福祉をたずねるクリエイティブマガジン〈こここ〉

【写真】屋外に上下黒色のユニフォームを着た三人が立っている。一人ずつ手には異なる型のドローンを持ち、正面を向いている。足元は芝生で、ドローンを止めるための丸いマークがついている。【写真】屋外に上下黒色のユニフォームを着た三人が立っている。一人ずつ手には異なる型のドローンを持ち、正面を向いている。足元は芝生で、ドローンを止めるための丸いマークがついている。

内山智枝さん、小倉昭三さん、村田栄吉さん【ドローンインストラクター】 働くろう者を訪ねて|齋藤陽道 vol.50

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手話を大切なことばとして生きる「ろう者」はどんな仕事をしているのでしょうか。

連載「働くろう者を訪ねて」では、写真家であり、ろう者である齋藤陽道が、さまざまな人と出会いながらポートレート撮影とインタビューを重ねていきます。

最終的な目的は、働くろう者たちの肖像を1冊の本にすること。その人の存在感を伝える1枚の写真の力を信じて、「21世紀、こうして働くろう者がいた」という肖像を残していきます。

(連載全体のステートメントはこちらのページから)

第50回は千葉県印西市でドローンインストラクターとして働く内山智枝(うちやま・ともえ)さん、小倉昭三(おぐら・しょうぞう)さん、村田栄吉(むらた・えいきち)さんを訪ねました。

内山智枝さん、小倉昭三さん、村田栄吉さん【ドローンインストラクター】

【写真】屋外に上下黒色のユニフォームを着た三人が立っている。一人ずつ手には異なる型のドローンを持ち、正面を向いている。足元は芝生で、ドローンを止めるための丸いマークがついている。

― お名前、年齢、ご職業は?

内山智枝と申します。62歳です。(以下、「内山」)

小倉昭三です。67歳です。(以下、「小倉」)

村田栄吉と申します。67歳です。よろしくお願いいたします。(以下、「村田」)

小倉:私たちは「 NAPAドローンアカデミー」千葉本校でドローンの操縦士を育成するインストラクターをしています。専門用語がたくさんあり、手話で伝えるのがむずかしいところもあるので、今でも勉強を続けています。

 

― 出身地、今まで通っていた学校はどこですか?

内山:神奈川県横浜市に生まれ、横浜市立聾学校(※注1)に幼稚部から高等部まで通っていました。

小倉:神奈川県藤沢市に生まれ、神奈川県立平塚ろう学校にずっと通っていました。小学4年生からろう学校の寄宿舎に入っていました。

村田:熊本県に生まれ、小学部から高等部までずっと熊本県立熊本聾学校に通っていました。

※注1:2007年、「横浜市立ろう特別支援学校」に校名変更

 

― こどものときの夢は何でしたか?

内山:服のデザイナーになってみたかったです。でも聞こえないから無理だろうと思って諦めていました。

小倉:パイロットです。テレビで見かけて、ああかっこいい。かっこいいなと憧れていました。でも聞こえないとパイロットになれないんですよ。

村田:特になかったですね。兄弟が8人いて、ろうは私一人。パソコンなどを扱えるのは私だけのようで、兄弟からは「聞こえないのになんでも自分でやって、行動できる。すごいな」と言われています。嬉しいですね。

 

― これまでの経歴、職歴を教えてください。

内山:高校卒業後、日本電気(NEC Corporation)で働き、結婚を機に退職。いろんな仕事をしてきて、今はNOK SIGN CLUBというところでオンライン手話講師をしています。ろう者の講師が15人ぐらいいるんです。2023年1月から、ここでドローンインストラクターとして働いています。

小倉:高校を卒業してから藤沢市にある大手の家具会社で働いていました。いくつか転職して、今ここで働いています。

村田:福岡で塗装や木工など、家具作りに関わる仕事をしていました。その次は山口でセメントを塗る仕事をしていました。そして神奈川のいすゞ自動車(ISUZU)で15年間ワープロ、パソコンで事務仕事。その後、東京の新聞社で20年間。三井住友信託銀行に15年間勤めていました。

 

― ドローンインストラクターになったきっかけは?

小倉:聞こえる友人から誘われたのがきっかけです。

以前、東京の浜田山駅近くにあるNOK CAFE BARで内山と働いていたのですが、2年ぐらいでカフェが閉店して、時間ができたところにその友人から「ドローンやろう。ドローンインストラクターになろう」と声をかけられました。興味がないと断ったのですが、友人は諦めず、また説得してきたんです。だんだん興味を持つようになり、見学しにいきました。

内山:そうそう。私もです。私たち3人とも、誘われるまではドローンの経験ゼロ。

小倉:ドローン体験に参加したときは友人が手話通訳をしてくれて、いろいろ学ぶことができました。友人は15年間ほど手話を学び、ろう者のように手話ができます。

ただ、実技体験をやってみたら、難しかったんです。講師、手話通訳、ドローン、コントローラー、空。見るべきものが多くて、目がとても忙しくて回っちゃう。

受講後、あることに気づきました。

「もし俺が勉強してドローンの資格を取ったら、ろう者に教えることができる。ろう者同士で、手話で伝えた方がもっとスムーズに行くんじゃないの」

友人は「そう!それ!いい!」と喜んでいました。

それからドローンに関することに一生懸命取り組み、学び、活動してきました。

2023年1月、ろう者と聴者が一緒に働き、運営していくドローンアカデミーができました。最初はボロボロの倉庫からスタート。夏は暑く、冬は寒く、つらかったです。その後6ヶ月かかって、今の場所を見つけたんです。移転したばかりでまだ整っていませんが、ちゃんとした事務室もあり、嬉しいです。

休日にはドローンに興味を持ったり、資格を持っているろう者たちがここに集まって、情報交換、操縦のスキルアップ、交流をしています。日本語の読み書きが苦手なろう者もいるので、テキストに書かれている内容を手話にして伝えたり、勉強しなおしたり、ここでどんどんレベルアップをしています。

聴者は遠回しな言い方をするときがあり、ろう者には伝わりにくいんです。でも、ろう者はつい、わかったふりをしてしまう。聞き直すのにも疲れちゃうので……。ろう者同士だとはっきりと「わからない、もう一回」と伝えやすいです。

村田:私は少し後から、定年退職をしたタイミングで小倉と内山からドローンをやろうと誘われました。二人とは昔からの友人です。平日は清掃の仕事をして、土日はドローン関連の仕事をしています。毎日やることがあって充実しています。

 

― どんな仕事をしていますか?

