福祉をたずねるクリエイティブマガジン〈こここ〉

【イラスト】ハーモニーの日々新聞【イラスト】ハーモニーの日々新聞

老舗の味といつか見た亀 上町よいとこ3 いたずらに人を評価しない/されない場所「ハーモニー」の日々新聞  vol.05

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ふしぎな声が聞こえたり、譲れない確信があったり、気持ちがふさぎ込んだり。様々な心の不調や日々の生活に苦労している人たちの集いの場。制度の上では就労継続支援B型事業所「ハーモニー」。

「ハーモニーの日々新聞」と題し、そこに関わる人の日常・出来事をよもやま記していただく連載

第5回は、ハーモニーがある東急世田谷線上町駅付近にある老舗の中華料理屋食レポ、メンバーのおすすめスポット紹介、水路にいるはずのない亀の話について綴っていただきました。

老舗の町中華「信華」

秋も深まり、上町の駅前商店街のイチョウもきれいな黄色に色づきました。新型コロナウイスル感染症の新規感染者数も減り、少しだけ街も浮かれている気もしますね。今回は商店街のお店に出かけて食事をしてきました。

今回の食レポは、ハーモニーのすぐ近く。道を隔てた斜め前の中華のお店です。

ご近所でも老舗として知られている「信華」。昼時には昔ながらの味を求める人たちで賑わっています。

【写真】しんかの入り口

一緒に行ったのは、メンバーのミチコさん。実はミチコさんは、ここ数ヶ月「信華」に通っています。

ミチコ

「ふふふ。ハーモニーに行く前にご飯食べていくんです。」

新澤

「それは知らなかった!お気に入りのメニューはあります?」

ミチコ

「マーボー丼をよく食べます。味もおいしいけれど、お店の人たちが面白いんです。お店に入ると『えーラッシャイ!』と言いながらお水とティッシュを出してくれるんです。」

新澤

「ティッシュ?」

ミチコ

「はい。最初の頃、お願いしたらそれからずっと出してくれるんです。」

新澤

「うれしい気遣いですね。今日も出てくるかな、ティッシュ。」

なにしろハーモニーの斜め前です。話している間に到着しました。
店の前にも手書きのメニューが沢山出ていますね。

ミチコ・新澤

「こんにちは!」

お店の方

「えーラッシャイ!」

ミチコさんの言ってた通りです!
水とティッシュも出てきました。

ミッキーマウスと嵐の櫻井くんが好きな頑張り屋さんのミチコさん

少しお話しをうかがってみました。厨房で中華鍋をふるうのはお兄さん。接客担当は妹さんと弟さん。三兄弟がお店を切り盛りしています。この場所にお店を開いて30年になるそうです。

「おたく(ハーモニー)のビルの地下は昔は、カラオケだったんだよ。それから301号室には、よく出前に行ったもんだよ」そんな昔話も楽しいですね。

マーボー丼とマーボーライスをいただきました。

新澤

「ミチコさん、食が進みますね」

ミチコ

「もちろん。ご飯を抜いてきましたからね。いくらでも食べられますよ!こちらのお店でお勧めしたいのは、マーボー丼、タンメン、チャーハンです。」

【写真】机の上にあるしんかのマーボー定食。餃子とご飯、スープもついている

すっかり満腹になって、お店を後にしたミチコさんでした。

ミチコ

「味はもちろんですが、お店の方がやさしいのがいいです。ハーモニーに行く前にテレビを観ながらゆっくり食事ができますね。」

テイクアウトして、ハーモニーにいる人たちもマーボー豆腐定食をいただきました。

金ちゃん

「おいしい!ピリッと辛いところがいいね。」

DRG57

「タレ(?)がおいしいです。」

さちこ・岡ちゃん

「これはご飯がほしくなる味だ。」

フミ・kagesan

「お豆腐の形がいいね。のどごしがさわやかだね。」

トム

「辛さが後からくるよ。家庭の味って感じかな。」

ぷすけちゃん

「弁当のマーボーに比べて美味しいです。中華のダシの味がうれしい。」

上町にいらっしゃったら、ハーモニーメンバーも大好きな町の中華料理屋さん「信華」にお立ち寄りください。

世田谷区立中央図書館と池

ハーモニーでは週に2回、清掃の仕事で近所の公園や駐車場にでかけます。夏の除草と秋の落ち葉の時期は大変です。その公園に向かう途中にあるのが、世田谷区立中央図書館。ここが今回のおすすめのスポットです。

