福祉をたずねるクリエイティブマガジン〈こここ〉

【イラスト】スマホで介護のしごとにまつわる情報を集める人、本から介護のせかいをのぞくひと、扉を開けて一歩を踏み出す人【イラスト】スマホで介護のしごとにまつわる情報を集める人、本から介護のせかいをのぞくひと、扉を開けて一歩を踏み出す人

介護のしごとに興味をもったとき、はじめの一歩はどうすれば? “自分らしく生きる”を支えるしごと vol.15

Sponsored by 厚生労働省補助事業 令和5年度介護のしごと魅力発信等事業(情報発信事業)

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介護のしごとに興味はある。でも、いきなり本格的に働きはじめるのはハードルが高い。そんなとき、お試しできたり、さらに情報を得たり、深く知ったりできる場所はどこにあるのだろう。

インターネットで検索してみると、求人募集や転職サイトの情報が多く出てくる。その情報もありがたいのだけれど、それとは違う形で考えたり感じたりできる場所を探すのは難しい。

この記事では、「本格的に働くより少し手前」で、介護のしごとや世界を知ることができる情報をご紹介します。

ボランティアをしてみる?

介護のしごとをはじめるのであれば、専門的な知識や資格が必須なイメージを抱く人もいるかもしれません。たしかに専門的な知識があるからこそ、できることがたくさんあります。一方でそういった知識や経験、資格がなくてもできることも。

Sketter」はお手伝いを求めている介護施設と、サポートしたい人をつなぐマッチングサービスです。

たとえば「食事の配膳や洗い物」「お掃除」「レクリエーションの企画」など。募集中の一覧をのぞいてみると「楽器の演奏・音楽レク」や「ブログ・チラシ・ポスター作成」のお手伝いなども掲載されていました。

「Sketter」に限らず、インターネットでボランティアを探してみると多くのものが見つかると思います。安心してボランティアにのぞめる場所を探したいときは、住んでいる市区町村、職場や学校のある市区町村の「ボランティア・センター」を見るのもいいかもしれません。

インターンシップや職場体験に参加してみる?

自分のペースに合わせて介護職のしごとを体験できる仕組みがあります。それが「TOKYOかいごチャレンジインターンシップ(※注1)」です。東京都より委託を受け、アデコ株式会社が2023年4月から参加者を募集しています。

1日最短4時間から体験ができ、実際に謝礼金が支払われたり、家族や友人との参加もできたりするので、はじめの一歩が踏み出しやすいプログラムとなっています。

また各自治体で「職場体験事業」を行なっているところもあります。「自分が住んでいる都道府県名 + 介護 + 職場体験」で検索し、探してみるのもおすすめです。

※注1:2023年3月まで実施。2024年度以降は違う仕組み・形式で実施予定。

イベントやツアーに参加してみる?

介護事業所を運営している法人の中には、自主的にイベントを実施したり、体験ツアーなどを企画したりしているところもあります。気になる法人や事業所を既に見つけている人は、そういったものに参加してみるのはいかがでしょうか。

以前、こここが取材した宮城県仙台市にある社会福祉法人ライフの学校では、日々さまざまなプログラムが行われています。たとえば、介護施設に入居している高齢者や障害のあるひととお話する「ライフの先生 お話会」や高齢者の人生にふれる「ライフストーリ学」、地域に残る食文化を伝える「暮らしの食堂」などなど。

また東京都新宿区に拠点を置く訪問介護の事業所株式会社でぃぐにてぃは「働いてみたいかも」「興味があるけれど迷っている」人向けに現場の見学・体験ツアーを用意しています。

anan web「介護の現場でかなえる、私らしい働き方」では、でぃぐにてぃで働く鹿角実花さんに話を伺っているのでそちらもご覧ください。

ここで挙げたのはあくまで一例で、法人ごとにさまざまな取り組みがあります。参加してみることで、法人の特徴や雰囲気が感じられるかもしれません。

介護・福祉施設に留学してみる?

