコトンやり、できたものは全部食べなくては気が済まない。「ほどほど」にすることが難しいようです。「この人、炭水化物とか食べてるのかな」「ポテチとかね」と4人は口々に言います。

Kagesan

「わたしは(ポテトチップスを)2袋くらい一気に、前は食べてましたよ。ほんと」

こまねずみ

私、最近まで一日4食、食ってたので人のこと言えません。私は朝早い時間とかに腹が減ってカップ麺とか食ってた人なんで、何も言えません。飢えたら食うの一択でしたから。ははははは

Kagesan

「ユニクロに行って、もう着る服がなかったら痩せるしかないんです。僕が経験者なんですけど」

一同

「(くちぐちに)僕たちあんまり人のこと言えないですよね」

「間違ってる。(質問の)宛先を間違ってます」

テンギョーさん

「質問してくれた人は(ハーモニーの)みんなと一緒だ。(ハーモニーに来てもらって)みんなと一緒に『ほどほど』を学ぼう!」

左から、ライラ・カセムさん、新澤、テンギョー・クラさん 写真提供:工藤由夏

そんな調子で、とりとめのないのない話は続きます。相談事に答えるとは言いながら、みんな話しているのは自分の事も多いようです。それでも目の前にいない人を想像し、その人の日常に思いをはせる時間を持つこと。すぐには会えない分、相手のことを色々と想像してみること。それはリアルで会うことが儘ならなかったコロナの時間がもたらした「新しい生活様式」のひとつの形なのかもしれないと私には思えました。以前なら「みんな来てください!」と気軽に呼びかけていたなと。

2022年の末、ハーモニーで2年半ぶりに厨房での食事作りを行いました。定例化にはまだまだ道のりはありますが工夫していきます。それでは一人ひとりが、はぐれてしまわぬよう言葉を交わしながら日々を送ってまいりましょう。(新澤)

【答えにならない喫茶店】お悩み相談 0か100か編本文に掲載した部分は7分28秒あたりからです。※本動画は、東京都、公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京、一般社団法人 谷中のおかってが主催する「TURN LANDプログラム」の一環で制作・編集しました。

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連載:いたずらに人を評価しない/されない場所「ハーモニー」の日々新聞