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浜田直紀さん【起業家】 働くろう者を訪ねて|齋藤陽道 vol.26

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手話を第一言語とする「ろう者」はどんな仕事をしているのでしょうか。

連載「働くろう者を訪ねて」では、写真家であり、ろう者である齋藤陽道が、さまざまな人と出会いながらポートレート撮影とインタビューを重ねていきます。

最終的な目的は、働くろう者たちの肖像を1冊の本にすること。その人の存在感を伝える1枚の写真の力を信じて、「21世紀、こうして働くろう者がいた」という肖像を残していきます。(連載全体のステートメントはこちらのページから)

第26回は、東京都台東区で社会貢献を目的とした会社を立ち上げ、手話が使えるお店や就労支援事業所を営む、起業家の浜田直紀(はまだなおき)さんを訪ねました。取材場所は、「コーヒーとアイスそしてちょっとした社会貢献」をコンセプトに浜田さんが経営するカフェ、「ランデフコーヒー」です。

浜田直紀さん【起業家】

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ーお名前、年齢、ご職業は?

浜田直紀と申します。37歳です。福祉、社会貢献を目的とした株式会社Rendeafを起業し、この「ランデフコーヒー」を営んでいます。

―出身地はどこですか。

東京です。

―今まで通っていた学校はどこですか。

地元の学校に通って、神奈川県にある東海大学に入りました。学部は工学部応用化学科、大学院は工学研究科です。でも、自分のやりたいことではなかったんです。理由は特に無くて……。

―こどものときの夢は何でしたか。

ありませんでした。うん。ええと……うーん、なかったですね。大学を決めたときもそうでしたし。何も考えていませんでした。でもいつも何かを、やりたいことを探していました。

ーこれまでの職歴は?

いろいろです。東京の大手企業に勤めていたこともありました。パソコンを使った仕事や、大学では化学を専攻していたので化学関連の仕事とか。

カナダで音楽をやっている音楽バンドの事務所で働いていたこともあります。多様性がまだまだ少ない日本とは違い、カナダはさまざまな国やコミュニティ出身の方が住んでいて、多文化主義の国です。

そのような場所で生活や仕事をしてみたいと思ったのがきっかけでした。実際に、カナダでは障害を持った方が普通にカフェで店員として接客をしていたりしているのを間近に見れて、学ぶ事や刺激がとても多かったです。ちなみに頭につけているこの機器は、骨伝導補聴器です。マイクから拾った音を頭の骨を通して音を聞くことができます。

―「社会貢献ができる」を目指した会社を立ち上げた理由は?

誰かのサポートをするのは好きなんです。なのでそういう仕事をしたかったんです。

ー「ランデフ」にはどんな意味が込められていますか?

みんなが楽しく集まる場所という意味が込められている「ランデブー」と「デフ」、このふたつを組み合わせたんです。

―なぜ「手話」をテーマにした店舗経営を選んだのでしょう? 浜田さんご自身は、手話といつ頃出会いましたか?

2014年頃、聴覚障害のあるアーティストのための活動場所づくりをサポートしました。そこで初めて手話と出会い、興味を持ったんです。その時期から手話を学びはじめました。多くの人に手話の楽しさをわかってほしいと思いました。

それがきっかけで、手話ができるスタッフと一緒にこのお店を始めました。ろう者とか、手話を学んでいる人とか、だれでも手話で会話することができる場所があるといいなと思ったんです。開店したのは2022年5月です。思いついたのは2022年1月頃。5ヶ月で準備しました。それまではやりたいことがなかったんです。だから「やろう」と思いついたときに、すぐに実行しました。

「ランデフコーヒー」は手話を知ってもらい、手話が広まっていく場としてやっています。

―5年後の自分は、どうなっていると思いますか?

ここの他に就労継続支援B型作業所「ランデフワークス」も立ち上げています。そこにはろう者だけではなく、精神障害のある人などもいます。みんなが自分のやりたいことを見つけて、やれるように、楽しく働けるように、これからもサポートしていきたいです。

コロナ禍とか、行く手を阻むことはいろいろありますね。でもそんなのは関係なく、自分がやりたいときにやればいい!と思っています。

―好きなたべものは何ですか?

寿司、特に大トロが大好きです。カナダにいた1年間はおいしい寿司が食べられませんでした。やっぱり日本っていいなと思いましたね。

―最近幸せだと思ったことは何ですか?

先週、ここで「手話べり」というイベントを開催しました。そしたら20人ぐらい来てくれて、みんなで楽しく手話で話せて、幸せでした。これからもたくさんの人が手話で話せる場にしていけたらいいなと思っています。

動画インタビュー(手話)

インタビューの様子や、日常の様子をまとめたこの映像には、音声も字幕もテロップもありません。写真だけではどうしてもわからない、その人の手話の使い方に滲みでてくることばの特徴を感じてもらうためです。
たとえ手話がわからなくても、そのリズムに目をゆだねてみてください。じわりと浸透する何かが、きっとあります。「こういうふうに話す人なんだなあ」と知ってもらった上で、写真を見てもらうと、見え方がまた変わります。

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連載:働くろう者を訪ねて|齋藤陽道