1日だけではなく、もう少し時間をかけて介護や福祉の現場で過ごしてみたい人におすすめなのが「福祉留学」。NPO法人Ubdobeが運営する「学生や医療福祉従事者と、日本の福祉・介護を牽引する施設を繋ぎ合わせる留学制度」です。

年齢や資格に制限はなく、「福祉の仕事に関する高い興味や関心を持っている」「地域と福祉の関わりについて高い興味や関心を持っている」「自分の生き方や働き方の方向性を模索している」方であれば誰でも申し込み可能。ウェブサイトに留学を体験した先輩の声が掲載されており、個別でのオンライン説明会も実施しています。

介護に関心を持つ人が集まるオンラインコミュニティに入ってみる?

一人で黙々とではなく、誰かと一緒に介護について学んだり考えたりしたい。そんな人におすすめなのが“介護”に関心を持った仲間が集う オンラインコミュニティ「SPACE」です。

介護・福祉業界に特化した人事支援サービスを提供している株式会社Blanketが運営。「介護現場に関わる専門職はもちろん、家族の介護をしている人や、介護周りの製品販売・研究をしている人など、 色々な形で介護と関わる人たちのコミュニティ」です。

実際に介護の仕事をしている方の話が聴けたり、介護にまつわる気になることを質問できたり、一緒に勉強会や企画を立ち上げたりもできます。入会すると、Blanketが主催する介護にまつわるイベントへの無料参加やアーカイブ動画の視聴も!

いきなり現場に足を運ぶのはハードルが高くても、オンラインで実際に働いている人に話を聴く、一緒にイベントに参加することであらたな発見があるかもしれません。

資格をとってみる?介護職の入門的な位置づけ「介護職員初任者研修」

資格の勉強をすることからはじめたいのであれば、介護職の入門的な位置づけの資格「介護職員初任者研修」があります。年齢や学歴、必要資格、実務経験など受講における条件はありません。

都道府県又は、都道府県知事が指定する事業者が研修を開講しており、合計130時間の講義と演習を受けた後、修了試験に合格することで取得ができます。

「神奈川県 介護初任者研修」のように「自分が住んでいる都道府県名+介護初任者研修」と検索すると、各自治体が指定している研修事業者の一覧などの情報を得られます。

ただ働きはじめる前に必ずしも資格を取る必要はありません。どこかで働きはじめることを想定している場合、就職先の資格支援制度があれば、利用することで受講費用をおさえることができる場合があります。

また条件はありますが厚生労働省が実施している「教育訓練給付制度」や各地自治体の「介護職員資格取得支援事業」などの支援制度もあります。自分の状況を踏まえて利用できるものがあれば活用してみてください。

各都道府県の「介護のしごとにまつわる情報サイト」を見てみる

自分が住んでいる地域に特化した介護のしごとの情報が知りたい。そんなときは、各自治体が行っている情報を調べてみると、より具体的な情報を得ることができます。

各都道府県別 情報発信サイト一覧

北海道・東北

・北海道「北海道介護のしごとポータルサイト
・青森県「かいご応援ネットあおもり
・岩手県「岩手県介護情報ポータルサイト
・宮城県「宮城県 I want you! 介護職員募集 特設サイト
・秋田県「秋田県介護職応援Webサイト
・山形県「やまがたKAiGO PRiDEキャンペーン
・福島県「ふくしまふくしみらいキャンパス

関東

・茨城県「いばらき ふくしのおしごとナビ
・栃木県「保健福祉ポータルサイト
・群馬県「介護人材の確保・育成
・埼玉県「介護職員応援ポータルサイト
・千葉県「福祉人材確保・定着の取組みについて
・東京都「ふくむすび
・神奈川県「かながわの介護・福祉

中部

・新潟県「かいごのお仕事
・富山県「みつけた!とやまde介護のお仕事
・石川県「いしふく
・福井県「福井県社会福祉協議会
・山梨県「ふじの国やまなし ふくしねっと
・長野県「信州福祉・介護のひろば
・岐阜県「ぎふkaiGO!
・静岡県「しずおか介護のしごと図鑑
・愛知県「介護の魅力ネット・あいち

近畿

・三重県「三重県福祉人材センター
・滋賀県「しがけあ
・京都府「kyoto294.net
・大阪府「介護職・介護業務の魅力発信の取組みについて
・兵庫県「介護の仕事や資格のことなら
・奈良県「福祉・介護の仕事魅力情報なら
・和歌山県「ハートワーク