中央図書館は、区内最大の図書館です。アクセスは世田谷線上町駅、田園都市線桜新町からも徒歩で10分の距離にあります。蔵書数は51万点(視聴覚教材を含む)。余裕をもって配置された閲覧室の席は、ゆっくりと本を読むには最適です。

今回はこまねずみさんと出かけました。

新澤

「こまねずみさん、図書館にはよく行くのですか?」

こまねずみ

「はい。でもコロナ以降は感染の心配があるので、カウンターに予約した本を取りに行くくらいですよ。」

今回は許可をいただき、閲覧室で写真を撮らせていただきました。こまねずみさんも閲覧室に行くのは久しぶりです。

【写真】閲覧室に立つこまねずみさん

図書館の入っている建物の中にはプラネタリウムなどもあります(プラネタリウムは令和4年1月4日まで機器入れ替えのため休止中)。そして区民の憩いの場所になっているのが、裏手の池です。柵がなくて水辺まで行けるのがいいですね。奥には水路もあります。

【写真】図書館近くになるため池

こまねずみさんと「ここは誰が管理しているのだろう」「池にいる鯉はどれくらいいるのかな。元から住んでいるだろうか」と考えたけれど埒があきません。職員の方に聞いてみました。

職員さん

「この池は区が管理して、区民のみなさんの憩いの場になるように掃除をしたり、鯉を飼育したりしています。鯉は29匹いて、餌をやったり、エアを送って健康的に過ごせるようにしているんですよ。」

こまねずみ

「掃除もやるんですか?」

職員さん

「はい。少し水を抜いて鯉を別のプールに移してから、池の水を抜き高圧洗浄します」

【写真】池を眺めるこまねずみさん

世田谷区も池の環境を守るために色々、やっているのですね。一年を通じてこの池を見てきたこまねずみさんが「図書館池の四季」と題した文と絵を書いてくれました。

図書館池の四季 こまねずみ

この池は、春は面している小学校の裏通りの桜並木から桜が吹雪いてきます。夏はちょっと歩いている僕もここ何年間はふらふらしていて風景がどうとも言えないのですが、遊びに来ている子供たちが走り回っています。秋には落ち葉。掃除が大変な季節が一通りすぎると池の水の凍る冬になります。

毎日の散歩コースにここを選んでいる人は多く犬連れで、やはり学校がない時間の子どもたちが活発に遊んでいます。ベンチで将棋や囲碁をする人たち、お昼ごはんを食べる人たちも。

鯉や亀だけでなく、小学校脇の水路にはカエルの卵(カエルがどこに行くのかは誰も知らない)、魚(大きくなったのを見るのは珍しい)。20年前にはザリガニやトンボもいましたね。ベンチで対局しているは近所の年配の男性で閉所時間を過ぎても、時折、街灯の下で戦っています。

【イラスト】「図書館池の四季」と題した絵

こまねずみさん、おつかれさまでした。年末年始のお休みには、図書館で本を借りて、池の鯉を見て帰るのがハーモニーのおすすめです。

編集後記

図書館の横を歩いて帰る途中にポチャンと水路で音がしました。よく見ると亀がゆっくりと泳いでいます。公園の清掃の行きかえりに、時々見かける亀のことを話題にしながら、池と水路の脇を歩いていくのがハーモニーの清掃チームのコロナ前の日課でした。

【写真】水路にいる亀

この水路にいる小魚や亀は、自然に発生するわけないので誰かがここに放したのでしょう。職員さんのお話しでは亀は鯉にとってストレスになるし生態系のバランスが崩れる要因になってしまうので、ここに亀さんを置いておくわけにはいかないそうです。「共生」とひとことで言いますが、いろいろな生き物がバランスをとって生きていくことは難しいなとあらためて思いました。

当の亀さんはノンビリゆっくり水路の向こうに消えていきました。

新澤

「それから、ついでだから言いますが、50年前に広島城のお堀にミドリガメを逃がしてゴメンなさい…. 」

少し早いですが、年内の日々新聞も今回が最後。今年もありがとうございました。また、来年お会いいたしましょう。

(ハーモニー新聞部+新澤)

【イラスト】中華テーブルで食事をするハーモニーメンバーたち

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連載:いたずらに人を評価しない/されない場所「ハーモニー」の日々新聞