内山:ろうの受講者に手話で学科を教えています。やっぱり手話で教えるとスムーズに伝わり、理解してくれます。手話でドローンを学べるのは全国でここだけです。

小倉:手話通訳者を連れて受講すればいいというわけではないんです。専門用語や日常では使わない言葉がたくさんあるので、通訳しきれないところが多く、ズレがおこります。

ドローン操縦には常に危険が隣り合います。トラブルも起こりやすい。なのでしっかりと、講師とコミュニケーションができているうえで、学ぶことが大切です。手話だとお互いに納得するまで、説明することができます。手話でドローンが学べる我が校へどうぞおいで。

村田:私はFPVドローン(※注2)が専門です。ゴーグルをかけて映像を見ながらドローンを操縦するんです。例えば人が入りにくい建物の中、床下などを調査するときに便利です。FPVドローンの技術指導もしています。

※注2:FPV=First Person View(一人称視点)のこと。一般的なドローンと異なり、操縦者がドローンからの視点をリアルタイムで見ることができるタイプのドローンを指す。

 

― ドローンはどんなことに活用されていますか?

内山:ライブ、イベント会場の全体の撮影。地下道、線路、道路、屋根や壁など建物の調査。高いところの清掃など。趣味だと空撮で風景を撮ったり。サーフィン大会、スキーなどのスポーツ撮影にも活用されています。

今はドローンを活用した仕事が増えてきています。そこにろう者も入っていけたらいいですね。そのために今、いろんな場面での空撮にチャレンジしています。

 

― スクールの魅力や特徴を教えてください。

小倉:当校は国土交通省に登録している登録講習機関で、安心と信頼があります。国家資格の講習はもちろん、ドローン撮影の申請方法なども丁寧に教えています。当校の社長、岩岡真吾は国際線パイロット20年の経験をされているので、心強いです。

村田:これまでに受講しにきたろう者は70名ぐらいになります。熊本、三重からも来ますよ。遠いところからわざわざ! と驚きますよね。でもここだと手話で学べるから、遠くても来てくれる人がいるんです。今日は茨城から来た受講者がいます。

内山:他のところは、ろう者ということだけで受講申し込みを断られると聞きました。または冷たい対応をされたり、十分なコミュニケーションができず、ちゃんと学べなかったり。

今日の受講者は、幕張メッセで行われた国内最大級のドローン関連イベントで当校のことを知ってくれたんです。そのきっかけが面白くて。当校や私たちのことをよく知っている方が「補聴器をつけている人がいる! 」ととっさに声をかけたそうです。「えっ、講師がろう者で、手話でドローンを学ぶことができる?! まさか?! 」と半信半疑で問い合わせてくれて、来てくれました。嬉しいです。

小倉:2022年に無人航空機(※注3)の国家資格ができました。 法律はもっと前からあります! 外国でドローンを操縦するときも申請が必要です。国ごとに決まりが異なるので注意しなければなりません。当校では英語での書類、申請、その相談にも対応ができます。

※注3:ドローン(マルチコプター)、ラジコン機、農薬散布用ヘリコプターなど(参考:国土交通省サイト)

 

― 5年後の自分は、どうなっていると思いますか?

内山:全国のろう者たちにドローンのことを広めて、もっと来てもらえるように考えながら、活動をし続けていると思います。

小倉:ろう者のドローン操縦者に仕事を提供することができていたらいいな。

村田:建物の中の調査技術や、地下の調査の経験をもっとして、みなさんに伝えていると思います。傷や破損箇所などをスムーズに見つけられるような技術指導もしたいです。

 

― 好きなたべものは何ですか?

内山:寿司ですね。もうなんでも好きです。マグロ、いくら。ラーメンも大好き。

小倉:チャーシューメンと唐揚げが好きです。

村田:呑む方が好きですね。ビール、焼酎をよく呑みます。

 

― 最近幸せだと思ったことは何ですか?

内山:ろう者と聴者の壁が消えて、みんながドローンを楽しめたときが幸せ。そしてドローンを飛ばしたとき。自分が鳥になったようで幸せになれます。

小倉:ろう者がここでドローンを体験して、笑顔いっぱいになった瞬間を見れたときが幸せです。ああ、よかった、よかったと嬉しくなります。

村田:FPVドローンと出会えたことが幸せです。普段入れないところや狭いところでも、ドローンを飛ばすと見れるので、それが面白くて楽しくて。

動画インタビュー(手話)

インタビューの様子や、日常の様子をまとめたこの映像には、音声も字幕もテロップもありません。写真だけではどうしてもわからない、その人の手話の使い方に滲みでてくることばの特徴を感じてもらうためです。たとえ手話がわからなくても、そのリズムに目をゆだねてみてください。じわりと浸透する何かが、きっとあります。「こういうふうに話す人なんだなあ」と知ってもらった上で、写真を見てもらうと、見え方がまた変わります。

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連載:働くろう者を訪ねて|齋藤陽道