中国・四国

・鳥取県「鳥取県社会福祉協議会
・島根県「介護の仕事のイメージアップ広報
・岡山県「おかやま フクシ・カイゴWEB
・広島県「ふくしかいごネットひろしま
・山口県「介護人材・福祉・介護職の魅力発信!
・徳島県「介護人材確保に向けた取り組みについて
・香川県「かがわ介護保険情報ネット
・愛媛県「愛媛県福祉人材センター
・高知県「カイゴのシゴト

九州・沖縄

・福岡県「福岡県介護情報ひろば
・佐賀県「さがケア
・長崎県「カイゴノゴカイ!? フクシノシフク
・熊本県「ウェルカム!くまもと介護の扉
・大分県「オープン オオイタ ウェブ
・宮崎県「みやざき・ひなたの介護
・鹿児島県「鹿児島県社会福祉協議会
・沖縄県「介護職魅力発信パンフレット

介護の世界をのぞけるウェブサイトや本、マンガにふれてみる?

もう少しゆっくり介護のしごとや世界を知っていきたい。そんなときは、ウェブサイトや本、マンガや映画からふれてみるのもいいかもしれません。

ウェブサイト

「an・an web」では介護のしごとにまつわる疑問を株式会社Blanket代表取締役 秋本可愛さんに伺っています。「未経験でも働ける?」「働き方は自由に選べる?」「お給料はどのくらい?」など素朴な疑問に対する回答が記されています。

・井上咲楽×秋本可愛と理解を深める 介護のしごとの可能性

「Rakuten みん就」では、「介護のしごと体験記」と題し、大学生が実際に就業体験をして感じたことが綴られています。若い世代が現場で受け取ったものから介護のしごとをさらに知ることができます。

・介護のしごと体験記01

「介護を科学的に捉える」という視点から情報を集めたサイトがあります。それが「生活の思考」です。生理学の視点で介護をとらえてみる、ケアする建築とは?介護現場のチームワークにまつわる内容がまとまっています。

・生活の思考 介護を科学する情報サイト

生活の思考に掲載されている「介護とは何か。 - 生活を整えていく実践 -」

高齢化の進展とともに、認知症のある方も増えています。そもそも認知症とはどのようなものなのか、詳しく知らない方もいるかもしれません。「認知症当事者ナレッジライブラリー」は、「認知症のある方の発症から現在までのあゆみ、喜びや実現したいこと、日常生活の困りごとや苦労(生活課題)と背景にある心身機能のトラブル、これとつきあう暮らしの知恵を、ご本人の『語り』に基づいてまとめたデータベース」です。

全国各地の認知症のある方にインタビューを行い、同意があればその家族や支援者の視点から補足していただき整理、分析したものをもとに作られています。

・認知症当事者ナレッジライブラリー

このサイトの作成をはじめ、認知症とともによりよく生きる未来を目指すプラットフォーム「認知症未来共創ハブ」代表を務める堀田聰子さんによる寄稿記事もあるのでこちらもご覧ください。

マンガや本、映画

ヘルプマン!』著:くさか 里樹(講談社)

2003年に「イブニング」で連載がスタートしたマンガ。介護現場にまつわる課題や葛藤を記しながら、人の尊厳を守ろうと主人公が奮闘する物語です。作品が執筆された当時の状況を踏まえた表現であるということは留意して読み進める必要はありますが、介護の現場にある創造性などが多く描かれています。

家でのこと 訪問看護で出会う13の珠玉の物語』著:高橋恵子(医学書院)

著者の高橋恵子さんは、漫画家、介護福祉士、アートワーカーであり、2002年より在宅の現場で介護職として働いています。高橋さんの経験と綿密な取材から生まれた13の物語では、家で暮らす人との出会いや別れ、確かにあるつながりが掬われています。

「“自分らしく生きる”を支えるしごと ー介護の世界をたずねてー」でも訪問看護師 兼 写真家として働く尾山直子さんに話を聞いていますので、よければ読んでみてください。

介護のススメ!: 希望と創造の老人ケア入門 』著:三好春樹(ちくまプリマー新書)

著者は「生活とリハビリ研究所」代表であり、介護のしごとに携わる方からも支持が厚い三好春樹さん。

さまざまな職業を経験し、24歳で特別養護老人ホームで働くことになった三好さんは、「介護ほど面白い仕事はない」と言います。介護の仕事との出会いや介護に必要な「想像力/創造力」の話をはじめ、三好さんならではの視点、言葉遣いで介護の面白さが語られています。

それでも私は介護の仕事を続けていく』著:六車由実(KADOKAWA)

静岡県沼津市にあるデイサービス「すまいるほーむ」の管理者・生活相談員を務める六車由美さんの著作です。民俗学の研究者として大学で働いていた経験のある六車さん、介護の世界に飛び込んだのは30代を迎えてからとのこと。

コロナ禍、その状況で生じる出来事や問題、そこで感じる葛藤、苦しさ、喜び、哀しみ、痛み、希望。介護とはどのような営みなのか、なぜ介護の仕事を続けていくのか、実直に綴られています。

老人ホームで生まれた <とつとつダンス> ダンスのような、介護のような』著:砂連尾理(晶文社)

著者は振付家・ダンサーである砂連尾理(じゃれお・おさむ)さん。京都の舞鶴にある特別養護老人ホーム「グレイスヴィルまいづる」で生まれた身体表現と介護を横断するプロジェクト「とつとつダンス」について記されています。

砂連尾さんが「グレイスヴィルまいづる」とどのように出会い、プロジェクトが生まれたのか。利用者と時間を過ごし何を感じたのか。

この著作の一章「節操なく踊る身体を探し求めて」は、ライター青山ゆみこさんが砂連尾さんの話を聴き、プロジェクトに関わった人の記録や対談資料などを再構成し、青山さんの解釈で書かれているそうです。

介護するからだ』著:細馬宏通(医学書院)

人間行動学者である細馬宏通(ほそま・ひろみち)さんが介護施設で、利用者やスタッフの会話にあらわれる身体動作を観察、考察したことが書かれています。

「介護は、介護職員と認知症高齢者の双方が体をそれぞれのやり方で動かすことで、初めて達成される相互関係なのである」(p5より)

本書を読み進めていくと、介護施設における具体的な場面の書き起こし、細馬さんの考察から、介護の「相互関係」がありありと感じられます。

映画『ケアニン〜あなたでよかった〜』監督:鈴木浩介/2017年製作/日本

この連載でも取材に伺った神奈川県藤沢市にある「株式会社あおいけあ」をはじめ、さまざまな介護施設や専門学校、関連団体への取材を経てつくられた映画です。

タイトルになっている「ケアニン」とは「介護、看護、医療、リハビリなど、人の『ケア』に関わり、自らの仕事に誇りと愛情、情熱を持って働いている全ての人」を指す造語。

俳優の戸塚純貴さんが演じる新人の介護福祉士の葛藤を描きながら、介護とはなにか、人がいきいきと生きていく上で大切なこととはなにか、感じられる作品になっています。

上映スケジュールが合わない場合は、「自主上映会」を主催することも可能です。

『ケアニン〜あなたでよかった〜』公式サイトはこちら

介護施設が隣接されたホテルに泊まってみる?

ラグジュアリーなホテルでのんびり過ごしながら「介護の世界」の気配や温度を感じられるユニークな場所をご紹介します。

広島県尾道市にある小さな宿泊施設「尾道のおばあちゃんとわたくしホテル」。「わたしがわたくしになる、0.25倍速のスロー・ラグジュアリー」をテーマにした宿泊施設です。

特徴は介護施設「ゆずっこホームみなり」が隣接していること。ホテルのチェックイン時には介護施設を利用している方が受付を担当してくれる。ホテルと介護施設共用の庭では、他の利用者やスタッフと出会うことも。

介護のしごとや世界との出会い方は人それぞれ

介護のしごとや世界と出会う方法は多くあります。どの扉から入るといいのかは、自分が置かれている環境や状況によっても変わってくるはず。現在地の自分にとって相性がよさそうなものに、ひとまず手を伸ばしてみると、違う景色が見えることもあるでしょう。

自分にとって遠い世界、あたらしい環境だと思っていたものは、実は自分の生活と地続きで、既に存在していたのだ、と気づくこともあるかもしれません。

介護の世界は、一人ひとりの状況や経験に耳を傾け、心身の変化に寄り添い、それぞれの権利を守ろうと奔走してきた経験が宿る分野です。一人ひとりの権利を当たり前に守る。そのことに関係のない人はいません。だからこそ、自分なりの距離感や速度で「介護のしごと」に携わる人が増えることを願っています。


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連載:“自分らしく生きる”を支えるしごと